2007年3月13日(火)「しんぶん赤旗」

日本共産党躍進の
流れを首都・東京から

明治公園での 志位委員長の訴えから


 十日に東京・明治公園で行われた日本共産党演説会で、志位和夫委員長は国政と都政の焦点、外国訪問で実感した党の値打ちについて縦横に語り、目前に迫ったいっせい地方選挙で、東京都知事選挙での吉田万三さんの勝利、区市町村議選での党候補の全員勝利をかちとり、参議院選挙での勝利につながる躍進の流れを、首都・東京からわき起こそうとよびかけました。次に都政・都知事選について訴えた部分(大要)を紹介します。


都知事選――石原知事と「オール与党」の“3つの大罪”に審判を

写真

(写真)訴える志位和夫委員長=10日

 つぎに都政についてお話しします。都知事選挙では何が問われるでしょうか。この選挙は、何よりもまず石原都政の八年間への審判を下す選挙であります。

 私は、石原知事が東京都でこの八年間すすめた政治には、“三つの大罪”があると告発したいのであります。

「逆立ち」都政を極端にひどくした罪

 第一の大罪は、都民の福祉とくらしを切り捨て、巨大開発へ税金を注ぎ込むという「逆立ち」都政を極端なまでにひどくした罪であります。

 石原知事が初めて知事に就任した一九九九年の都政の姿はどのようなものだったでしょう。思い出していただきたい。

 当時はまだ革新都政の時代に都民のみなさんが築いた福祉の制度が生きて働き、都民のくらしを守っていました。寝たきりのお年寄りのための老人福祉手当は月額五万五千円と、東京は全国で最も手厚い制度でありました。革新都政が全国に先駆けて実施した六十五歳から六十九歳までの老人医療費助成(マル福)がおこなわれており、「六十五歳になるのが待ち遠しい」という人もいました。シルバーパスは原則無料でお年寄りが気軽に外出するうえでの力強い味方でありました。特別養護老人ホームの利用者サービスを充実する都独自の補助は、東京は全国でも最も手厚いもので、職員配置の充実におおいに役立っていました。私立保育園への都独自の運営費補助も、東京は全国でも最も手厚いもので経験豊かなベテラン保育士を確保し、保育の質を高めるうえで大切な役割を果たしていました。

 都民のみなさんが革新都政時代にみんなで築いたこれらのくらしを守る制度は、一九七九年に革新都政が壊され、鈴木自民党都政にかわり、青島都政になったもとでも、都民のみなさんの力によって守り抜かれていました。

 石原知事の八年間は、それを乱暴きわまるやり方で破壊しました。知事就任直後、「何が贅沢(ぜいたく)かといえば、まず福祉」といって切り捨てを始め、老人福祉手当を廃止し、老人医療費助成を廃止(今年六月末で六十九歳も廃止)し、シルバーパスを全面有料化し、特別養護老人ホームへの都加算補助を廃止し、私立保育園への運営費補助を大幅削減しました。さらには年間六十四万円の盲導犬のエサ代の補助、年間四十万円の身体障害者の方々の団体の海水浴の補助まで廃止しました。

 福祉・保健関係費は、一九九九年度に比べ年間四百五十億円も減額され(二〇〇五年度決算)、歳出にたいする民生費の割合は、全国四十七都道府県のうち東京は第二位にあったものが、第二十二位まで転落しました。

 福祉を削って注ぎ込んだのは巨大開発でした。大規模開発を中心に年間一兆円、バブル前の水準の二倍ものお金を大型公共事業を中心とする投資につぎ込みました。「税金を一円も使わない」といって始めた臨海開発について、石原知事は、「引くも地獄、進むも地獄」という有名な“地獄発言”をおこない、破たんを認めながら、税金を流し続け、八年間に投入された税金と都民の財産は二兆円を超えます。本来、都が負担する必要のない高速道路の建設に、新たに都民の税金を一千億円も投入しようとしています。さらに、オリンピック招致を口実に八兆五千億円もの巨大開発を計画し、それをすすめるために毎年一千億円ものため込みをおこなっています。

