2007年6月23日(土)「しんぶん赤旗」

鼓動

自民が特待制度で圧力

時代を逆行させるのか


 自民党の高校野球特待生制度問題小委員会(塩谷立委員長)が特待生制度を認めるべきだなどとする提言をまとめ、22日に日本高校野球連盟(高野連)の脇村春夫会長に渡しました。高野連は臨時の全国理事会を26日に開き、来年度以降の生徒募集に向けた基準づくりを進める予定ですが、それを前に圧力をかけられた格好です。

 提言は、特待生制度の意義を強調し、野球だけが認めないのは「国民の理解を得にくい」といいます。そのうえで「基準を明確にし、学校教育活動の一環としての部活動の趣旨を損なわず、公平・公正で透明性のある制度の下では認めることができる」としています。

 しかし、いま問題なのは、学生野球憲章に違反した特待生制度がゆがんだ現状をつくってきたことです。学校の売名のための選手獲得の手段となり、中学生の勧誘、野球留学、裏金の温床、ブローカーの暗躍など、球界の裏舞台を形成する原因にもなっています。

 まさに「教育活動の一環としての部活動」が、その目的と大きくかけ離れている現状があり、それを正すことが何よりも求められているのです。そしてそれは、高野連と学校関係者が主体的に話し合いを重ね、いまの仕組みを打開していかなければならない問題です。

 ところが提言は、高野連の運営や憲章の見直しが必要だとし、第三者機関の設置など、「時代の変化にあわせた議論を行う」よう求めています。塩谷委員長も「高野連の体質、独特なものがどこまで変わるか、しっかり見ないといけない。甲子園大会は高野連のものじゃない」などと筋違いな発言をしています。

 これでは、自主的なスポーツ組織への政治介入で、統制的な命令です。しかも、この自民党小委は「ヒアリング」と称して、脇村会長をはじめ学生野球関係者を党本部に再三呼びつけています。脇村会長は「会長は頭を軟らかくした方がいいと言われた。(特待生制度の)背景などを説明したが、なかなかご理解いただけなかった」と話し、きびしい意見に進退まで言及させられています。

 政党が社会的な問題に目を向けて、意見を持つことは当然です。しかしそれは、当事者の自由な言動を妨げてはならず、問題解決の自発的な努力を励ますものでなければならないはずです。

 もともと、学生野球が独自に憲章をつくって、自治組織としてみずからを律してきたのは、戦前に文部省が定めた「野球統制令」によって弾圧された痛苦の経験があったからです。今回の自民党のやり方は、その時代に逆戻りするものです。

 高野連はこうした不当な圧力に屈せず、みずからの判断で問題の解決にあたるべきでしょう。(代田幸弘)


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