2007年2月4日(日)「しんぶん赤旗」
イスラエル軍 クラスター爆弾使用
協定違反の疑い 米国務省が議会に報告
【ワシントン=山崎伸治】米国務省は一月二十九日、イスラエル軍が昨年七―八月、レバノン南部で民間人に対し米国製のクラスター(集束)爆弾を使ったことについて、米国との協定に違反した可能性があるとして、議会に報告書を提出しました。同省のマコーマック報道官が同日の定例会見で明らかにしました。
マコーマック氏はイスラエルとの間に、同爆弾の使用について協定があったと認め、「予備的調査でその協定に違反することがあったかもしれないと判断」し、法律に基づいて議会に報告書を提出したと述べました。ただ最終的な決定ではなく、「他国政府と交渉した合意は機密とされており、公にすることはできない」と詳細は明らかにしませんでした。
米政府は「武器輸出管理法」の規定で、輸出相手国が武器使用に関する協定に違反したと認められた場合、議会に報告することになっています。国務省は昨年八月以来、この問題を調査していました。議会は報告について審議します。
イスラエル軍はレバノン侵攻でクラスター爆弾を使用。昨年九月の国連の調査で、三百五十九カ所に投下され、十万発以上の不発子爆弾が民間人居住地域にばらまかれたと指摘されています。
昨年八月の停戦発効以後も不発弾による死者、負傷者が続出。イスラエルは国際法に従って使用したと主張しています。
二十八日付の米紙ニューヨーク・タイムズによると、米政府はイスラエルに対する制裁措置を検討しています。同国に対するクラスター爆弾の禁輸措置は、レーガン政権時の一九八二年から六年間、実施されたことがあります。
“誤りだった” イスラエル副首相が言明
【カイロ=松本眞志】イスラエルのペレス副首相は一月三十日、カタールの首都ドーハでの同国衛星テレビ・アルジャジーラの対談番組で、レバノン戦争(二〇〇六年七―八月)でのイスラエル軍によるクラスター爆弾の使用は「誤り」だったと認めました。
ペレス氏はクラスター爆弾の使用について、「参謀総長でさえ知らなかった」と当時の軍の最高幹部を擁護しましたが、「残念ながら、われわれは誤りを犯した」と語りました。
一方でペレス氏は、最大の誤りが戦争そのものであり、それを挑発したのはイスラム教シーア派組織ヒズボラだと主張。軍事作戦を局地紛争からレバノン全域に広げ、一般市民と経済・生活基盤に多大な損害を与えたイスラエル側の責任については口を閉ざしました。
イスラエル軍のクラスター爆弾の使用については、その非人道・残虐性を国連や国際社会が非難。イスラエル軍内部でも実戦部隊の指揮官が同兵器の使用を認め、告発する声があがっていました。
国連の調査によると、戦闘があった三十四日間のうち、レバノン南部を中心に停戦直前の三日間に百万発のクラスター子爆弾が集中して使用されました。これまでの除去作業ではわずか一万九千発の子爆弾しか処理されていません。
終結以来、不発弾の爆発事故で七人が死亡し、百四十人が負傷したとされます。このなかには一月二十九日に負傷した二人のベルギー軍兵士も含まれています。
クラスター爆弾 一つの親爆弾の中に破片などを仕込んだ子爆弾が数百個収納され、投下されると空中で爆発し、広い範囲に子爆弾が散る、殺傷・破壊力が高い非人道的な兵器。不発弾となった子爆弾も、戦闘と無関係な市民を殺傷しています。