2007年6月4日(月)「しんぶん赤旗」

主張

陸自中央即応連隊

まぎれもない海外で戦う先兵


 自民、公明、民主の三党は一日の参議院本会議で、三月末に発足した陸上自衛隊中央即応集団に海外派兵の先兵となる中央即応連隊を新設する、自衛隊法「改正」案を可決・成立させました。

 中央即応連隊は中央即応集団の中核となる地上戦闘部隊です。先遣部隊として海外の戦場に真っ先にかけつけ、作戦を実施することが大きな仕事です。中央即応連隊の創設によって海外で戦争ができる軍事態勢づくりが加速することは重大です。

出動先は米軍の戦場

 中央即応連隊(七百人)が属する中央即応集団(四千百人)は、「国際平和協力活動」が最大の任務です。「国際平和協力活動」とは、政府がイラクを含むといっているように、アメリカが世界各地でおこす先制攻撃戦争に参加する活動です。

 二〇〇四年十二月策定の「防衛計画の大綱」は自衛隊の任務を「日本防衛」から海外派兵に重心を移しました。それを基礎づけた同年十月の「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告は、陸自に「海外任務に常時即応するため高い練度の部隊を保有する」と明記しました。ブッシュ政権が高く評価したこの報告を具体化したものが中央即応集団です。

 アメリカの要請に従って、迅速に戦場に向かい米軍とともにたたかうことが生まれながらの任務です。キャンプ座間(神奈川県)に米陸軍第一軍団司令部が移転すれば、その指揮のもとで日米共同の海外作戦が進むことになります。「日本防衛」と無縁な海外での戦争態勢づくりを認めるわけにはいきません。

 中央即応集団の初代司令官として山口淨秀陸将は着任の辞(三月三十一日)で、「武力集団の原点に立ち返り」などといっています。中央即応集団を海外で“武力を行使する集団”というのであれば重大です。政府は憲法が武力行使を禁止しているため、自衛隊を武力集団とはいわず、「最小限の実力組織」といっています。山口司令官が「武力集団」といってはばからないのは、安倍首相が解釈改憲によって集団的自衛権の行使にふみだそうとしていることに鼓舞されてのことです。中央即応集団の創設を機に、海外での武力行使をにおわせる自衛隊幹部の言動を軽くみることはできません。

 中央即応連隊は中央即応集団のなかでも、真っ先に戦場にかけつける特別の役割を担います。そのため隊員も装備もすべて海外作戦に備えたものとなっています。隊員は「高い技量と豊富な経験」を持つ者から選びます。使用装備も、イラクのように砂塵(さじん)が舞うところでも飛行できるようにCH47JA輸送ヘリのエンジンに防塵フィルターを付け、多用途ヘリなどには機関銃を装備します。車両には防弾処置を施します。久間防衛相は輸送能力を増大するために「大型の装備もそろえる必要がある」といっています(昨年十一月二十八日衆院安全保障委員会)。軍事費の増加は必至です。

 中央即応連隊が向かう先は米軍の戦場です。世界を脅かすアメリカの先制攻撃戦略に参加・協力するのは憲法にも国連憲章にも反します。

アジアに広がる不安

 安倍政権が憲法九条の改悪をめざし、日本を「戦争をする国」に変える政策を強めていることがアジア諸国の警戒心を増幅させています。歴史のわい曲とアジア侵略の正当化がその不安に拍車をかけています。

 憲法九条を守り、日本を海外で「戦争をする国」にしないことがアジアの最大の安心材料です。


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