2007年2月3日(土)「しんぶん赤旗」

米軍のイラク増派

「事態改善に疑問」

世界は米一国で動かせない

英・国際戦略研が指摘


 【ロンドン=岡崎衆史】英国の国際戦略研究所(IISS)は一月三十一日、軍事年鑑「ミリタリー・バランス 2007」を公表しました。IISSのチップマン所長は、ロンドンでの公表会見で、国際政治における超大国米国の影響力の限界を指摘するとともに、イラクへの米軍増派について、軍事力による事態改善に疑問を提示しました。


 チップマン所長は、世界情勢全般についてのまとめで、米国は国際問題で課題(アジェンダ)を設定する力を持つが、「世界規模で課題を効果的に実施するには力が弱すぎる」と分析。米国以外の国家、非国家については、代案を形成する力はないとしながらも、「米国の課題に抵抗する十分な力をもつ」として、米国一国では世界を動かせなくなっている今日の世界を一極でも多極でもない「無極世界」と形容しました。

 同所長は、バグダッドへの米軍増派について、「対武装勢力鎮圧作戦の、より複雑な側面を見逃す」と指摘。継続的な治安回復につなげるために、「行政能力の構築」や「法の支配の確立」が必要だと述べました。

 またIISSのクローニン研究部長は、イラクでは内戦状態が広がっており「非常に危険な状況だ」とし、軍増派が成功する確率は40%にすぎないと述べました。

 これに関連し、「年鑑」は、イラク戦争を支持した有志連合諸国が軍撤退や縮小の動きを進めていることを紹介。英国とオーストラリアについても、治安権限のイラク側への移譲を進めているとして、増派した米国との対照を浮き彫りにしています。

 「年鑑」はまた、アフガニスタンでの北大西洋条約機構(NATO)軍による空爆について、「民間人被害を引き起こし『人心』を獲得するという課題をより困難にしている」と警告しました。

 チップマン所長は、アフリカのソマリアがアフガン、イラクに続くイスラム過激派による「聖戦」の前線とみなされている状況に言及。エチオピア軍とソマリア暫定政府に追われたイスラム勢力「イスラム法廷会議」が武力抵抗を継続すると予想し、ソマリア内で米軍が軍事行動すれば、「(抵抗を)激化させるだろう」と指摘しました。


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