2007年6月8日(金)「しんぶん赤旗」

主張

財政審意見書

低福祉高負担の「棄民政策」


 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が、二〇〇八年度の予算編成に向けた意見書をまとめました。

 意見書は予算削減の筆頭に社会保障をあげ、徹底した抑制を求める一方で、社会保障の財源を口実に消費税を含む税制の「抜本改革」を要求しています。

 いくら働いても貧困から抜け出せないワーキングプアが広がっています。福祉切り捨てをさらに進めるなら、貧困の痛みがいっそう深刻になることははっきりしています。

社会保障切り捨て

 意見書は医療給付の抑制が「喫緊の課題」だとして、医薬品の保険範囲の見直しとともに、「軽い病気」を保険から締め出す「保険免責制」の導入などを求めています。

 生活保護は生活扶助基準の引き下げ、児童養育加算の廃止、受給者の医療受診の抑制など全面改悪を掲げています。介護給付を抑制し、年金は不断に見直すよう求めました。

 財政審の意見書は、「経済の生産性向上のために資金が向かうとともに、国債の信認が維持されることが極めて重要である」とのべ、経済成長を最優先にしながら予算を削り込む姿勢を鮮明に打ち出しています。

 さらに、日本は「国民全体の『受益』が『負担』を上回る『中福祉―低負担』とも言うべきアンバランスな状態」だと強調し、国民は負担が低いのにそれ以上の福祉を享受しているかのように描いています。

 政府・与党の「経済成長」の「ものさし」は大企業・財界の利益です。大企業の利益最優先を前提に、“国民の低い負担に比べて福祉は過剰だ”と決め付けて、予算削減の矛先をいっそうの社会保障切り捨てに向ける論法です。

 実態はまったく正反対です。

 高すぎる国民健康保険料を払えない人から保険証を取り上げ、末期患者を病院から追い出すなど、相次ぐ医療の切り捨てが「医療難民」を急増させています。

 高額の保険料を四十年間払い続けても、支給額が生活保護基準よりはるかに低い国民年金。今国会では、払い込んだ厚生年金・国民年金の保険料の記録が「宙に浮き」、受け取れるはずの年金さえ「消えた」事実が明らかになりました。

 介護では、施設・在宅を問わず、人間らしく生きる最低限のサービスまで取り上げられ、「介護難民」を余儀なくされたお年寄りが急増しています。

 最後のセーフティーネットである生活保護でも、窓口で扉を閉ざされ文字通り「命綱」を断たれた人が、餓死や自殺に追い込まれる事件が発生しています。母子家庭や高齢者の保護費が削減され、生活をますます困難にしています。

 すべて、世界第二位の経済規模を誇る日本で起きていることです。

どこの国の話か

 庶民の負担は連続で引き上げ、一人当たりの社会保障給付は連続で切り下げられてきました。国民負担が低いと言いますが、その「国民」には大企業も大資産家も入っています。庶民に増税、大企業・大資産家に減税という逆立ち税制によって、庶民の負担がどんどん膨らんでいるのに、大企業・大資産家を含む「国民」負担は低く見えるからくりです。

 暮らしの実態も実感も「低福祉―高負担」です。それと正反対の「どこの国の話か」という議論で、福祉削減を強行するのは許せません。

 社会的弱者を見捨てる「棄民政策」そのものの冷たい政治に対して、生きる権利を守る世論と運動を大きく広げていこうではありませんか。


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