2007年6月22日(金)「しんぶん赤旗」

コムスン去ったら訪問入浴なくなる!?

介護「営利優先」の破たん

北海道室蘭地域にみる


 訪問介護最大手コムスンの介護保険事業所打ち切り処分では、約六万五千人の利用者のサービス継続が大きな問題になっています。とりわけ深刻なのは、介護保険導入を機に「サービスは民間で」と自治体が手を引き、コムスン以外にサービスを提供する事業所がない地域です。北海道南部の室蘭市周辺に見ました。(内藤真己子)


問われる公的責任

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 室蘭市内にあるコムスンの訪問入浴サービス事業所は、行政処分で二〇〇九年二月の廃止が決まりました。札幌市より広い面積になる室蘭、登別、伊達各市と白老町の三市一町で訪問入浴は同事業所だけ。利用者は室蘭市二十二人、登別市十七人、伊達市十一人、白老町四人にのぼります。

自治体から国への批判

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(写真)登別市に申し入れる日本共産党の(左から)平田江美子、わたなべ勉両市議ら=14日、登別市

 事態を受け、日本共産党室蘭地区委員会(高橋克美委員長)と室蘭・登別両党市議団は十三、十四の両日、両市に申し入れました。要望内容は、(1)利用者のサービス保障のため、自治体や社会福祉協議会など公的団体が事業を引き継ぐ(2)行政の責任による利用者説明会の開催(3)コムスン従業員の雇用確保―です。

 席上、両市の幹部は厳しく国を批判しました。

 「国は介護保険を作ってから三年ごとに(介護報酬を引き下げるなど)実質改悪に近いようなことをした。事業者は経営が大変らしい。そうすると結局、利用者と働く側にしわ寄せが行く。国は制度を作り保険料をとることに一生懸命になったが、急にはしごを外し始めたというのが自治体から見た率直な感想だ」(室蘭市の豊島良明総務部長)

 「介護保険の根幹を成すものに問題が起こり、市町村として怒りがある」(登別市の内田史郎副市長)

 介護保険のサービス提供を営利企業に委ね、実施後は事業者に支払われる介護報酬を連続して引き下げた国の責任は重大です。

 一方、地方自治体に責任はないのか。両市ともに自治体や社会福祉協議会が事業を引き継ぐことには否定的でした。

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(写真)室蘭市へ申し入れる日本共産党の田村農夫成市議(右から2人目)と室蘭地区委員会の人たち=13日、室蘭市

 「あの介護報酬ではペイしない。仮に第三セクターをつくっても無理」(室蘭市)。「市でやると莫大(ばくだい)な費用になる。民間事業者の参入が国の方針」(登別市)

 とりわけ室蘭市では、同市社会福祉協議会が市の委託を受け介護保険の実施前から提供してきた訪問入浴サービスを昨年三月、廃止したことが問題になりました。

 他にも訪問介護と居宅介護支援をしてきた同社協は四人のケアマネジャーと看護師一人が常勤。ヘルパーも三割が常勤でした。介護保険前より人件費を5%カットしましたが低い介護報酬で三年目から赤字に。昨年の法改悪で軽度者へのサービスを制限する「新予防給付」が創設され、さらに介護報酬の減少が予想されるとして撤退を決めました。

 日本共産党の室蘭市議団は〇六年三月の議会で「利益が上がらないから撤退するというのは法に定められた社会福祉協議会の設立趣旨からも認められない」として反対。しかし市当局は存続させる措置をとらず、七人いた訪問入浴の利用者は全員、コムスン事業所へ移動しました。

サービスを受ける権利

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(写真)行政処分を受けたコムスンの訪問入浴事業所=室蘭市内

 道内でも苫小牧市に隣接する厚真(あつま)町では、自治体が赤字を補てんして、訪問介護など社協の介護サービスを存続させているのと対照的です。

 介護保険後、全国的にも自治体や社協が赤字や「民間の競争の妨げ」を理由に介護サービスから撤退する動きが広がっています。しかし同地域で、コムスンに代わる民間事業者の参入が見込めるのかといえば、室蘭市は「訪問入浴はいまの介護報酬では採算が難しく、そう簡単にはいかないだろう」と認めます。

 同市内で訪問介護や居宅介護支援をおこなう勤医協むろらんケアセンターの今(こん)英紀所長は主張します。「いまの低い介護報酬では地域で民間事業者が提供できないサービスがありますが、住民には等しくサービスを受ける権利があります。自治体がサービスを提供したり、社協に補助を出すなどして本来の役割を果たしてほしい」

 一連の事態について日本共産党の常磐井(ときわい)茂樹前室蘭市議は、「介護保険を市場原理で進め、サービス提供を民間営利企業に委ねた政府方針の破たんは明らか」と指摘します。「国が自治体を支援し公的責任を果たすべきです。国庫負担を増やし『人間らしい介護サービスの水準を守る』とした日本共産党の緊急福祉一兆円プランの実現は焦眉(しょうび)の課題です」と訴えます。


保険料上がってなぜこんなこと

家族の声

 特殊な車両で浴槽を運び、在宅のお年寄りを入浴させる「訪問入浴サービス」。同地域では利用者宅間の距離がときに数十キロにも及びます。移動には介護報酬がつかないこともあって採算をとるのは難しく、室蘭市内にあるコムスンの事業所が他企業に経営譲渡されても同地域でサービスが継続される保証はありません。

 「お父さんはお風呂が好きだから、訪問入浴で入れてもらうと気持ちよさそう。家の風呂には入れられないし、なくなったら困る」。七年前から寝たきりになった登別市の男性(85)の傍らで、妻(84)は顔を曇らせました。腸に穴を開け流動食を入れる処置をしてから通所介護で入浴を断られ、訪問入浴が頼りです。

 男性は税制改悪の影響で住民税が課税されるようになり、連動して介護保険料が月約四千四百円に上がりました。

 両親の介護を担う娘のAさん(54)は「税金は上がる、年金から天引きの介護保険料は上がる。それで訪問入浴サービスがなくなるかもしれないなんて。市がやってくれてもいい。とにかく続けてください」と話します。


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