 福祉を切り捨て、巨大開発を推進する「逆立ち」都政を極端にまでひどくした――私はここにこそ、石原都政八年間の最大の罪があり、ただすべき都政の最大のゆがみがあるということを訴えたいと思うのであります。(拍手)

憲法と民主主義を破壊する暴政をすすめた罪

 第二の大罪は、憲法と民主主義を破壊する暴政をすすめた罪です。

 石原知事は「私は、あの憲法を認めない」と公の場で言い放ち、憲法改悪の旗振りをおこなってきました。

 私は、昨年、教育基本法改悪に反対する国会論戦をすすめるうえで、東京の教育についての実情をうかがいましたが、「東京では学校の門をくぐると憲法はなくなるのか」との強い怒りをおぼえました。

 東京では、卒業式や入学式で「日の丸・君が代」の常軌を逸した強制がおこなわれ、「君が代」斉唱にさいして従わない教職員、起立しないという立場をとった教職員を、毎年のように処分しています。起立しない生徒が多かった学校には、教師が結果責任をとらされ事実上の処分がなされています。これが、子どもたちの心をどれだけ傷つけ、教育への信頼をどれだけ失墜させているかは、はかりしれないものがあります。

 昨年九月、東京地裁は、この強制を、違憲、違法と断罪する画期的判決をくだしました(拍手)。教育基本法が改悪されても、憲法は厳然として国民の権利を守っています。東京での野蛮な行為が憲法違反であることに、いささかの変わりはありません(拍手)。憲法違反の無法な強制はやめよ、憲法を守れない人物に知事の資格なしと、私は強くいいたいのであります。(大きな拍手、「そうだ」「よし」の声)

都政私物化の罪――福祉切り捨てとむすびつき怒り広がる

 第三の大罪は、都政私物化の罪であります。

 石原知事が税金を使っておこなった海外出張は、夫人同伴で一日五十万円を超えるホテル代を払い、飛行機は側近も含めてファーストクラスに乗る。現地ではリムジン、ヘリコプター、クルーザーを乗り回す。十五回で二億六千万円を使った、豪華に「超」がつく海外旅行でありました。

 四男を重用しての都政私物化も大問題になっています。知事は「余人をもって代え難い」と弁明しましたけれども、自分の息子を「余人をもって代え難い」という親(笑い)の心理は、計り知れません。(笑い、拍手)

 さらに、知事と側近による公費を使った飲み食いは、百五十五回もおこなわれ、千六百万円以上の税金が使われ、料亭で都政の重大問題が決められ、そのなかには一回五十万円、六十万円もかけた飲み食いもあります。

 これらはすべて日本共産党都議団が膨大な情報開示資料を分析して明らかにしたものでしたが、こういう行為にたいして都民のみなさんの怒りがどうしてここまで広がったのか。それは「福祉については、盲導犬のエサ代補助のような、わずかな額のものまで削りに削りながら、ガラパゴス旅行とは許せない」――福祉切り捨てへの深い怒りが、都政私物化への怒りがここまで広がった土台にあるのではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)

自民・民主・公明の「オール与党」は“3つの大罪”の共犯者

 みなさん、ここで重要なのは、石原都政のこれらの“三つの大罪”は、石原知事一人でやったことではないということです。都議会の自民、民主、公明の「オール与党」が支え、知事を賛美・激励し、チェック機能を放棄する中でおこなわれたということであります。

 「介護手当は寝たきりを助長する」といって、廃止の音頭をとったのは民主党です。破たんした臨海開発を「首都・東京の再生につながる」と後押ししたのは自民党でした。「日の丸・君が代」の強制のために「通達を出せ」「教員を処分せよ」とけしかけたのは、自民党と民主党の議員たちです。そして、豪華海外旅行は、自民、民主、公明の議員がそろっておこない、こちらも一人平均百四十八万円という豪華ぶりでした。自民、民主、公明の「オール与党」が石原都政の“三つの大罪”の共犯者であったということを、私はきびしく指摘しなければなりません。(大きな拍手)

