2007年5月6日(日)「しんぶん赤旗」

英地方選 労働党が大幅減

イラク参戦で退潮続く

ブレア政権に打撃


 【ロンドン=岡崎衆史】三日に投票が行われた英地方選は四日深夜までの集計の結果、ブレア首相率いる与党労働党が各地で議席を減らして大きく後退したことが判明しました。


 選挙が実施されたのは、イングランド、スコットランドの計三百四十四の自治体とスコットランド議会(定数百二十九)、ウェールズ議会(定数六十)です。

 イングランドの自治体選挙では、三百十二自治体のうち三百九カ所で、開票作業が終わり、労働党は四百八十五議席減の千八百三議席です。一方、国政で最大野党の保守党が八百七十五議席増やして、五千七十七議席を得ました。

 労働党が過半数を占める自治体は八カ所減って三十四に、保守党が過半数の自治体は三十八増えて、百六十二になりました。

 スコットランド議会選でも、労働党は四議席減らして四十六議席となり、第二党に転落。これに対して、スコットランド独立を掲げるスコットランド民族党が二十議席増やして四十七議席を得、第一党に躍進しました。スコットランドでの労働党の優位が崩れたのは半世紀ぶりです。

 一方、ウェールズ議会選で、労働党は四議席を減らしましたが、二十六議席を得、第一党は維持しました。ウェールズの独立を掲げるウェールズ民族党が三議席増やし、十五議席を得、第二党を維持しました。


新自由主義政策でも支持層離反

解説

 三日投票の地方選挙は一九九七年以来のブレア政権にたいする国民の審判という意味を持っていましたが、与党労働党は各地で議席を減らし、辞任を目前に控えたブレア首相にとって厳しいものとなりました。

 国民を政権不信任に駆り立てたのは、外交政策ではイラク参戦、内政では新自由主義政策でした。これに、労働党が、上院(貴族院)議員に推薦する見返りに巨額の融資を不正に受け取っていた疑惑が加わりました。

 ブレア首相は、労働党の党首として初めて連続三度の国政選挙で勝利。しかし、二〇〇三年のイラク参戦後は、はっきりとした退潮傾向を示してきました。労働党は、戦争開始後初めての総選挙となった〇五年、得票率を5・4ポイント減らして後退。〇六年のイングランド地方選でも、三百十九議席減らして大敗しました。このため、三期目を全うすることを狙っていたブレア首相は、今年秋までの辞任を表明せざるを得なくなりました。

 政府は、トライデント型潜水艦発射弾道核ミサイルを主体とした現有核兵器システムの更新も決定。イラク参戦同様、「平和」を理由に労働党を支持してきた層の離反を招きました。

 さらに、政府の新自由主義政策が、強力な支持層である労働者の批判を呼びました。

 ブレア政権は発足以来、医療や教育費を拡充し、最低賃金制を導入するなど、労働党政権らしい政策を打ち出してきました。

 しかし、一方で、医療など公共部門での民間企業の役割を増大させ、不採算部門の閉鎖や人員削減も推進。これに労働者を中心に多くの国民が反発しました。

 組合員四十万人の看護師労組・英看護協会は四月十五日、医療制度「国民医療サービス」(NHS)についての報告書を発表し、過去一年半で二万二千三百人の職場が人員やポストの削減によって失われたとして、政府の医療政策を糾弾。また、公共・商業サービス労組(PCS)は今年に入って二十万人規模のストライキを二度行い、人員削減、民営化に抗議しました。

 地方選挙前の四月二十四日、英紙インディペンデントは世論調査を掲載。労働党の支持率は27%で、一九八三年以来の低さでした。(ロンドン=岡崎衆史)


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