2007年4月11日(水)「しんぶん赤旗」

パート労働法改定案

「均等待遇」の願い遠く

国会審議で問題点鮮明


 十四年ぶりとなるパート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の改定法案の審議が続いています。柳沢伯夫厚労相は「どのような働き方を選択しても安心、納得できるよう」にと、法案を提出したとしています。しかし、全国千二百万人のパート労働者が「安心、納得」できるのか。問題点が鮮明になっています。


対象者数もわからない

 政府案は、正社員と仕事や転勤などが同じで期間の定めのないごく一部のパートに限って、通常の労働者との差別的取り扱いの禁止を盛り込みました(罰則規定なし)。しかし、これさえ対象者がどの程度いるのか一向に明らかになりません。

 柳沢厚労相は「ぴたりのデータはない」「調査は難しい」と繰り返し、「二十一世紀職業財団」の調査をもとに「4―5%程度」と答えています。しかし、同調査より政府案の方が“雇用されている全期間において、配転などが同じ”と厳しい条件がついています。「4―5%」より対象者が少ないのは明らかです。

パート間で格差がつく

 政府案では、この差別禁止の対象となる(1)通常の労働者と同視すべきパートのほかに、(2)仕事や責任が同じだが、一定期間だけ転勤がある(3)仕事や責任が同じ(4)仕事や責任が違う―の四つにパートを区分しています。

 (1)は一切の差別禁止ですが、(2)は賃金を通常労働者と同じ方法で決めるよう努力するとし、(3)(4)は賃金は「意欲」などを参考に使用者が決めるなど、パート間で格差がつきます。

 「パートを分断するものでないか」との質問に厚労省の大谷泰夫・雇用均等・児童家庭局長は「労働者の方々が移動することを制約するわけではない」と答えました。パートも正社員なみに働き、転勤をすればいいと言わんばかりです。

 日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は「男性社員の四人に一人が過労死ラインを超えた働き方。パートにもこうした働き方をしろということか」と追及。大谷局長は「ワークライフバランス(仕事と家庭の調和)は正社員、パートを問わず大事な考え方」とのべ、正社員の働き方を改善する必要性を認めざるをえませんでした。

使用者側が脱法抜け道

 パート労働者をいくつにも区分するため、使用者が法律の抜け道をいくつもつくりかねません。

 大谷局長は、正社員と同視すべきパートのイメージとして、部品製造工場の組み立てラインで正社員と同じように働き、パートも正社員も転勤がなく、契約更新を繰り返し、QC(品質管理)サークルにともに入っていて、パートの方が勤務時間が短いだけという例をあげました。

 この例では、使用者が正社員だけに転勤があると就業規則を変えれば、(1)に相当するパートを(2)のパートに“格下げ”できます。

 大谷局長は「判例でも合理性のない就業規則の一方的変更はできない」と答えましたが、保障はありません。

 全労連などは、こういう正社員と変わらないパートは通常の労働者として雇用するよう求めていますが、脱法行為を許さない対応が求められています。

 またパートの八割が有期労働契約で働いているのに、なんの規制もありません。全労連などは、人件費削減のための有期雇用は最初から認めず、何度も契約更新を繰り返すような働かせ方を禁止することなどを求めています。

求められる抜本修正

 政府案が煩雑なパートの区分をし、抜け道だらけなのは、パート労働者が求める「均等待遇」ではなく、格差を前提とした「均衡待遇」にとどめているからです。

 同じ仕事であれば、賃金などは同じにする「同一労働同一賃金」の原則にたってすべてのパートに対する差別待遇を禁止すれば、煩雑な区分は必要なく、パート間に格差をつくることもありません。政府案の抜本修正が焦点になっています。

参考人から批判相次ぐ

“多数は差別禁止されず”

衆院厚労委

 衆院厚生労働委員会は十日、パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)改定法案についての参考人質疑をおこない、六人が意見陳述しました。「圧倒的多数のパートは差別禁止とならない」など、抜本修正を求める意見が相次ぎました。

