2007年3月8日(木)「しんぶん赤旗」

主張

証券優遇税制

「逆立ち」の金持ち減税やめよ


 来年度の税制改正案に盛り込まれている証券優遇税制の延長にたいして「庶民へ大増税して大金持ちへの減税を継続するのは、『逆立ち税制』だ」と批判の声が広がっています。

 証券優遇税制は、株式の売却益や配当に課税する所得税を大幅に減税するものです。上場されている株式の売却益への課税は二〇〇二年までは本則で26%でしたが、〇三年から本則を20%に引き下げたうえ、〇三年から〇七年までの五年間の特例として10%に半減されています。配当についても〇三年度から〇七年度までは20%が10%に優遇されています。この優遇税制をさらに一年間延長しようというのです。

7人に200億円の減税

 日本共産党の佐々木憲昭衆院議員の調査によると、証券優遇税制による減税総額は約二千六百五十二億円(〇五年分、申告所得分)で、このうち申告所得の合計が五千万円を超える階層(一万二千二百九十八人)の減税は、約千七百三十億円(一人あたり約千四百七万円)でした。

 しかも、申告所得の合計が百億円を超える最上階層(七人)の減税は約二百億円に達し、一人当たり約二十八億六千万円という異常な大金持ち減税となっています。

 二〇〇六年は、株式取引の拡大や株価の上昇によって、株式譲渡益や配当収入が大幅に増加しており、一握りの富裕層の減税効果は激増することが予想されています。

 証券優遇税制は、五年前に「株式市場の活性化」や「不良債権の正常化」を理由に導入されました。しかし、当時とは情勢は大きく変わりました。そのため政府税制調査会でさえ昨年十二月の答申では、「株式市場が活性化し、不良債権問題も正常化」したので、「期限到来とともに廃止」すべきだと明確に述べていました。

 ところが、日本経団連が「来年度税制改正要望」で証券優遇税制の延長を強く求めたために、自民・公明の与党税調の「税制改正大綱」で一年延長を決め、安倍内閣が予算案に盛り込んだという経過があります。

 日本の証券優遇税制の金持ち優遇ぶりは、諸外国とくらべても、きわだっています。

 株式の譲渡益課税は、アメリカ(国15%、地方7―10・5%)、イギリス(10―40%)、ドイツ(15・8―44・3%、短期保有分)、フランス(27%)となっており、いずれも日本の優遇税率10%を上回っています。

 もともと株式売却益の税率は、「利子、給与、他の譲渡益等に対する税負担水準とのバランスなどを考慮し設定された」(政府税調)ものです。ところが、個人投資家を株取引に引き入れ、「貯蓄から投資へ」の流れを加速するために、預貯金利子の源泉徴収税率は20%に据え置いて、証券税制だけを優遇する特例措置をとってきました。その面からみても、ゆがんだ税制となっています。

優遇税制廃止して福祉へ

 日本共産党の志位和夫委員長は、衆院予算委員会の質問(二月十三日)のなかで安倍首相にたいし、「大企業向けを中心とした企業減税の拡大、大資産家向けの証券優遇税制の温存で、合計一兆七千億円もの大減税の大盤振る舞いをやろうとしている。これを中止すれば、そのごく一部をふりむけただけでも、母子家庭や子どものいる貧困な家庭への支援を増やすことができる」と、強く要求しました。

 大金持ち減税の証券優遇税制はただちに中止し、「逆立ち税制」を転換するよう求めます。



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