2007年4月21日(土)「しんぶん赤旗」

76年キューバ旅客機爆破

テロ容疑者 米が保釈

各国から非難相次ぐ


 【メキシコ市=松島良尚】一九七六年のキューバ旅客機爆破事件を指揮したポサダ・カリレス容疑者が十九日、米連邦裁判所の決定で保釈されたことで国際的非難の声が上がっています。同容疑者の身柄引き渡しを米政府に求めているベネズエラのマドゥーロ外相は「国際法に対する米国のクーデターだ」ときびしく批判。キューバ、ニカラグア政府も相次いで米政府を非難しました。


 同旅客機爆破事件では七十三人が死亡しています。ポサダ容疑者はベネズエラ国籍を持ち、事件後、同国で逮捕されましたが、一九八五年に脱獄。パナマで再逮捕されたものの、同国の保守政権が釈放し、その後、二〇〇五年五月に米国に密入国し、不法入国の疑いで逮捕されていました。

 米政府は同容疑者をテロリストとしてでなく、不法入国者として扱っており、来月十一日に同容疑者の不法入国裁判が行われる予定です。

 これに対し、米国と犯罪人引き渡し条約を締結しているベネズエラのマドゥーロ外相は同容疑者を直ちに引き渡すよう要求しました。同外相は、米中央情報局(CIA)の工作員だったポサダ容疑者がキューバなど中南米で殺人や拷問にかかわってきたとし、米国が身柄引き渡しに沈黙していることに対し、「ブッシュ米政権はこのテロリストの共犯者だ」と非難しました。

 また同国のチャベス大統領は、米国が「ポサダを事実上釈放した」とした上で、「彼らはテロとたたかうといっているが、その仮面はいつも顔からすべり落ちている」と述べ、ブッシュ政権の「反テロ」の偽りの看板を指摘しました。

 一方、キューバは、「保釈決定を断固として非難する。ポサダを自由の身にした責任は全面的に米政府にある」とするワシントン駐在利益代表部の声明を発表しました。ポサダはキューバのカストロ政権転覆のため数々のテロ行為にかかわってきたとされます。

 ニカラグアのオルテガ大統領は、保釈を非難するとともに、一九八〇年代に当時のレーガン米政権がニカラグアの反政府武装勢力を支援したさいポサダ容疑者がこの干渉に関与していたことを指摘し、同容疑者の裁判をニカラグアで実施できると提起。米政府に身柄引き渡しを請求すると述べました。


「テロリストとして裁け」

知識人ら1827人署名

 【メキシコ市=松島良尚】世界各国の知識人らがブッシュ米政権に対し、キューバ旅客機爆破事件のポサダ・カリレス容疑者をテロリストとして裁けと抗議、ベネズエラへの身柄の引き渡しを求めています。十五日に始まった抗議文への賛同署名は十九日までに千八百二十七人に達しました。

 発起人は、ノーベル文学賞受賞者のナディン・ゴーディマ氏(南アフリカ)や米言語学者のノーム・チョムスキー氏、「反戦の母」として知られる米国のシンディ・シーハンさんら三十一カ国の百五十五人。

 抗議文は、「多くの人がテロとのたたかいの名でイラクやアフガニスタンで死に、(イラクの)アブグレイブや(キューバにある米軍基地内の)グアンタナモ収容所で拘束、拷問されている中、米政府は米州で最も知られたテロリストを保護し、法を偽る際限のない策略で世論をごまかそうとし、ポサダを実際の犯罪で裁くことを拒否している」と米政府を非難しています。


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