2007年4月3日(火)「しんぶん赤旗」

学校格差が社会崩壊に
「主役は子ども」を壊す

学力テスト シンポから


 三月三十一日に行われた緊急シンポジウム「このままでいいのか全国学力テスト」(本紙一日付既報)は、参加者から発言が次々続き、当初の予定時間を大幅に超過しました。百八十人で埋まった会場は、二十四日に迫った全国いっせい学力テストに対する関心と不安の強さを示しました。その一部を紹介します。


格差が拡大

 国際基督教大の藤田英典教授は「教育格差の悪循環が進んでいる。ヨーロッパは歴史的につくられた格差の解消を教育に期待しているが、日本は教育と政策で格差拡大が進められている。安倍政権でそういう傾向が強まっている」と指摘しました。

 週刊誌がそれぞれの地域別の子どもの偏差値を出したり、不動産業界がそれを住宅やマンションのセールスポイントにするなど「社会的モラルハザード(倫理の崩壊)が起きている」と批判。「教育を商品として扱い、学力によって学校の序列をつけて、どの学区に住むか、どこに子どもを入れるかと考えるのは当然という風潮が広まっている。それに拍車をかけるのが全国学力テストだ。日本の将来はこのままでは危ない。こういうことは早く中止した方がいい」と訴えました。

 また、すでに自治体単位で学力テストが行われているところでは、クラスの成績が悪かった担任教師が肩身の狭い思いをし、テストの成績が悪い子どもは当日休むように指導されていることを紹介し、「匿名性はまったくない。全国一斉学力テストが行われれば、こういう風潮が強まる」と警告し、「政治が変わらないといけない」と述べました。

競争主義的

 愛知県犬山市教育委員の中嶋哲彦・名古屋大教授は「全国学力テストは学校や自治体が行う教育を国が考える枠組みで評価するもので、学校教育がこれまで以上に競争主義的になる」と警告しました。

 また、学力テストの結果を公表し、学校選択制や教育バウチャー(利用券)制の導入を進めようとする政府の意図があることも指摘しました。

 そのうえで、学力テストへの不参加を決めた犬山市の「手づくり」で行っている教育を紹介し、「学力テストはそれに真っ向から反対するもの。それぞれの地域や学校で、自分たちで教育をつくっていく営みを全部押し流してしまうものだ。文科省がつくった枠組みに地域や学校を入れようというもので、受け入れるわけにはいかない」と怒りをあらわにしました。

 会場から発言した犬山市の教育委員長は、「主役は子ども」として少人数のグループ学習など子どもと教師が信頼しあって授業をしている犬山市の教育を紹介。十年間の教育行政の実践の積み上げの上に、今回の学力テスト不参加があることを語りました。

最悪の改革

 東京大の苅谷剛彦教授は「犬山市の教育は昨日今日始まったことではない。東京では都知事選や地方選のなかで有権者が問うていけば、流れは変えられる」と述べました。

 苅谷氏は安倍内閣の教育再生会議について「きわめて問題の多い会議。戦後史の中でこれだけ拙速な教育改革はなかったのではないか。新自由主義的な路線がいっそう明確になった」と告発。

 「学力テストを実施する前に授業時数を10%増やすという提言が出ている。診察なき処方ということだ。政策決定のつじつまが合わない」と批判しました。

 会場からは、「点数競争で被害を受けるのは教員だ。みんな人間的な教育がやりたいと思って教師になったが、そんなことはできない。自分を追い込んでやる気がなくなっていく」(東京都江戸川区の教員)と学力テストを批判する声が出ました。

 子どもが不登校だった大田区の男性は「学力テストが導入されたら、不登校の子はどうなるのか。平均点を下げるからテストが終わるまで学校にくるなとなる。子どもが立ち直れなくなる」と話しました。



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