2007年3月28日(水)「しんぶん赤旗」

「アラブ和平案」復活

米国務長官 無視から一転

関係各国で協議へ


 【カイロ=松本眞志】二十四日から中東を歴訪していたライス米国務長官は二十七日、エルサレムで記者会見し、オルメルト・イスラエル首相とアッバス・パレスチナ自治政府議長が今後、二週間に一度の割合で会談を重ねることで合意したと語りました。


 同氏はまた、二十八―二十九日のアラブ連盟首脳会議(リヤド)を念頭におき、サウジアラビアが提案した「アラブ和平案」の協議のためにイスラエルと接触を図るよう呼びかけました。

 四度目となる今回のライス長官の中東訪問では、「アラブ和平案」の復活が改めて注目されています。同案は、イスラエルが占領地から全面撤退すれば、アラブ各国が包括的に和平を約束するというもの。二〇〇二年のアラブ連盟首脳会議で採択されました。

 同案に対しイスラエルは当初、拒否の姿勢をみせ、米国も無視する態度を示してきました。

 ブッシュ政権は〇三年、アラブ和平案に代わり、〇五年末までにパレスチナ国家樹立をめざす中東和平四者協議(米国、ロシア、欧州連合、国連)が策定した和平案(ロードマップ)を提示。しかし、イスラエルが占領地での入植地建設を推進し、イスラエル、パレスチナ双方が武力衝突を続けたため、入り口で行き詰まり、同案は事実上破たんしました。

 〇六年三月のパレスチナでのイスラム武装抵抗組織ハマス政権の成立により、イスラエルの態度は硬化。一方、イスラエル側のパレスチナに対する武力侵攻、一方的国境画定計画と、これに基づく分離壁の建設、入植地の拡大は、パレスチナ住民のイスラエルへの不信を募らせました。現在、イスラエル・パレスチナ和平の取り組みは中断状態にあります。

 昨年二回の中東訪問でライス氏は、レバノン戦争で停戦を遅らせ、シリア・イランを敵視して中東穏健諸国の取り込みを図るなど、和平妨害の役割を果たしてきました。

 しかし今回の訪問でライス氏は「アラブ和平案」に着目し、その復活を強調。パレスチナ国家樹立をイスラエル・パレスチナ両者の「共通の課題」と訴えて、これまでとは異なる外交活動を展開しています。

 オルメルト首相も、パレスチナ人の帰還問題や入植地問題で同案の修正を求めたものの、「アラブ和平案には和平交渉再開の基盤となる積極面がある」と評価。対応に変化が生まれています。

 パレスチナでは住民の72%がアラブ和平案支持だと報じられます(国営サウジ通信二十六日)。

 統一政府樹立後もイスラエル承認を拒否してきたハマスのメシャル政治局長は、二十五日に突然サウジアラビアを訪問し、「一九六七年(第三次中東戦争)以前の境界に基づくパレスチナ国家の樹立を認める」と発言。「アラブ和平案」を重視するリヤドでのアラブ連盟首脳会議の意向を尊重するとの姿勢を示しました(サウジアラビア紙アルワタン二十六日付)。


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