2007年6月23日(土)「しんぶん赤旗」
会期延長で狙う法案は
強行に次ぐ強行を重ねたあげく、それでも通せない悪法を会期を延長してまで通そうという安倍内閣と自民・公明の与党。「法案を通すことが国民の期待にこたえることになる」(安倍晋三首相)とうそぶきますが、法案の中身のひどさが審議で次々と露呈し、廃案以外にないことが明らかになっています。内閣支持率急落と相まって与党内に不満や動揺も広がっています。(深山直人)
社会保険庁解体法案
国の責任を投げ捨て
社会保険庁解体・民営化法案は、公的年金の安定運営に対する国の責任を投げ捨て、「消えた年金」問題の解決に逆行するものです。
政府は「国民の不安を解消するため成立を」といいますが、ずさんな記録管理に国民の不安が広がり、受給者・加入者に納入記録を直ちに送るべきだとの声が有識者会議座長や与党内からも上がっているのに「五千万件の照合を優先する」と拒否しています。実態の解明も解決のまともな方針も示さないまま、解決に直接責任を負っている社保庁を解体・民営化するなど、最悪の責任逃れです。
しかも、法案には保険料の流用を恒常化し、保険料の徴収だけを強化する内容まで盛り込まれています。
マスコミからも「廃案にして出直した方がいい」(「朝日」十六日付)と批判の声が広がっています。
国家公務員法改悪案
天下り・上がり自由化
国家公務員法改悪案は、「官民交流の拡大」のためとして、営利企業に限って離職後二年間しか天下りを禁止していない不十分な現行の規制さえ撤廃し、天下りや天上がりを自由化するものです。
安倍首相は「談合根絶、天下り一掃という国民の声にこたえるものだ」と強弁しますが、天下りを野放しにし、政官財の癒着をひどくすることは明らかです。
しかも、「国家の繁栄のために高い気概や使命感を持った公務員をつくる」(安倍首相)として「能力・実績主義」を導入しようとしています。
これは、「国民全体の奉仕者」であるべき公務員を、時の政権いいなりの公務員につくり変えるものです。
天下り自由化には与党内からも「法案を修正すべきだ。(現行の規制を)削除しながら癒着防止といっても理解されない」との声が上がっています。
政治資金規正法改定案
疑惑解明に役立たず
与党が参院の特別委員会で、わずか一日の質疑で採決し、成立させようとしているのが政治資金規正法改定案です。
改定案は、閣僚や自民、民主両党幹部らの「事務所費」問題に対する批判を前に、与党が提出したもの。政治家の資金管理団体の人件費を除く五万円以上の経常経費について政治資金収支報告書への領収書添付の義務付けなどを盛り込んでいますが、その適用は二〇〇八年分の収支報告から。いま焦点となっている疑惑解明にまったく役立たず、マスメディアからも「抜け道だらけの案だ」(「毎日」十二日付社説)と批判があがっています。
民主党も改定案を提出しています。「事務所費」問題などの真相究明と責任追及の幕引きをはかり、制度いじりに逃げ込もうとしている点は、与党とかわりありません。
会期延長したものの
与党内に動揺
「年金記録漏れ問題は(選挙日程を)一週間ずらしたくらいでは片付かない。条件はなお(与党に)厳しくなった」―自民党の舛添要一参院政審会長は二十二日の記者会見で、不安を隠しきれない気持ちを語りました。
安倍首相は「国民への約束を実行する。選挙で有利か不利か、そんなことは考えていない」と強調しますが、党内には「公務員法改正案がいかなる意味で重要な法案なのか、きちんと説明しないと展望が開けない」(谷垣禎一前財務相)、「投票日の変更は不安材料が大きくなる」(古賀誠元幹事長)など、不安や不満が渦巻いています。
参院選で与党が敗北した場合の責任について「政治生命をかけて公務員改革法案を通す(ために会期延長する)と安倍首相が言ったのだから、当然、そこに責任がいく」(舛添氏)と言明する声まで上がっています。