2007年3月10日(土)「しんぶん赤旗」

ドイツ 少子化対策

保育所の3倍化計画

政府、出生率1・36に危機感


 低い出生率が深刻な問題となり対策が急がれているなか、ドイツのフォンデアライエン家庭相はこのほど、保育所の大幅増設計画を明らかにしました。政府は、保育所増設によって、若いカップルが仕事と育児を両立できる環境を整えたいとしています。(ベルリン=中村美弥子 写真も)


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(写真)ベルリンの街を歩く親子連れ

 ドイツでは慢性的な保育所不足が少子化の一因となっていると指摘されてきました。現在、三歳児以下の子どもを預かる保育所は、全国で二十五万カ所あります。フォンデアライエン家庭相は先月、この数を二〇一三年までに七十五万カ所へと三倍化する計画を発表しました。

財政支援に加え

 将来の人口減少が懸念され、出生率の引き上げが焦眉(しょうび)の課題となっているドイツ。〇四年の合計特殊出生率(一人の女性が一生のうちに産む子どもの平均数)は1・36でした。欧州連合(EU)加盟二十七カ国平均の1・51(〇五年)を下回っています。

 少子化対策としての保育所増設計画は、今年一月に施行された「親手当」に続くものです。「親手当」は、子どもの出産後、両親のどちらかが育児休暇を取得すれば、休暇前の収入の67%を最長十四カ月保障するというもの。父親の育児参加を促す目的もあります。

 ドイツの野党や専門家からは、財政支援だけでは対策としては不十分だとの声が上がっていました。女性が仕事と育児を両立できる環境整備に力を入れている国では、出生率が向上しているからです。保育所の増設は、こうした要求に応えるものとして歓迎されています。

女性の役割議論

 しかし、今回の政府の計画に対し、独南部のカトリックの司教が、女性が出産直後に職場復帰を果たさなければならなくなるのは、女性から育児の機会を奪うことになり、「女性を『産む機械』におとしめるものだ」と批判。この発言は、出産・育児をめぐる女性の役割へと議論を発展させました。

 同司教の発言は、子どもは家庭で母親に育てられるべきだとする価値観に基づいたものです。シュミット前家庭相は、「信じ難い侮辱だ」と強い調子で非難しました。

 フォンデアライエン家庭相は「子どもを無理やり保育所に預ける計画ではない」と述べ、司教の批判を退けました。メルケル首相も、政府の計画は子育てをする両親に「選択の自由」を提供するものだと指摘、「選択肢があってこその選択の自由だ」と強調しました。


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