2007年6月7日(木)「しんぶん赤旗」

主張

自衛隊の国民監視

暗黒政治の復活は許せない


 日本共産党の志位和夫委員長が自衛隊の内部文書をもとに記者会見であきらかにした、自衛隊の情報保全隊が国民のあらゆる活動を系統的に監視し記録していた実態に衝撃と怒りが広がっています。

 自衛隊が国民の動きを監視し、記録するなどというのは、日本国憲法をじゅうりんし、自衛隊法などにも根拠をもたない違憲・違法の活動です。自衛隊という軍隊が国民の知らない間に、国民のあらゆる活動を系統的に調べ上げ記録するというのは、戦前の「憲兵政治」復活にもつながる重大問題です。

増税反対運動も対象

 自衛隊の情報保全隊は二〇〇三年にそれまでの調査隊を改編・強化したものです。「自衛隊の機密情報の保護と漏洩(ろうえい)の防止」が任務とされてきました。今回の内部文書は、それにも反して、国民を監視するのが情報保全隊の仕事だったことを明白にしました。

 志位委員長があきらかにしたのは陸上自衛隊・東北方面情報保全隊が作成した文書と情報保全隊本部が作成した文書の二種類です。

 前者の「情報資料について(通知)」と題する文書は、東北方面で情報保全隊が収集した情報を定期的に報告したものです。イラク派兵反対の活動について記載するとともに、「消費税増税反対」、「医療費負担増の凍結・見直し」、「国民春闘」、「小林多喜二展」のとりくみなどが記載されており、文字通りあらゆる活動を監視下においたことをうきぼりにしています。

 後者の情報保全隊本部が作成した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」と題した文書は、情報保全隊が組織をあげてイラク派兵反対運動の監視に特別の体制をとっていたことをうかがわせています。

 文書はいずれも「関係団体」「内容」「勢力等」や個人名まで記載し、監視・収集した国民の運動を、「日本共産党系」「社会民主党系」「民主党と連合系労働組合」などと勝手に区分することまでしています。映画監督や画家、写真家、ジャーナリストなどの動向も監視下におき、地方議会の活動も監視対象です。

 内部文書が示した情報保全隊の活動は、集会、結社および言論、出版などの表現の自由を保障した憲法二一条、個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利を保障した憲法一三条、信教の自由を保障した憲法二〇条に違反することは明白です。写真の隠し撮りなどは国民のプライバシーを侵害する明白な犯罪行為です。

 武力集団である自衛隊が政府の政策や自衛隊の活動に批判的な市民や政党の活動を監視していることは民主政治を危うくさせる恐るべき事態です。これは、旧日本軍の治安機関であった憲兵隊がやがて国民全体の監視機関となり、国民を弾圧する機関となっていった戦前の暗黒政治を復活させるものです。絶対に許せることではありません。

ただちに中止せよ

 日本共産党は志位委員長の記者会見のあと、自衛隊情報保全隊の活動の全容をあきらかにするとともに違憲・違法な監視活動をただちに中止させるよう政府に申し入れました。

 ことは自衛隊のイラク派兵に賛成か反対かなどという問題にかかわりなく、国民全体の自由と民主主義にかかわる問題です。どんな口実があれ絶対に許されません。

 この問題を全国民的なとりくみにして、情報保全隊の活動の全容をあきらかにさせ、監視活動を即時中止においこんでいくことが重要です。


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