2007年1月30日(火)「しんぶん赤旗」

テロリスト容疑 米がシリア移送

拷問を受けたカナダ人

政府が謝罪 11億円補償


 【ワシントン=鎌塚由美】カナダのハーパー首相は二十六日、「テロリスト容疑者」として米国で拘束され移送先のシリアで拷問されたシリア生まれのカナダ人マヘル・アラルさんに謝罪し、約一千五十万カナダドル(約十一億円)の補償を行うと発表しました。

 アラルさんはオタワでコンピューター関係の企業を経営していた二〇〇二年九月、休暇先からニューヨークの空港を経由してカナダに帰国する途中、米当局に拘束され、弁護士の立ち会いがないまま、ヨルダンを経由してシリアに送られました。

 アラルさんは、シリアで一年近く地下室の独房に収容され、精神的・肉体的な拷問を受けたといいます。

 「対テロ戦争」の名でブッシュ政権が、世界各地で「テロリスト」容疑者を拘束し、グアンタナモ米軍基地や第三国へ移送し拷問していることは、国際的に厳しい批判を受けています。アラルさんは、数少ない名乗りを上げた被害者の一人。カナダでは、妻のモニアさんが、アラルさんの解放に奔走しました。

 カナダ政府は〇四年に調査委員会を設置し、調査を開始。〇六年九月にまとめた報告書で、アラルさんはそもそも過激主義者と無関係だと述べ、カナダ警察当局が米側に不正確な情報を提供した「可能性が高い」と指摘しました。さらに、シリアからアラルさんを引き取る過程で、政府当局者が秘密情報をメディアに漏らし、アラルさんの名誉を傷つけたとも指摘。アラルさんに補償を行うように提言しました。

 ハーパー首相は二十六日の記者会見で、アラルさんと家族に謝罪。裁判費用も含めて、補償を行うと述べました。アラルさんは同日記者会見し、政府の謝罪と補償が「私にとってすべてを意味する」とよろこぶと同時に、拷問およびその後の試練の傷は深く、「私の人生をとり戻せる方法があればと思う」とも述べました。

 一方、米政府はアラルさんを引き続き「テロリスト要注意人物」リストに載せたままです。カナダ政府は、同リストからアラルさんの名をはずすように求めていますが、米政府は拒否しています。


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