2007年3月21日(水)「しんぶん赤旗」

米陸軍士官が不足

イラク・アフガン再派遣嫌い退役


 【ワシントン=山崎伸治】米軍のイラク、アフガニスタン駐留の長期化で、その主力である陸軍の兵員不足が続くなか、現場の指揮官の不足も深刻になっています。

 イラクへの再派遣を嫌って退役者が増えていることが背景にあり、陸軍は「昇進」を急がせるなど、ベトナム戦争時と同様の措置をとっているものの、補うには不十分です。

 現場で部隊の直接の指揮にあたるのは大尉、少佐、中佐クラス。ここが深刻な不足に直面しています。米議会の政府監査院(GAO)が一月に公表した米軍兵士に関する報告によると、二〇〇七会計年度(〇七年九月末まで)では少佐の定数は83%しかうまっていません。

 その理由の一つに、士官学校卒業者の任官が目標を下回っていることがあります。同報告によると、〇五年度は九百五十人の目標に対し実績は九百十二人、〇六年度は九百人の目標に対し八百四十六人にとどまっています。大学で士官候補者を募る予備役将校訓練部隊(ROTC)も、三万一千人の目標に対し、〇五年度は二万五千百人しか集められませんでした。

 十二日付USAトゥデー紙は、「士官学校卒業者は民間企業にとっても魅力的だ」という関係者の声を紹介。任官しなくても就職先があると指摘しています。

 さらに、士官の自発的な退役が増えており、その背景にイラク派兵の影響が指摘されています。

 陸軍のロシェル副参謀長は二月十五日の下院軍事委員会人事小委員会での証言で、大尉以下の士官の退役率が〇六年度は7・9%で、目標としている5%を上回ったことを紹介。六―十年のキャリアを持つ士官の退役が最も多く、イラクやアフガニスタンに「何度も派兵されること」が影響していると指摘しました。

 これに関連して、十三日付ボストン・グローブ紙は、現在イラクに派遣されている匿名の士官の電子メールを紹介。その士官は「私の大隊だけでも、同じ年度の十人の士官のうち一人が陸軍に残る。あとは私も含めて退役する」としており、実際の退役率はさらに上回っている可能性もあります。

 加えて陸軍は「対テロ戦争」に対応した編成の刷新をすすめ、部隊の小規模化を推進。それだけ士官の数も従来より必要となります。

 軍は奨学金制度の優遇措置を導入するなど、士官の確保を図る一方、これまでよりも短期で「昇進」させる措置をとっています。前出のGAOの報告によると、中尉から大尉への昇進は従来の四十二カ月から三十八カ月に短縮されています。

 早期の昇進には経験不足を指摘する専門家の意見もあります。一般兵員の入隊基準を引き下げていることとあわせ、そこまでしなければ兵力を維持できないのが陸軍の現状です。イラク増派がどれほど非現実的なことかがうかがえます。



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