2007年3月28日(水)「しんぶん赤旗」
自治体が多重債務救済
広報で対応策、相談窓口開設も
共産党の要求、低予算で実現
サラ金などの高金利のために多重債務に陥った人が、今なお二百数十万人いるといわれます。市民に身近な自治体が対策に取り組む例が少しずつ増えています。市広報で特集を組んだり、専門の相談窓口を設けたり。日本共産党の議員の質問で実現したケースも少なくありません。(安川崇)
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名古屋のベッドタウンとして発展した愛知県岩倉市。昨年七月、市広報誌「広報いわくら」が「多重債務に陥ったらすぐ相談!」という三ページの特集記事を掲載しました。
「多重債務者になってもほとんどのケースは解決可能です」――。こう訴える特集記事は、貸金業者のほとんどが利息制限法の上限を超える「灰色金利」で営業していることや、過払い金返還請求などの解決法を詳しく説明。被害者の会や弁護士会などの連絡先も載せています。
特集記事の掲載は、二〇〇六年三月、市議会で日本共産党の木村冬樹議員が要求しました。
「自分が多重債務となっていることに気付いていない人もいる。『多重債務とは何か』から始まり、相談窓口や具体的な対応策がわかる記事を広報に載せるべきだ」
質問を受け、市は多重債務問題に詳しい地元紙記者に執筆を依頼。掲載が実現しました。
木村市議は「多重債務に陥った人は新聞などを購読していないことが多い。相談先や解決策があることを知らず、一人で悩み悲惨な結末を迎えてしまう。全戸に無償配布される広報なら詳しく伝えられる」と話します。
税滞納を解決
債務整理が市税滞納を解決したケースもあります。
同市議は〇五年、市内のパート勤務の女性の債務整理に協力。女性は過払い金約四百三十万円を取り戻し、滞納していた住民税と国民健康保険税、計約百五十万円を市に一括で納めました。
女性は「借金が恥ずかしくて、家族にも相談しなかった。違法な金利を払わされていることを知っていれば、気軽に相談できたと思う」と話します。
市は〇七年度から、従来の市民相談に加えてクレサラ専門の相談窓口を月に二回、開くことを決めました。これも共産党議員団の要求でした。予算は年十二万円です。
木村市議は「低予算。しかも市財政にも貢献できる。相談回数や内容をさらに充実させていきたい」と話します。
多重債務者救済の現場では、自治体が果たす役割の重要性が繰り返し指摘されています。
全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会の本多良男事務局長によると、全国の弁護士会や被害者の会などで救済されているのは、多く見積もっても年間四十万人程度。
「決定的に相談窓口が足りない。住民にとって最も身近にある自治体が相談窓口を設置すれば、大きな力になる」
金融庁も「二百万人以上に(相談が)行きわたっていない。自治体など関係機関をあげて充実に取り組む必要」があると指摘しています。(政府の多重債務者対策本部有識者会議への提出資料)
弁護士ら法律家とも連携しながら解決を図っている滋賀県野洲市や、鹿児島県奄美市などの先進例も報告されています。
連携を図って
「(国民健康保険料や住民税の徴収窓口など)お金の滞納が出る部署と(相談を受ける窓口が)連携を図って、多重債務者をキャッチする仕組みはできないか」
今月初め、兵庫県尼崎市の日本共産党の松村ヤス子議員は市議会定例会でこう質問しました。
住民税などの滞納者の中には、多重債務を抱える人が「確実に相当数いる」(本多氏)とみられます。しかし徴収窓口では「滞納者」としか扱われないことが、解決を遅らせる原因になります。
市消費生活センター所長は「(多重債務者向けに)一人ぼっちではありませんよ、といった内容のパンフレットをつくり、税金や市営住宅の家賃などの窓口にそれぞれ用意する」と答弁。実現することになりました。
松村市議は「多額の予算を組まなくても、かなりのことができる。市職員の意識を高める研修だけでも、大きな効果が出る。借金で自ら命を絶つような悲劇を少しでもなくすよう、今後も取り組む」と話しています。