 選挙になって、みずからが共犯者だったことを隠して、“にわか野党”になろうという党があります。

 民主党は、この二月の議会で、にわかに石原知事との「対決」姿勢をとり、石原知事を「公私の境目を失い、周囲に太鼓持ちを置く裸の王様」とまで批判しました。しかし、知事に、「ならば今までなぜ都が提案した提案に民主党はすべて賛成してきたのか」「公党としての品格が問われる」などと反論されて、それに反論できません。あの石原知事に「品格」を問われて(笑い)、反論できない政党とは何者か(爆笑)。「太鼓持ち」という批判も、石原知事のありとあらゆる行動を賛美してきた自分にはね返る批判ではありませんか(「そうだ」の声、拍手)。民主党は、知事側近の豪華海外旅行についても「追及」しましたが、知事から、「民主党の議員も南米のイグアスの滝にいっているではないか」と反論されてしまいました。(笑いと「そうだ」の声、拍手)

 自民党、公明党とともに民主党もまた石原都政の八年間の暴政の共犯者であって、そのことへの反省ぬきに選挙目当てに「野党ポーズ」をとることは、都民をあざむく卑きょう・卑劣な行為といわなければなりません。(「そうだ」の声、拍手)

 都民の審判を受けるべきは石原知事だけではありません。「オール与党」への審判が必要です(拍手)。この選挙を、石原都政と、それを支えた自民、民主、公明の「オール与党」の“三つの大罪”に厳しい審判を下す選挙にしていこうではありませんか。(大きな拍手)

「逆立ち」都政をただせるのは日本共産党と吉田万三さん

 みなさん。石原知事と「オール与党」によってすすめられた福祉切り捨て、巨大開発推進という「逆立ち」都政をただし、「都民が主人公」の都政への転換をはかる立場、政策、資格を持つのは、政党では日本共産党、候補者では無党派の方がたと日本共産党が共同で推薦している吉田万三さんだけであります。(拍手)

 日本共産党は、石原都政がすすめた“三つの大罪”のどの問題でも、それを正面からただし、ついに「石原タブー」を打ち破るところまで、この暴政を追い詰めてきました。都政における唯一の野党が日本共産党であります。(拍手)

 日本共産党都議団は、毎年の予算議会で予算組み替え案を提出し、都財政の数%の予算を組み替えれば、福祉、教育、中小企業支援、環境など、都民のみなさんの願いにこたえることができることを、具体的な対案の形で示してきました。

 石原知事も「(民主党が)予算を今度は否決(反対)するようだ。それなら対案として、共産党のように組み替え動議をだすべきだと思う」と何回も都議会でいったそうであります。日本共産党が具体的対案を示す責任ある政党であるということは、わが党をもっとも恐れ、憎んでいる現知事も、認めるところであります。(拍手、「そうだ」の声)

 そしてみなさん。候補者では、無党派の方がたと日本共産党が共同して推薦している吉田万三さんだけが、都政を大本からかえるたしかな立場にたっています。そして、吉田万三さんは、それをやり遂げる力量を持った候補者だということを裏付けるたしかな実績をもっています。

 吉田さんが区長をつとめた足立区では、かつて自民、公明両党がホテルの誘致計画をすすめ、「ホテルをつくるなどというのは、区がやる仕事ではない」と強い批判がふき上がりました。一九九六年に足立区長になった吉田さんは、議会での激しい妨害にきぜんと立ち向かい、公約したホテル計画の撤回をやりぬきました。わずか二年八カ月の間に、区の税金の使い方を、大型事業中心から「くらし第一」にみごとに切り替えたのが吉田万三さんであります。(拍手、「そうだ」の声)

 「逆立ち」自治体をただした、ためされずみの実績を持つ吉田万三さんこそ、「逆立ち」都政を、「都民が主人公」の都政に切り替えることができる唯一の候補者だということを、私は心から訴えたいのであります。(大きな拍手)

浅野氏――宮城での「逆立ち」県政は石原都政とうり二つ

 この点で、前宮城県知事の浅野史郎氏はどうでしょうか。

 私は、四年前に浅野さんが三期目の知事をつとめている時期に、宮城の県議選の応援にいったことを思い出します。そのときの演説の記録を読み返してみましたら、当時の記憶がよみがえってきました。私は、そのときに浅野県政の資料をつぶさに分析して、「この知事さんは、政党の推薦を受けてはいないが、やっている政治の中身をみると自民党よりも自民党型だ」と診断し、批判しました。

