2007年3月3日(土)「しんぶん赤旗」

日本の貧困を告発したOECD報告とは?


 〈問い〉 OECD(経済協力開発機構)報告について国会論戦がおこなわれましたが、OECDと、その報告について、少しくわしく教えてください。(山梨・一読者)

 〈答え〉 OECD(経済協力開発機構)は、第2次世界大戦後、ヨーロッパ復興支援のマーシャルプランを受け入れる機関として16カ国の参加でつくられたOEECが前身です。1961年に創立され、日本は1964年に加盟、現在の加盟国は30カ国で、本部はパリにあります。OECD自身が特色としてあげているのは、(1)市場経済を原則とする先進諸国の集まり(2)政治、軍事を除く経済社会のあらゆる分野の問題を研究・分析し、政策提言を行っている国際機関(3)多様な問題に関して政策協調を図るための協議の場を提供―の三つです。

 OECDは、主要加盟国にたいして、ほぼ年一回の調査報告をだしています。このうち、昨年7月発表された「対日経済審査報告2006年版」では初めて、日本の格差・貧困問題に1章を割きました。

 同報告は、日本は80年代半ばから2000年の間に絶対的貧困が拡大した唯一の加盟国と指摘しています。

 相対的貧困―中央値レベルの半分を下回る所得として定義される―の率でも日本は、OECD諸国中、メキシコ、米国、トルコ、アイルランドについで5番目に高いレベルへときわだって上昇した、しかも、相対的貧困状態にある人々の所得は低いとし、次のようにのべています。

 「とりわけ、仕事の有無にかかわらず、一人親の半数以上が相対的貧困状態にあり、それが児童貧困の高さの要因となっている。OECD平均の12・2%にくらべ、日本のそれは14・3%である。とりわけ、民間部門が負担する教育費の割合が高いため、貧困が世代をこえて引き継がれる危険がある」

 格差拡大の要因としては、高齢化のほか、非正規労働者の拡大という「労働市場の二極化」をあげ、「低賃金に加えて、労働者は不安定雇用に直面しており、社会的セーフティー・ネットによる保護も少ない。さらに彼らは企業内の職業訓練を受ける機会が少なく、自分自身の人的資本の発達や日本の成長の可能性にとってマイナスとなっている」とものべています。

 格差を是正するうえでの課税や所得移転の役割が他のOECD諸国と比べてきわめて低いとし、「格差と貧困が拡大する傾向を逆転させるには、労働市場の二極化を緩和させ、一人親をはじめとする低所得世帯に社会支出を振り向ける改革がいっそう必要である」と提言しています。

 報告全文(英語版)はOECDのホームページに。日本語翻訳版は今夏発行予定。(喜)

 〔2007・3・3(土)〕


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