2007年2月1日(木)「しんぶん赤旗」

米軍増派 イラク泥沼

戦闘やまず

先見の明ない戦略 地元メディア批判


 ブッシュ米政権はイラクの武装勢力封じ込めのためとして、2万2千人の米軍増派を決定。2月1日までに増派部隊のイラク到着が完了する予定です。しかしイラク国内では米軍にたいする武装勢力の攻撃と、一般市民を巻き込む爆弾テロも増加し、戦闘が拡大の一途をたどっています。


 米軍とイラク軍による合同軍事作戦は、これまで主としてイスラム教スンニ派を標的にしてきました。ところが一月十日の米軍増派発表後、首都バグダッドやスンニ派武装集団が活動するアンバル州以外でも戦闘が展開されるようになっています。

 二十九日のシーア派の宗教行事「アシュラ」を前後して、シーア派聖都のカルバラやナジャフで米・イラク軍とシーア派中心の武装勢力との間で激しい戦闘が起きました。この戦闘でイラク治安軍を従えた米軍は戦車、装甲車に加え、戦闘機や攻撃ヘリを投入しました。シーア派主体の武装集団二百五十人以上を殺害したとされます。戦闘の拡大を如実に示すことになりました。

 この戦闘でも米軍ヘリコプターが撃墜され、米軍側にも犠牲がでており、武装集団の鎮圧は米軍側にとっても容易でない状況です。ナジャフの戦闘ではイランと関係のある武装集団の参加も指摘されています。

シーア派も

 一方で、新イラク政策発表後も、シーア派、スンニ派双方からとみられる爆弾テロが連日のように発生、多くの市民がまきこまれて死傷しており、事態は混迷を深める一方です。

 二十二日の首都バグダッドでの自動車爆弾テロでは八十八人が死亡し、二十九日には三人の子どもと女性四人を含む十人が迫撃砲弾のさく裂で死亡しました。最近でも市内の女子高校構内で迫撃砲弾が撃ち込まれ、女子高校生数人が亡くなっています。

 米軍の侵略以来のイラク人の死者については昨年十一月、イラク保健省が十万ー十五万人との推定を発表していますが、その後も、一日数十人の割で増加。米兵の死者は一月三十日現在で三千八十一人、負傷者は二万二千人以上になっています。

 ブッシュ氏は、これまでのイラクでの治安確保の失敗の理由について、「初期の作戦で、米・イラク軍が多くの地域でテロリストや武装集団を一掃した後、別の標的を追って移動している間に、これらの殺人者が元の地域に戻ってきた」と弁明。「武装集団を一掃した地域を確保するのに必要な軍勢を増強する必要がある」と今回の増派を正当化しましたが、尽きることのない兵力増強のジレンマに陥る危険を示しています。

失敗と敗北

 イラク紙アッザマン十四日付は、新イラク政策について、「先見の明のない戦略であり、イラクの主要な問題(治安問題)を解決することはできない」と批判。「イラクが必要としているのは、米国が今まで無視してきた政治的解決だ」と主張しています。

 イラクのジャーナリストで政治評論家のワリド・ゾバイディ氏は本紙の電話インタビューで、ブッシュ政権の対応について次のように指摘しています。

 「ブッシュ米政権はイラク侵攻前に、世界の『治安と安定』はイラク占領によって実現できると豪語したが、四年後の新イラク政策はバグダッドの『治安と安定』を中心に語っている。治安問題の対象が『世界』から『バグダッド』に後退したことは、米軍がイラクの一地域さえ安定化できなかったことを示すもので、ブッシュ政権のイラクでの失敗と敗北を表明したものだ」

 同氏はまた、ブッシュ政権が新イラク政策で、イランとその影響下にあるイラクのシーア派武装集団との対決姿勢を強めたことについて言及し、「イランの強い支持を受けているシーア派主導の現イラク政権との矛盾を引き起こす」と語っています。(カイロ=松本眞志)

全面的な内戦へ米研究所が警告

 「イラクは急速に全面的な内戦に突入しつつある」。米シンクタンク・ブルッキングズ研究所中東政策サバン・センターは一月二十九日、イラク情勢について報告書を発表し、イラクの混迷で、今後も大量の死者と避難民をだすことになると警告しました。

 国際英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューン同日付によると、同報告書は、旧ソ連のアフガニスタン軍事介入、コンゴ内戦、レバノン、ソマリア紛争、ユーゴスラビア内戦など、歴史的な大規模な紛争との比較でイラク情勢を検証しています。

 これらの内戦でみられた六つの指標―(1)大量の難民流出(2)新たなテロリスト集団発生の温床づくり(3)近隣諸国住民の過激化(4)分離主義の広がり(5)地域経済の損害(6)近隣諸国の介入―がイラク情勢でもすでにみられると述べています。


イラク人避難民370万人

生活苦から売春・児童労働も

国連機関が推定

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は一月八日、イラク情勢について「アピール」を発表し、同月現在、イラク人の避難民が国内の百七十万人、国外に逃れた二百万人の計三百七十万人に達し、イラク人の八人に一人が家を失っていると推定しています。

 国内避難民の多くは二〇〇三年の米英軍によるイラク戦争開始以前から避難生活を余儀なくされた人々ですが、五十万人は昨年二月に中部サマラで起きたイスラム教シーア派聖廟(せいびょう)爆破以来、新たに避難民になった人々だといいます。

 イラク国内にはまた、外国人の避難民もいます。パレスチナ人一万五千人、トルコ人一万六千百十人、イラン人一万一千九百六十人、シリア人八百七十人、スーダン人百四十二人です。

 国外にいるイラク人避難民の数は、シリアとヨルダンに、それぞれ五十万―七十万人、レバノンに二万―四万人、エジプトに非公式な数で二万―八万人などと推定されます。

 UNHCRは国内避難民は月に四万人―五万人の割で増加しており、今年末までには二百三十万人―二百七十万人に達すると予測しています。国外避難民についても、シリアで最大百万人、レバノンで同五万人になるとみています。

 UNHCRの「アピール」はイラク人避難民の「多くは貧しく、低所得地域で生活し、女性や少女が生活のために売春などを余儀なくされたり、児童が労働に就かざるを得なくなっているとの報告もある」と指摘。シリアにいる避難民の子どもの三割が学校に行けない状況にあると述べています。


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