2007年3月22日(木)「しんぶん赤旗」

ゲートキーパー法案

令状なし警察立ち入りも

38業種に「密告義務」

与党は月内成立の構え


 与党が月内にも成立を狙う「ゲートキーパー(門番)法案」(通称)。弁護士に対する依頼者「密告義務」は見送りましたが、なお保険会社など広範な業種に密告義務を課しています。さらに、警察が司法書士を含む事業者に対して、裁判所の捜査令状なしで立ち入り、帳簿類を「検査」できるという条項が含まれます。司法書士らから「令状主義を崩壊させ、警察監視国家を招く」と批判が出ています。


 「宝くじが当たって今まで買えなかった宝石を買った場合、『若いのに怪しい』と思われれば通報され、口座を凍結されるおそれがある」

 今年一月、国会内で日本弁護士連合会が開いた勉強会で、海渡雄一弁護士がこう指摘しました。

 この「犯罪による収益の移転防止に関する法律案」は、「犯罪組織によるマネーロンダリング(資金洗浄)防止のため」、弁護士や司法書士、保険会社やクレジット会社、貴金属業者など四十三業種を「特定事業者」に指定。(1)顧客の本人確認(2)取り引き記録の保存(七年間)(3)「犯罪の疑いのある取り引き」を、関係省庁に通報すること――を義務付けます。省庁はこの情報を国家公安委員会と警察庁に通知することになっています。

 事業者は通報したことを顧客に「漏らしてはならない」(法案)とされます。「密告法案」と呼ばれるゆえんです。

 事業者と顧客との信頼関係を壊しかねない内容に、日弁連は「弁護士業務の根幹を揺るがす」と猛反発しました。これを受けて警察庁は二月、弁護士など五業種について密告義務から除外しました。日弁連は「高く評価する」と歓迎しました。

 しかし、法による義務付けを三つとも免れたのは弁護士のみ。司法書士など四業種は(1)と(2)の義務を負います。これらのほか、貴金属業者など三十八業種が密告義務を負うことはかわりません。

 もう一つの問題点は、警察による「令状無しの実質上の強制捜査」です。

 法案は、事業者がこの法律に違反していると判断すれば、国家公安委員会が「都道府県警察に必要な調査を行うことを指示することができる」と定めています。

 そして警察は捜査員に「営業所に立ち入らせ、帳簿書類などを検査させ、業務に関し関係人に質問させることができる」としています。

 質問に答えなかったり書類の検査を拒んだりすると、最高で「懲役一年、罰金三百万円」が科されます。司法書士など四業種もこの「検査」の対象となります。

 全国青年司法書士協議会は二〇〇六年四月、「国民の情報が警察権力によって収集・管理される監視社会が到来する」との反対声明を出しました。

 法案は施行日を「〇七年四月一日」と設定。与党は今週内にも衆院を通過させ、来週中に参院で成立させる構えです。


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