2007年2月26日(月)「しんぶん赤旗」

07年 政治考

記者座談会 安倍内閣5カ月

失政のツケでドタバタ


 「美しい国づくり」を看板にした安倍内閣が誕生して二十六日で五カ月になります。支持率低下、官邸と与党の不協和音など、早くもフラフラです。担当記者で、安倍内閣をどうみるか、話し合いました。


  安倍内閣の支持率が下げ止まらない。六割から七割台の高支持率で発足したのが、いまや四割を切り、不支持が支持を上回る逆転現象がおきている。宮崎県知事選では与党候補が惨敗、北九州市長選でも敗れ、優勢だった愛知県知事選で接戦に持ち込まれるなど、「選挙の顔」として期待された存在価値も薄らいでいる。危機感から与党内が引き締まるかと思えば、逆にバラバラだ。安倍内閣に嫌気さえ感じている雰囲気だ。

「見抜かれた」

  麻生派の幹部は「右からも左からも力がない内閣だと見抜かれている」と語っていた。

  官邸の軽さを象徴するのが自民党の中川秀直幹事長の「忠誠心」発言だ。閣議での首相入室の際、閣僚が起立しないなどと暴露し、絶対的忠誠心を求めた。これには共産党の市田忠義書記局長が「幹事長がそういうことをいうのは異例のことで、それほど求心力を失っている」と語っていたが、本当にそのとおりだ。

  現象面では、たしかに「お友達内閣」とやゆされた弱点が出てきたということだが、より本質的には安倍内閣が進めている政治がいかに国民からかけ離れたものか、国民が実感した結果が反映しているのではないか。これだけきびしい生活状況なのに、庶民には大増税、大企業・大資産家には一・七兆円もの大減税だもの。現象面と本質と両面をみることが重要だ。

  「小泉改革」以来の改革路線の行き詰まりだね。国民世論が求めている貧困と格差への対策でも、なんら有効策を打ち出せないでいる。「成長底上げ戦略会議」をたちあげたものの、格差打開の処方せんがないから、思いつきだけ。与党からも「同じようなものをいくつもつくるな」とクレームがつく始末だ。

「格差」認めず

  安倍・自公政権の「成長戦略」路線は、「格差」の存在も認めないばかりか、大企業が成長すればいずれは恩恵が国民にもまわるという牢固(ろうこ)とした発想だ。首相が“成長か格差かの論争は一九六〇年代初頭に決着ずみだ”と言い出したのには驚いた。

  参院自民党の青木幹雄議員会長は代表質問で「政府は格差という言葉を避けているようだが、格差が存在するのは紛れもない事実だ」とのべた。夏の参院選に向け、それだけ深刻だということだ。

 C しかし、「格差」をもたらした規制緩和万能路線には無反省だ。自らの失政が招いたツケに悩まされてのドタバタともいえる。

なぜもつ フラフラ内閣

  首相が金看板に掲げる「教育改革」もドタバタだ。肝いりの教育再生会議が出した教育委員会「改革」案に、政府の規制改革会議が異論を唱えた。山谷えり子首相補佐官が文部科学省所管の中央教育審議会を批判すると、伊吹文明文科相が“教育再生会議より中教審がオープンだ”と反論した。根底には、首相の「教育改革」路線を強引に推し進めてきたツケがある。

  久間章生防衛相のイラク開戦批判や麻生太郎外相がイラク占領を「稚拙」とした発言もある。これもアメリカべったり路線のツケといえるから、三つのツケがもたらしたドタバタだね。

  もう一つ感じているのが、官邸と自民党との関係の変化だ。小泉時代は、「トップダウン政治」で国会運営も官邸主導だったが、安倍政権になって様変わりだ。柳沢発言問題で国会が不正常に陥ったときも、塩崎恭久官房長官が野党各党に審議復帰の要請にまわったが、実態は二階俊博国対委員長に「官邸は何をやっているのか」と叱責(しっせき)されて行動を起こしたといわれている。

  中川幹事長も閣僚の“問題発言”で、塩崎官房長官を呼んで注意した。政府首脳が党幹部に叱責されるなんて、異例のことだ。教育再生会議が第一次報告をまとめたときには、政府によるブリーフと同じ時刻に与党の検討会議が設定されていたのだが、政府側から説明にもこないで報告書を投げ込んだだけだったという。出席者は「与党をなめているのか」と激怒したといわれている。

  不思議なのは、ここまでフラフラしている安倍内閣が「失言」の柳沢伯夫厚労相や「事務所費」などの疑惑大臣を抱えながらも、まだもっているという事実だ。

  一番大きいのは野党第一党の民主党が安倍内閣を追及しきれていないという問題がある。格差問題にしても、「労働の二極化が原因」などと追及するが、正規・非正規の「二極化」を招いたのは同党が賛成し推進してきた労働法制の改悪だ。派遣労働の自由化や裁量労働制の拡大などに賛成した“実績”にはほおかむりだからね。

  共産党の志位和夫委員長が、貧困と格差の生々しい実態を示して、働くルールの破壊と、逆立ち税制の問題という「二つの根源」にメスをいれよと主張したのとは大違いだった。共産党、与党、民主党という格差問題での三つの流れが明確になった。

  与党内では、内閣の「三月改造」もとりざたされている。組閣から半年もたたずに改造すれば首相の統率力がますます問われるし、改造しなければ疑惑閣僚・失言閣僚を抱えてジリ貧だ。行うも地獄、行わないも地獄というジレンマに直面することになるね。


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