2007年5月1日(火)「しんぶん赤旗」

地球温暖化の危機 すぐそこに

日本への影響は

IPCC報告警告


 2030年までに世界の平均気温は0.4度もの上昇は避けられない。化石燃料に依存しつづければ、今世紀末には、世界も日本もこれまで経験したこともない深刻な気候変動による影響が――。地球温暖化の影響を予測した国連の「気候変動に関する政府間パネル(政府間機構)」(IPCC)第4次評価報告書(第1、第2作業部会)は、社会経済などへの影響が予想以上に加速したと警鐘を鳴らしました。二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減は待ったなしの課題。温暖化の進行で日本ではどんな影響がでるのでしょうか。(宇野龍彦)


食卓から肉が消える?

 「百年先とかの気温上昇が何度だと聞いてもピンとこないかもしれません。が、温暖化の影響は、次世代だけでなく、増加する異常気象によって現世代も被害を受けるのです」。京都議定書発効二周年のことし二月、東京都内で開かれたセミナー「すぐそこにある温暖化の危機」で、国立環境研究所の原沢英夫・社会環境システム研究領域長は、こうのべました。

 牛肉や穀物、飼料、水産資源などを輸入に依存している日本は、温暖化による世界の水不足や太平洋南東部の水産資源の変化に直撃されるという予測があります。

 国立環境研究所がまとめた二〇五〇年までの「気候変化がコムギ潜在生産性に及ぼす影響」によると、地球の年平均気温が二・四度、米国の年平均気温が約四・七度上昇した場合、米国の小麦が二〇五〇年に75―40%減少すると予測しています。

 日本が輸入している飼料用トウモロコシは94%、小麦も55%、大豆も75%、米国に依存しています。米国の穀物生産が温暖化によって影響を受け、飼料用トウモロコシの輸入が減少・ストップする事態になれば、日本の畜産酪農も打撃を受け、食卓から牛乳、乳製品、牛肉、豚肉、鶏肉、卵などまで姿を消すことになりかねません。

真夏日が4カ月間も

 国立環境研究所、東京大学気候システムセンター、海洋研究開発機構は、日本の真夏日(最高気温三〇度以上)の日数が、一九〇〇年から二一〇〇年の間に地球温暖化でどう増えたのか、増えるのかを予測しました。

 二〇〇〇年ごろまでは毎年四十日前後だった真夏日が二〇一〇―二〇三〇年には、年間六十日前後に増え、その後も急カーブで増えつづけて、今世紀末には百十五日前後にもなることもわかりました。

 真夏日が一年の三分の一の約四カ月もつづくことになるのです。

 熱中症予防ネットワークによると、日最高気温が二九、三〇度あたりから熱中症患者が発生しはじめ、三三、三四度を超えると急激に増えるといいます。

 また、日降水量が一〇〇ミリを超える「豪雨」は、六―八月には二―三倍に増加します。

広範囲に農漁業被害

 農水省がまとめた気候変動の農業・漁業影響資料集などによると、稲作への影響は、害虫被害の増加や、「コメの発芽期の高温障害によって、粒の充実が不十分になり、乳白色化して等級を下げる」、「カメムシ被害が多発する」などをあげています。

 九州の北部、中部の広大な水田地域では潜在的な水不足に陥ることが予測されています。果樹も、リンゴ栽培に適した気温(年平均七―一三度)の地域分布が激変。野菜では、トマトが腐ったり、糖度が低下したり、実がつきにくくなります。ピーマンも実がつきにくくなったり、キャベツが結球しなくなるなどの障害をうけるといいます。

 漁業分野でも、海水温上昇によって、大型クラゲの被害が増大する可能性や、スケトウダラ漁、サンマ、ヒラメ、養殖トラフグへの影響も予測されています。

排出削減まったなし

 二、四月に相次いで公表されたIPCC報告は「ほとんどの大陸、海洋で、いままさに地球温暖化の影響を受けている」と指摘。地球温暖化の最新の研究成果をまとめました。

 世界の生物環境の約二万八千項目のデータの実に90%、氷雪・水循環などの自然環境では約八百項目の観測データの94%で温暖化の影響が確認されました。

 「気候変動でおきる洪水、森林火災、海洋酸性化などの併発によって、二十一世紀中に生態系の復元力が追いつかなくなる可能性が高い」「今世紀中に、氷河や積雪による水供給が減少する。おもに山岳地帯から雪解け水の供給を受けている地域(世界の人口の六分の一余)で利用可能な水資源が減少し、とくにアジアでは二〇五〇年までに十億人以上が水不足の悪影響をうける」―。IPCC報告は、新たにわかった問題をこう指摘しました。

 原沢さんは「温暖化の影響は五十年先、六十年先の話だったのが、ハリケーンのカトリーナ被害や欧州熱波などの異常気象で先進国の現在の問題となった」と指摘。日本でも台風、集中豪雨などの異常気象の頻度や強度が変化し、深刻な被害を受けることが予測されることから、「二酸化炭素の排出削減による温暖化にブレーキをかけるとともに、気候変動への適応で被害軽減を計画的に行うことも重要になっている」と強調します。

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