2007年4月2日(月)「しんぶん赤旗」

働けど… ―若者たちは(7)

火を吹いて怒る瞬間を


 「火を吹いて怒る瞬間を持て」。脚本家の山内久さん(日本シナリオ作家協会元理事長)は、連載を読んで現代の若者にそんなメッセージを寄せました。

 山内さんが脚本を書いた映画「若者たち」が制作・上映されたのは一九六七年のこと。団塊世代の青春群像を描いた作品でした。

 あれからちょうど四十年。今二十代から三十代の若者は、団塊世代のジュニアたちです。

 二回目に登場した井川亮さん(33)=仮名=が月七万円、三回目の佐藤冬美さん(25)=同=も月五万円、それぞれ少ない収入の中、家計を助けていました。その「親孝行と優しさ」を山内さんは好感をもって見つめます。きょうだい五人が寄り添って生きる映画「若者たち」の主人公たちと重なるからです。

 あのころよりも過酷になった労働と貧困。「精神的な閉塞(へいそく)感は団塊世代が若者だったころよりひどくなっている」と見る山内さん。

 現代を生きる若者たちに「傷つくことを恐れずに率直さと勇敢さがあれば厳しい現実を突破する道が開ける」とアドバイスします。

 山内さんは、「人生の先輩としての爺(じじ)いの役割がある」ともいいます。

 「(団塊の世代は)一九六〇年代から七〇年代のたたかいに自己満足してはいないだろうか。若者たちは、生な実感で人生を教えてほしいと願っている。若者がはっと耳をそばだてて尊敬の念を持って聞き入ってもらえる話をしているだろうか?」と問いかけます。


 映画「若者たち」 森川時久監督、山内久脚本。民放ドラマで放送後、一九六七年に自主上映されました。六九年「若者はゆく」、七〇年「若者の旗」の三部作として完結。時代背景は、貧困から「高度経済成長」へ向かうとき。青春期の団塊世代の五人きょうだいが主人公。学費値上げ反対の学園闘争、労働争議、被爆者問題などを織り交ぜながら、生き方を必死に模索する若者たちの姿を描いています。


たたかう仲間を大切に

 「想像を絶する事態が若者たちのなかに起きている」と話すのは、日本民主青年同盟の姫井二郎委員長。青年雇用アンケート活動、「雇用黒書」づくりなどに取り組んでいるなかで、「ネットカフェで暮らす家のない青年。それが極端で特異な事例ではなくなっている」と語ります。

 姫井さんは、「いつホームレスになってもおかしくない予備軍がたくさんいます。連載は、そうした信じがたいほど貧しい状況に置かれている若者のすそ野の広がりを伝えています」とのべて、「非正規社員と正規社員の区別なく、そうした苦しみを丸ごと受け止めてほしい」と訴えます。

 外食産業大手「ゼンショー」が経営する牛丼チェーン店「すき家」で働く青年たちが労働組合に入ってたたかっている経験を話す姫井さん。

 「彼らは最初職安に相談したのです。そこでは事務的なことは教えてくれたものの、『勝てない』と思ったそうです。頼りになるという実感がなかった。インターネットで首都圏青年ユニオンのことを知り、訪ねたところ、親身になって一緒にたたかってくれるということを知った。青年たちにはたたかった体験がないので、一人ひとりの苦しみに共感し、連帯感をもって接することが大切です」といいます。

 「三年前までは青年中心の労組は少なかったけれど、今では青年ユニオンなど、たたかう青年のネットワークが全国で四十を超えました。職場だけでは孤立している青年も、地域の青年のネットワークのなかでたたかう場を見つけて団結して交渉している。働くものの権利を知って、仲間がいることを実感したとき、青年は前向きなエネルギーを発揮します」

 姫井さんの実感です。(おわり)(菅野 尚夫)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp