2007年3月30日(金)「しんぶん赤旗」
働けど… ―若者たちは(5)
大学院卒業して
安全無視、劣悪職場に憤り
「人間らしい働きかたってなんだろう?」。首都圏の化学工業会社で正社員として製造現場で働く小早川邦雄さん(25)=仮名=は今、このことを真剣に考えています。
国立大学の大学院を昨年三月に卒業。化学工業系の会社を中心に就職活動をして、その中で入社までこぎつけた会社。大学院をでて正社員になる。はたから見れば申し分のない人生のスタート。ところが働く現場は違っていました。
職場は医薬品の原料を製造しています。研究開発に携わりたかったのですが、希望と違った部署。そのうえ、劣悪な職場環境に憤りを感じています。
仕事は、法定検査、原料検査、製品検査をしています。ヘルメットに目にはゴーグル。鼻から口に防じんマスクと完全装備で検査作業に当たります。
工場に入ると有機溶剤のにおいで息苦しいことも。「発がん性のあるトルエンも使います。『きつい、汚い、危険』の『3K』職場だ」という小早川さん。
「労働者の健康を考えない企業は、社会に対しても違法を平気でするんですね」といいます。会社は、環境基準を超えた工場廃液を河川に垂れ流したために行政から立ち入り調査と改善命令を出されたこともありました。
「コンプライアンス(法令順守)をうたっている会社が法令を守らない。あきれてしまいます」という小早川さん。入社前に描いていた「働く」意義とはあまりにも乖離(かいり)していることに悩みます。
二十四時間操業で昼(午前八時―午後四時半)、夜(午後四時―午前零時半)、深夜勤(午前零時―翌朝午前八時半)の交代勤務。事故が起きて動けなくなった労働者が次の日勤が来るまで発見されなかったこともありました。「休みの日はただひたすら寝ているだけの生活です」
入社当初は開発部に配属されたものの、今年から「現場を知っておけ」と製造現場に配転になりました。百キロから二百キロある原料が入ったドラム缶の搬送など肉体労働が主です。
化学薬品を扱うだけに安全対策は最善を尽くす必要がありますが、「工場は基本班二人制夜勤。一人が休んだ場合次の勤務者が来るまで一人で作業を行わなければなりません。事故が起きたら発見が遅れ安全上よくない。会社は安全性よりコストのことしか考えていない」と小早川さんはいいます。
月収は約二十万円。住宅手当、通勤手当、自己啓発手当と手当はあるものの基本給が安いのです。「手取りは十六万円。六畳一間の会社の寮に入っていますから『貧乏』というわけではないです。でも寮を出て五、六万円するアパートに住むとなると貯金もできないワーキングプアでしょうね」
昼勤を四日で一日休み、夜勤四日で一日休み、深夜勤で二日休みの勤務体制。「土、日曜日が休みではないために仲間と出会う機会はありません。昼働き、夜は眠るという普通の生活をしたいです」(つづく)

