2007年3月15日(木)「しんぶん赤旗」

「慰安婦」問題

強制性否定は悪質

米法学者が安倍発言批判


 【ワシントン=鎌塚由美】米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(十三日付)は、「従軍慰安婦」問題での安倍首相の発言を批判する米法学者の投稿を掲載しました。両教授は、六年前の米国内での慰安婦裁判の判決を引用し、安倍首相の主張は成り立たないと指摘しています。


 投稿は、ハーバード大学法学部のジェニー・スック教授と、ニューヨーク大学法学部の教授で米外交問題評議会の研究員でもあるノア・フェルドマン教授の連名によるもの。

 「従軍慰安婦」問題で「強制性を裏付ける証拠はなかった」という安倍首相の発言は、「アジアの古傷を再び開いた」もので、日本軍の関与と強制を認めた河野官房長官(当時)談話から「実質的には、後退」したものであると述べました。

 両教授は、安倍首相はいまだに「実際の拉致は日本軍ではなく民間業者が行ったとの立場を維持している」とし、「言語道断」だと述べています。

 その理由として、六年前に米連邦地裁で争われた「慰安婦」問題の裁判で、被害者の女性から訴えられた日本政府が「商行為として行ったことを否定した」事実を挙げました。同地裁は女性たちが政府の計画にそって拉致されたとし、日本政府の行為は「商行為」というより「戦争犯罪に近い」と結論を下したと両教授は指摘。政府が「商業的事業」をした場合に訴えられるケース以外には訴追できないとする外国主権免責法の規定によって日本政府の責任が問われなかったことを紹介しました。

 その上で、「日本兵による拉致は商行為ではないとの法廷の結論から利益を得ながら、日本政府が今、日本兵は誰も拉致していないと述べるのは、特に悪質だ」と強調しています。

 両氏は、「政治と訴訟は同じものでない」とし、「政治と法廷論争が違うからこそ、日本政府は道義的にも責任を果たすべきだ」と指摘。「ナチの強制労働の被害者と違い、『慰安婦』は補償を受けていない」とのべています。

 両教授はまた、日本の改憲問題に言及し、「日本がなりたいと思う国になろうと決意するのであれば、日本は何よりも自らの過去と向き合わなくてはならない」と指摘。

 日本が過去六十年以上にわたり憲法で平和主義を義務付け、軍事活動を「自衛」のみに制限してきたとし、日本政府が「安全保障においてより積極的な役割を果たす」として憲法改定を検討するという「重大な決定をする」なら、「なぜそういう(平和主義という)条項があったのか、開かれた議論をしなくてはならない」と述べました。



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