2007年6月25日(月)「しんぶん赤旗」

共産党が提案します

「緊急福祉1兆円プラン」

「貧困」「医療・介護難民」解決への5項目


 貧困と格差の深刻な広がりのなか、日本共産党は「参院選にのぞむ日本共産党宣言」(十五日発表)のなかで「緊急福祉1兆円プラン」を打ち出しました。「医療難民」「介護難民」などがマスメディアでも問題になる事態を、一刻も早く打開するための五項目の具体的提案です。


(1)国保料を1人1万円引き下げる

グラフ

 一人当たりの国保料(平均)はこの二十年で、年間三万九千円から七万九千円へと二倍に上がっています。高すぎる国保料が払えない滞納世帯が増え続け、国保証を取り上げられた世帯は三十五万世帯にのぼります。国保証がないために受診できず、病気が重症化したり、亡くなる事態が続発しています。

 貧困と格差のもっとも深刻なあらわれである国保問題を解決するため、「緊急福祉1兆円プラン」は、国保料を国の責任で年間一人一万円引き下げることを提起しました。四人家族なら四万円の値下げです。

 この一万円は、所得に関係なく“頭割り”で計算される「応益割」部分を引き下げます。所得の低い人ほど負担割合が高い逆進性となる「応益割」の引き下げは、中・低所得者の負担を軽くすることができます。

 一九八四年から二〇〇四年の二十年間で、市町村国保の収入に占める国の負担割合は約15%、一兆六千六百億円分も減らされました。これが市町村の国保財政を悪化させ、国保料の高騰を招きました。

 減らしてきた国庫負担のうち四千億円分を元に戻すだけで、一人一万円の引き下げは実現できます。

(2)介護保険の保険料・利用料の減免の拡充

 高齢者の介護保険料は昨年四月に平均24%も引き上げられました。利用料負担も増え、介護が必要と認定されてもサービスを利用できない人は約二割にものぼります。

 〇五年に自民、公明、民主の各党の賛成で成立した改悪介護保険法によって、施設入居者の食費・居住費が全額自己負担とされ、退所する人があとをたちません。「負担あって介護なし」といわれる事態がより深刻に進んでいます。

 「緊急福祉プラン」では、介護保険への国庫負担を5%引き上げて、保険料・利用料の減免制度を、新しい国の制度として確立することを求めています。三千億円程度の財源があれば可能です。

 もともと国は介護にかかわる費用の50%をみていました。それを介護保険制度導入時に25%まで下げてしまったのです。それを、せめて5%戻すことができないはずがありません。全国市長会、全国町村会も国庫負担増額を繰り返し求めています。

(3)子どもの医療費無料化を国の制度に

 草の根の運動の広がりで、子どもの医療費無料化は全国四十七都道府県で実施されています。

 国の制度として、小学校入学前の子どもの医療費を所得制限なしで無料化する段階にきています。

 お金のあるなしで、子どもの健康と命に格差がある社会でいいのでしょうか。

 国の制度を土台にすれば、自治体独自の助成制度をさらに前進させることができます。

(4)障害者自立支援法による「応益負担」の撤回

 障害者自立支援法は〇五年、自民・公明の両党の賛成で成立しました。「原則一割」の利用料の「応益負担」の導入は、障害者・児とその家族に負担を強いています。

 厚生労働省の調査でも法施行後、全国で千六百人以上がサービス利用を中止するなど深刻な事態を招いています。

 障害者・児の施設・事業所の経営を困難にし、福祉労働者の離職や労働条件の悪化をすすめています。

 政府・与党は、障害者や関係者の大きな運動に動かされ、法律の「手直し」を迫られましたが、部分的な措置にすぎません。

 「原則一割」の障害者福祉サービスの利用料や医療費の「応益」負担を撤回させ、応能負担に戻す―障害者・児とその家族の生きる権利を保障するための不可欠の課題です。

(5)生活保護切り下げ、母子家庭への児童扶養手当削減の中止

 暮らしが困難に陥った国民の最後の「安全網」が生活保護制度です。

 ところが政府は、七十歳以上に支給されていた老齢加算を〇四年度から段階的に削減、〇六年度に全廃しました。一人親を対象にした母子加算は、〇七年度から十六―十八歳の子どもについては廃止。十六歳未満も三年間で全廃するとしています。全国各地で「もう切り詰めるところがない」と削減取り消しを求める審査請求の動きが広がっています。「老齢加算」「母子加算」の復活は急務です。

 また、自民、公明、民主などの各党は〇二年の国会で、母子家庭に支給されている児童扶養手当を〇八年四月から最大半減させる制度改悪を強行しました。

 母子家庭の平均所得は、全世帯平均の四割程度です。母子家庭の「命綱」である児童扶養手当削減を中止し、シングルマザーの苦労と努力に報いることが政治の責任です。

「福祉の心」があれば実現可能

 日本共産党の「緊急福祉1兆円プラン」は、貧困と格差の打開に向けて、憲法二五条の「国民の生存権」を保障させるため、政府がただちにやるべきことを提案したものです。

 働いてもまともな生活を維持することが困難な社会、弱者が「難民」として排除され、生きていく最低限の条件まで奪う政治を、一刻も早くたださなければなりません。

 「緊急福祉プラン」の五つの提案を実現するために必要な予算は、政治が少し姿勢を変えれば容易に確保できる金額です。

 政府は、米軍の要求で、グアムでの米軍基地建設など「米軍再編」に三兆円もの税金をつぎ込もうとしています。また、大企業・大金持ちには、法人税や所得税最高税率の引き下げで五―六兆円もの減税を実施してきました。

 税金の使い方を変えるためにいま大切なのは、政治に「福祉の心」を入れることです。


 「応能負担」と「応益負担」 「応能負担」では、所得などそれぞれの能力に応じて利用料などを負担します。一方「応益負担」では、所得に関係なく、必要な支援を「益」とみなして、利用したサービス量に応じて負担を課します。

表

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