2007年2月1日(木)「しんぶん赤旗」

原爆症訴訟

認定行政三たび断罪

名古屋地裁 原告2人が勝訴


 被爆者援護法に基づく原爆症の認定申請を国が却下したのは違法だとして、愛知県の被爆者四人が処分の取り消しなどを求めた集団訴訟の判決が三十一日、名古屋地裁(中村直文裁判長)でありました。中村裁判長は、国の機械的な認定行政を批判し、原告の二人について原爆症と認定しました。昨年五月の大阪、八月の広島両地裁判決に続き、国の被爆者認定行政が司法の場で三度続けて断罪されたことになります。

 最大の争点となった原爆症認定基準(原因確率論)の妥当性について中村裁判長は、「形式的に適用し判断したのでは、因果関係の判断が実態を反映せず、誤った結果を招来する危険性がある」と批判しました。

 厚労省による認定は、爆心地からの距離で被爆線量を推定し、年齢、性別などを組み合わせ、放射線の影響により病気が発症する確率によって原爆症であるかどうかを機械的に判断する「原因確率」を採用しています。

 判決は、こうした認定基準を批判した上で、原告の被爆時の状況や症状などを検討し、二人の疾病について原爆による起因性を認めました。残る二人については、高齢者に多く見られる症状で専門家の判断も分かれるなどの理由で、請求を棄却しました。原告一人あたり三百万円の損害賠償は、四人全員の請求を退けました。

 原告弁護団は記者会見で、「二人が原爆症と認められなかったのは残念」としながらも、「機械的な認定行政を厳しく断罪したものであり、積極的な内容を持つ」と述べました。認定されなかった二人の原告は、控訴する方針です。

 原爆症認定をめぐる同様の訴訟は、名古屋地裁も含め全国二高裁十七地裁で、二百二十九人が係争中。大阪、広島両地裁で原告側が全員勝訴しましたが、国側が控訴しました。


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