 全労連の井筒百子・総合労働局政策局長は、政府案が厳しい条件を満たす一部のパートだけを差別禁止の対象とし、それ以外は均衡待遇の努力義務としていることを批判。「すべてのパート労働者を対象に正規と同様・類似の仕事をするパートの時間当たり賃金は同じという均等待遇原則を法案に規定するよう修正してほしい」とのべました。

 中野麻美弁護士は、政府案が差別禁止の対象となるために正社員と同じ異動を求めていることや、有期雇用を認めていることを批判しました。

 参考人に対し、日本共産党の高橋千鶴子議員は、均等待遇のためにどのような基準が必要かや、福利厚生に差をつける必要はないのではないかと質問。井筒氏は、労働運動がパートの福利厚生を少しずつ改善させてきたのに、パート間に区別を持ち込み、同じ職場で働く労働者に差別を持ち込むことになるとのべました。労働政策研究・研修機構の今田幸子特任研究員は「(福利厚生は)平等にしていくのが望ましい」と答えました。

 高橋議員は、差別禁止の対象となるパートが少ないことについて、“差別の基準が適切であるならば、その対象となる層が少ないことは望ましい”という議論について、「差別の事例が実際に少ないというならいいが、対象をしぼりこむための基準ではないか」とただしました。中野弁護士は「すでに差別は多くが解消されているというのはナンセンス」と指摘しました。

全労連・井筒政策局長の陳述

 十日の衆院厚生労働委員会で、全労連の井筒百子・総合労働局政策局長が、パート労働法改定法案についての参考人として意見陳述しました。要旨を紹介します。

 改正案では、条件をクリアした正社員と同視できる短時間労働者にのみ「差別的取り扱い禁止」と規定し、それ以外のパートは「均衡処遇の努力義務」にとどまっています。これではパート労働者全体の処遇改善、均等待遇実現にはとうてい結びつかないと思います。

 すべてのパート労働者を対象に正規と同様の仕事をするパートタイマーの時間当たり賃金は同じという均等待遇原則を法案に規定する修正をぜひやっていただきたい。

 条件をクリアした正社員と同視できる短時間労働者など、存在そのものが疑問視されています。逆に正社員と同視できる働き方をさせなければ、使用者は待遇を正社員並みにしなくてもいいことになります。条件のハードルは極めて高いので、使用者がちょっと雇用管理のあり方を工夫すれば、正社員並みの働きをするパートを、従来通り雇用することができる、抜け道がいくらでもある法律になってしまいます。

 規制力の弱さも問題です。“賃金が百円、五十円と大幅アップ”―。こんなことが努力義務で実現するのでしょうか。

 私たち労働組合はパート労働者の時間給引き上げをねばり強く、こつこつとやってきました。それでも景気悪化や非正規労働者全体の賃金低下のもとで、数年前から賃金ダウンの提案が相次いでいます。

 私たちが取り組んだ「パート・臨時・派遣などで働くみんなの実態アンケート」では、この三年間の労働条件の悪化について聞いています。一番多いのが賃金切り下げで24・6%、業務量の増加が19%。回答者の10・1%がダブルワークをしていると答えています。

 パート労働法の改正が実効あるものになれば、パート労働者全体の処遇改善がすすむだけでなく、アルバイト、派遣、請負など非正規労働者全体の賃金・労働条件改善に大きく寄与するでしょう。格差の是正がすすみ、貧困化に歯止めをかける大きな波及効果を持つものになると思います。

 有期雇用契約は非正規労働者の雇用の不安定と低い労働条件を固定化する原因となっています。継続してある仕事は期間の定めのない労働契約とすること、有期労働契約は臨時的、一時的仕事に限定することをぜひ、パート法にも反映させ、あわせて労働基準法改正もおこなわれることを要望します。



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