2007年2月25日(日)「しんぶん赤旗」

戦時統制権

米、5年後 韓国に返還

朝鮮戦争で移譲

両国防相が合意


 【ワシントン=山崎伸治】ゲーツ米国防長官と韓国の金章洙国防相は二十三日、米国防総省で会談し、朝鮮戦争(一九五〇―五三年)以来、在韓米軍が握ってきた韓国軍の戦時作戦統制権を韓国側に移譲し、米韓連合司令部を解体する期日を二〇一二年四月十七日とすることで合意しました。

 会談後に米側が発表した共同声明によると、両国は今年七月に戦時作戦統制権移譲に関する「ロードマップ」に合意した後、ただちにそれを実施し、二〇一二年三月の演習で終わらせるとしています。

 さらに在韓米軍部隊・施設の移転と米第八軍移転計画などの全面実施の促進に向け、両国が緊密に協力することを再確認。在韓米軍地位協定(SOFA)にもとづいて、在韓米軍施設の返還を迅速に完了させる意思を表明しました。

 作戦統制権の返還時期をめぐっては、韓国側が二〇一二年を、米国側が〇九年を主張していました。

米韓国防相会談共同声明の要旨

 二十三日に発表された米韓国防相会談の共同声明の要旨は次の通りです。

 (米韓)同盟のあらゆる懸案について未来志向的にアプローチすることを含め、同盟変革に関する根本的な理解を再確認した。

 北朝鮮の通常兵器、核・ミサイルの脅威に対応する(米韓)連合準備体制の重要性を論議し、米韓同盟は北朝鮮によるいかなる挑戦にも対応する能力があると評価した。

 二〇一二年四月十七日に米韓連合軍司令部を解体し、これと同時に韓国軍と米軍の関係を新たな主導・支援の指揮関係に転換する。

 作戦統制権移譲のロードマップ履行を〇七年七月から開始し、十二年三月の検証演習を経て完結させる。

 在韓米軍の施設・部隊の再編、竜山基地の移転計画を促進するために緊密に協力する。

 貴重な土地を韓国国民に返還することを含め、在韓米軍再編作業は両国にとって重要な進展である。

 両国は在韓米軍地位協定(SOFA)に基づき、在韓米軍の施設の返還を速やかに完了させる。


「主権国家の核心」民主化も背景に

 米韓国防相会談での合意により、五十七年間にわたり在韓米軍が保有してきた戦時作戦統制権が二〇一二年に韓国軍に返還されることが決まりました。米韓連合軍司令部も解体され、朝鮮戦争(一九五〇年―五三年)から続いてきた米軍が韓国軍を統制する体制がなくなることになります。

 韓国では、在韓米軍が保有する作戦統制権は米軍への「従属」の象徴とみられてきました。

 韓国は朝鮮戦争中の五〇年に作戦指揮権を国連軍司令官に移譲。停戦後に作戦統制権と改称され、七八年の米韓連合軍司令部の発足で連合軍司令官(在韓米軍司令官が兼任)に移されました。

 八七年に国民の運動で軍事独裁が終わり民主化が始まると、当時の与党・民主正義党の盧泰愚氏は、作戦統制権の返還を同年の大統領選挙の公約に掲げて当選。九四年に平時の統制権の返還が実現し、戦時の統制権の返還が残されていました。

 〇三年のイラク戦争を契機に、韓国内で北朝鮮に対する米軍の先制攻撃を懸念する声が増大。米国の戦争に韓国が巻き込まれる恐れも、統制権返還を加速させました。

 盧武鉉政権は、作戦統制権について「自主国防の核心であり、自主国防は、主権国家の核心だ」(大統領秘書室)と説明しています。

 韓国は、北朝鮮に対する国防力の確保をめざす中期計画(一一年まで)が完了した二〇一二年の統制権返還を提案。一方、世界規模での米軍の機動軍化を進める米国は、在韓米軍の一万二千五百人の規模削減、竜山基地移転が完了する〇九年を提示していました。

 韓国内では、統制権の返還で韓米同盟が弱まるとして保守派が強く反発しており、昨年八月には、歴代の国防相、軍高官らが連名で反対を表明したこともあります。

 返還時期の決定について韓国大統領府は「韓米同盟が質的に飛躍する出発点としてその意義は非常に大きい」と評価しています。(中村圭吾)


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