 なにしろ、その時点の数字ですが、宮城県は、東北六県で、一人あたりの住民税は一位。一番税金をとっているのに、東北六県で、福祉費は最低、教育費も最低、衛生費も最低でした。宮城県では、浅野さんの前の自民党の知事も、国保証のとりあげについては、「これだけは絶対にやらない」といって一枚もとりあげはやられていませんでした。ところが浅野知事は平然ととりあげをすすめていました。

 その一方で、巨大開発のほうは、船のこない石巻市の港に、何千億円ものお金をいれて、巨大なふ頭と防波堤をつくっていました。私は典型的な「逆立ち」県政の見本だと批判したことを思い出します。

 私のこの診断と批判は正しかったと思います。私は、いくら港をつくったって、船は来ませんよと、四年前に言いましたけれども、その“予言”はそのとおりになりました。

 浅野氏の三期十二年の宮城県知事としての「実績」をみるならば、冷酷な福祉切り捨てと大型開発優先の「逆立ち」県政を、自民、公明、民主、社民の「オール与党」に支えられておこなったという点では、石原知事とまったく同じ流れのなかにいる人物であるということはまぎれもない事実であります。(拍手)

 石原東京都政と浅野宮城県政を並べてみますと、やっていることは驚くほど同じであります(「そうだ」の声、拍手)。福祉切り捨てをとってみても、介護保険導入を口実に介護手当など経済給付的独自施策をのきなみ打ち切ったこと、乳幼児・障害者・母子家庭の医療費助成に一部負担を導入したこと、特別養護老人ホームなど老人福祉施設への都・県の独自補助を削減したこと、私立保育園への都・県の独自助成を削減したこと、都立高校や県立高校の統廃合を推進してきたことなど、絵に描いたようにうり二つであります。この二つの対照表をつくったら、どちらが東京でどちらが宮城かが、ほとんど区別がつかないというありさまであります。(拍手)

 浅野さんは立候補表明の際、東京都の介護保険三施設(老人保健施設、特別養護老人ホーム、療養型病床群)の人口あたりの定員率が、全国四十七都道府県で最下位だということをさかんに批判しました。しかし残念ながら、浅野さんがやってきた宮城県政も全国四十位(笑い)なのであります。四十位の県政が四十七位の都政を笑うことができるでしょうか。どちらも二人の知事が「施設から在宅へ」を口実に、介護施設への補助を削減するなどして、施設整備を遅らせてきた結果であります。

 「障害者自立支援法」――障害が重い人ほど負担が重くなるという、稀代(きだい)の悪法にたいしても、石原氏、浅野氏ともに、これを賛美する態度で共通しています。

 ですから浅野さんが石原都政にたいして、「一期目はよかった」、「輝かしい業績をあげてきた」、「基本的にはだいたい継承すべきもの」といっているのは、たんなる外交辞令ではないのです。それは、まさに二人が「逆立ち」仲間であるということを、当事者が認めた発言にほかなりません。(「そうだ」の声、拍手)

 石原知事の暴政があまりにひどいだけに、浅野さんを「よりまし」と期待する人がいるかもしれません。しかし自治体とは何よりも「住民福祉のための機関」であり、その自治体の原点を、乱暴に、また冷酷にふみにじるという点では、石原さん、浅野さんのどちらかが「よりまし」とは、けっしていえないのであります。(拍手)

 宮城県で「逆立ち」県政をすすめてきた人物が東京にきて、「逆立ち」都政をおこなってきた「オール与党」の一部にかつがれて、どうして都政改革ができるか。私は絶対にできないと言わなければなりません。(「その通り」の声、拍手)

 マスメディアなどは、「石原・浅野対決」などと書きますが、それはまったくの偽りです。この選挙の真実の姿は、二つに分裂した「オール与党」陣営と、日本共産党と無党派が共同して推薦する吉田万三さんとの対決です。これが真実の姿です。この対決の構図を広く都民に伝え、無党派と日本共産党の共同の輪を広げに広げ、吉田万三さんで都政に「福祉の心」をとりもどし、「都民が主人公」の都政をとりもどそうではありませんか。(大きな拍手、「よし」の声)


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