2007年2月16日(金)「しんぶん赤旗」
大戦時のナチス協力で報告書
首相“教科書に盛る”
ベルギー
【ベルリン=中村美弥子】ベルギー政府が第二次世界大戦中、ナチス・ドイツに協力し、ユダヤ人の強制連行に積極的に加担していたことを明らかにする報告書が十三日、上院に提出されました。独占領下のベルギーの反ユダヤ人政策についての詳細が初めて明らかになりました。
報告書は、戦争・現代・社会資料編さん研究所(CEGES)が政府の委託を受け、三年かけてまとめたもの。千百ページを超える報告書は、『従順なベルギー』と題されています。
それによると、ヒトラー政権の誕生後の一九三三年、ベルギーはドイツから逃れてきたユダヤ人難民の受け入れを拒否。第二次大戦初期の一九四〇年五月末にドイツに降伏したベルギー政府は同年十―十一月、ナチス政権の要求に応じてユダヤ人の登録を開始しました。
ベルギーの亡命政権が英国でつくられた後もナチスへの協力を承認。四二年にはアントワープの警察が千二百四十三人のユダヤ人を逮捕し、ドイツ軍に引き渡しました。
大戦開始時、ベルギー国内には推定約五万六千人のユダヤ人がおり、そのうち約二万五千人がポーランドのアウシュビッツ強制収容所に送られ、生き残ったのはわずか千二百人程度とされます。
しかし、政府は四二年当時、ベルギーからポーランドに連行されたユダヤ人が虐殺の対象だったことは知らなかったとしています。
議会で報告したCEGESのファンドールスラール所長は、「支配層の中に外国人排斥と反ユダヤ主義の思想があったため、それがユダヤ人迫害への協力をいとわない心理をつくった」と指摘しました。
報告書を受け、フェルホフスタット首相は、この事実を歴史教科書に盛り込むべきだとの考えを示しました。同首相は二〇〇二年、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)でのベルギーの役割についてユダヤ人に謝罪しています。