2007年2月22日(木)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい

貧困と格差 だれが広げた

国会この10年 各党の態度(下)

大企業は「成長」なのになぜ家計は?


 貧困と格差の広がりへの批判に対して、安倍自公政権は、「成長戦略」によって「底上げ」を図るとしています。しかし、この間、大企業を「成長」させるための減税やリストラに熱中してきた結果、家計は低迷するばかりです。大企業応援では、民主党の姿勢も問われています。


大企業減税庶民は増税

財界が求める法人税率下げ

民主、政府と競い合い

 一九九八年の法人税率引き下げをはじめ、自民党政治は大企業と大金持ちに対する減税を相次いで実施してきました。

 民主党の前身会派である民友連と自由党は、九八年の法人税率引き上げに“もっと引き下げるべきだ”との立場で反対。翌九九年の法人税率引き下げには、自由党(当時)は自民党と連立して、引き下げを提案する側でした。当時、民主党は法案自体には反対したものの、法人税率引き下げが、「(民主党が)主張してきた内容をなぞったもの」とこれを評価しました。

 グループ企業の納税額を小さくすることができる連結納税制度(二〇〇二年度導入)をはじめ、政府はその後も連続して大企業減税を実施してきました。

 IT(情報技術)投資促進減税(〇三年度導入)や研究開発減税(同)などは、法人所得が上位を占める一部大企業にばく大な減税の恩恵を与えてきました。

 また政府は、株式の配当や譲渡益にかかる税額の軽減措置や相続税や贈与税の減税措置など、大資産家に対する優遇策を相次いで実施してきました。

 民主党は、「〇三年度税制改正についての考え方」で、連結納税制度導入に伴う連結付加税の導入に反対し、企業に対するいっそうの減税を主張。研究開発減税の拡充も自民、公明両党と競い合って求めてきました。

 これらの大企業・大資産家に対する減税は、企業献金をテコに財界が熱心に政府・与党や民主党に求めていたものでした。

 安倍首相は、今年秋以降に「税制の抜本的・一体的改革」議論を本格化させる構えです。ここで決められようとしているのは、所得税や消費税などの庶民増税とともに、いっそうの大企業減税です。

 政府は大企業と大金持ちに減税の恩恵を与える一方で、依然低迷する家計には連続負担増を押しつけてきました。

 小泉内閣発足後の六年だけみても、この間、自民・公明政権が庶民に押しつけた増税は、総額約五兆二千億円。定率減税の縮減・廃止をはじめ、公的年金等控除の縮小や老年者控除廃止などの年金課税強化、配偶者特別控除の廃止や発泡酒・ワイン増税など増税が庶民の家計に押しつけられました。

 今年さらに、所得税・住民税の定率減税全廃や昨年から住民税課税世帯になった高齢者に対するいっそうの増税を押しつけようとしています。

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リストラ人減らし

「経済活性化」口実に

自・公・民そろって応援

 企業の「好調さ」が家計にいっこうに波及しません。その大きな原因となっているのは、大企業がこの間に進めてきた賃金抑制とリストラ・人減らしでした。

 自民・公明政権は、企業による大規模なリストラ・人減らしを規制するどころか、「経済活性化」などを口実にこれを減税で支援してきました。

 政府は一九九九年八月、「産業活力再生特別措置法」を制定。企業のリストラ計画が一定の基準を満たせば、会社設立や企業の合併・分割にかかわる税金を減税するなどの恩恵を与えました。企業が正社員を減らせば減らすほど減税で応援するというものです。

 もともと二〇〇三年三月末までの時限立法であったものを、小泉内閣がさらにこれを五年間延長。民主党はこの延長・拡充に賛成しました。

 政府はこの間、財界の要望を受けて、企業・業界が自由に再編・合併できる法整備を急いできました。二〇〇〇年には、会社分割を合法化し、企業のリストラを応援する商法「改正」を提案。民主党も賛成するなかで成立しました。

 政府による不良債権処理の加速や金融業界の再編・淘汰(とうた)などが、中小零細業者の経営と暮らしを圧迫し、倒産や経営難を理由にした自殺が急増しました。

 民主党は、金融システム「改革」法(九八年)に賛成し、大銀行支援の金融規制緩和を推進。金融機関への公的資金投入に道を開いた「金融再生」法の実現など、大銀行応援を与党と競ってきました。



「企業の好調  家計にも」と言うが

給与も消費支出も減

 政府の景気判断を示す月例経済報告は二〇〇五年八月から「企業部門の好調さが家計部門へ波及(している)」との見方をとり続けています。

 このことが大企業応援の口実とされています。しかし、大企業が空前の利益をあげても家計には波及していません。家計を犠牲にすることによる空前のもうけだからです。

 トヨタ自動車は、〇六年四月―〇七年三月期の通期で営業利益二兆二千億円を見込むなど、一部大企業は、バブル期を超える空前の利益を更新し続けています。

 その要因は、政府の支援策に支えられた「リストラ効果」と、アメリカや中国など海外経済の「好調さ」によるものです。

 国税庁の現金給与実態統計調査によると、サラリーマンの平均給与(一年間を通じて勤務したもの)は、一九九八年以来八年連続で減少してきました。

 総務省の家計調査によると、昨年の総世帯の消費支出は前年比実質3・5%の減少となりました。所得が伸び悩んだことが大きな要因となっています。

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大企業・大金持ち減税1.7兆円

穴埋めは定率減税廃止

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 減価償却制度「見直し」と証券優遇税制の一年延長による減税規模が、総額で約一兆七千億円にのぼることが日本共産党の調べで明らかになりました。定率減税廃止による所得税・住民税の増税規模約一兆七千億円に相当します。

 財務省と総務省によれば、減価償却制度「見直し」による減税見込み額は、国税、地方税あわせて約七千三百億円。日本共産党の推計では、現在の経済情勢が続くと仮定すれば、証券優遇税制の延長による減税規模は、約一兆円に達する見込みです。

 減価償却制度「見直し」と証券優遇税制の一年延長は、安倍自公内閣によって二〇〇七年度税制「改正」に盛り込まれました。減価償却制度の「見直し」は、巨額の設備投資をする大企業に減税の恩恵をもたらし、証券優遇税制の延長は、株取引でもうけをあげる高額所得者を引き続き減税で優遇することになります。

 「(減価)償却期間の短縮、残存価値の見直し等減価償却制度の抜本的見直しを行う」「株式譲渡益課税の時限的なゼロ税率適用…を行う」―。民主党は、〇二年十二月にまとめた「〇三年度税制改正についての考え方」でこう提起しています。自公政権とともに両優遇策の実現を求めてきたのが民主党です。


表

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