2007年4月21日(土)「しんぶん赤旗」

人種差別を処罰化

EU理事会が法案承認


 【ベルリン=中村美弥子】ルクセンブルクで開かれている欧州連合(EU)司法・内務相理事会は十九日、人種差別をあおったりホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺)を否定ないし矮小(わいしょう)化したりする行為を処罰の対象とする法案を承認しました。加盟各国は二年以内の施行をめざし国内法化の作業に入ります。

 法案によると、肌の色や宗教、出身国に基づいて団体や個人に対して公然と暴力や憎悪を扇動すれば、一―三年の刑に処せられます。ホロコースト否定については、それが暴力や憎悪を誘発する恐れがある場合、処罰の対象となるとしています。

 どのような行為が暴力や憎悪の扇動だとみなされるのかは、各国の裁判所の判断に委ねるとしています。また、ナチのシンボルである「かぎ十字」の欧州規模での使用を禁止することは盛り込んでいません。

 EU議長国ドイツのツィプリース法相は、「刑事罰は補助的な措置であり、人種差別や外国人排斥とのたたかいでは、それだけでは十分ではない」と述べ、差別の根絶には社会的な取り組みが欠かせないとの考えを示しました。

 六年越しの議論を経ての合意となりました。スウェーデンやデンマークが表現の自由が危ぶまれると主張したのに対し、ドイツやフランスは人種や宗教に基づく差別の厳重な取り締まりを目指す立場を取りました。

 EUの執行機関である欧州委員会のフラティニ副委員長(司法・自由・治安担当)は、合意は表現の自由を全面的に保障しているとした上で、「われわれが罰するのは、憎悪の扇動という具体的な行為であり、思想ではない」と説明しました。

 人権団体やユダヤ人団体からは、今回の合意は実際に差別に直面している市民に実質的な保護を提供するものだとはいえず、不十分な内容だとの声が上がっています。


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