2007年5月1日(火)「しんぶん赤旗」

「過半数割れ」におびえる自民

参院選目前


 参院福島、沖縄両補選の結果を受け安倍晋三首相は、初の本格的国政選挙となる夏の参院選を「憲法改正」など“タカ派”色を前面に出して乗り切ろうとしています。政府・自民党内では、参院「与党過半数割れ」の危機感から、勝敗ラインをめぐって早くも激しい“綱引き”が始まっています。

 参院補選について首相周辺は、もともと野党の議席だった二つのうち「沖縄での勝利は大きい」としています。

 しかし、こんな声もあります。「沖縄は首相が二度も入るなど総力を挙げたのにあの小差。しかも“保守王国”福島では惨敗だ。道府県議選も九十七議席減の過去最低で、このままでは参院選は危うい」(大臣経験者)

党内の“綱引き”

 参院は、定数二百四十二議席のうち半数の百二十一が三年ごとに改選されます。与党の非改選議席は五十七(自民四十六、公明十一)でしたが沖縄分を足して五十八議席に。今回与党が過半数(百二十二)を維持するには、仮に公明党が現状維持(改選十三)とすると、自民党は五十一議席必要となります。

 ところが、ここ四回の参院選を見ると、自民党が五十議席を超えたのは六年前の爆発的“小泉ブーム”のとき(六十四議席)だけ。しかも今回は、六年前の“小泉ブーム”で大量当選した議員が改選を迎えます。

 加えて相次ぐ「政治とカネ」疑惑、郵政「造反組」復党、負担増と大増税、「貧困と格差」の拡大などに国民の批判が集中しています。「改憲、教育問題などで安倍の“地金”を出し、右寄りの支持拡大を狙うが、自民党が増える要素は少なく、守りの選挙」(政治評論家)といわれています。

 「(自民党は)比例代表では最低十五議席、さらに二十九ある一人区で二十議席(補選も入れて)取らないと、与党で過半数を維持することはできない」。自民党の青木幹雄参院議員会長は三月十六日、自民党支持団体との会合で具体的数字を挙げ、「過半数割れ」への危険を力説しました。

 これは、選挙の“司令塔”となるべき中川秀直幹事長が四日前、「どこが勝敗ラインで、どこが責任ラインか…そんなこといいません。(参院で)過半数が割れたって、政権選択選挙ではないかもしれない」と発言したことへの反論でもありました。

青木氏の危機感

 実は中川発言の直前、小泉純一郎前首相も安倍首相、中川氏らとの懇談(三月七日)で「万が一負けても参院選は政権選択選挙じゃない」(「毎日」)と述べていました。

 こうした発言は、参院自民党の“ドン”として「参院選で与党が過半数を割れば、自民党も内閣も死に体になる」と繰り返してきた青木氏にすれば、無責任な発言に聞こえたに違いありません。

 青木氏は「(参院で過半数割れすれば)国民が黙っていない。衆院を解散して民意を問えということになる」(昨年十一月、徳島市)と強調しています。

 青木氏と「青・森コンビ」を組んできた森喜朗元首相も、「(自民が)十議席以上失うとかなり厳しくなる」(昨年四月、都内)と、自公連立の危機を唱えていました。ところが、年が明けると「衆院は圧倒的に(議席が)ある。首相がどうこうなることはない」(一月十六日、都内で。「共同」)と、安倍首相の責任を問わない姿勢に。

 中川氏が責任逃れとも取れる発言をしだしたのは、その直後からです。

 「政権選択選挙ではない」と首相の責任に“煙幕”を張る中川氏。他方“死に体”論を唱え「参院で過半数を持っていて初めて生きる(衆院の)三分の二」と危機感をあおる青木氏。

 これらの確執はいずれも、自公連立による国民不在の悪政の結果、与党が「参院過半数割れ」の重大危機に直面し、それを何とか回避しようと、必死にもがいていることの表れといえます。

 国民が審判を下す参院選本番は目前です。(梁取洋夫)


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