2007年1月30日(火)「しんぶん赤旗」
米最賃引き上げ法案 上院で攻防
共和党 企業減税抱き合わせ主張
労働運動から反発
【ワシントン=山崎伸治】今月開会した米新議会での焦点の一つとなっている最低賃金引き上げ法案が、十日に下院を通過した後、上院での攻防に移っています。日本でも厚労相諮問機関の部会が、最低賃金引き上げを盛り込んだ法案要綱を答申。両国でホットな課題になっています。
米下院を通過した法案は、最低賃金を今後二年間で、現在の一時間五・一五ドル(約六百二十五円)から七・二五ドル(約八百八十円)に引き上げるというもの。実施されれば、全米で五百六十万人の労働者が恩恵に浴すると見込まれています。
ところが共和党は同法案に対し、企業の負担が増えるとして、企業に対する減税措置などと抱き合わせにするよう主張しています。ブッシュ大統領は昨年末、初めて最低賃金引き上げを支持すると表明しましたが、その際、抱き合わせ措置も求めていました。
労働運動は企業減税を抱き合わせにすることに反対。そうした措置を盛り込まない「クリーンな法案」を採択するよう求めてきました。
下院を通過し、上院に送られた引き上げ法案の審議は二十二日に始まりました。民主党は共和党が企業減税などを盛り込む修正案の提案を阻止するため、すぐに討論終結動議を提案。しかしこの動議は採択に必要な六十票を獲得するに至りませんでした。
それを受け、リード民主党上院院内総務は同日、中小企業に対する減税措置を盛り込む妥協的な修正案を提出しました。
これに対して共和党のアラード上院議員が二十四日、最低賃金を決定する権限を各州に与える独自の修正案を提出。この案は連邦政府から最低賃金を定める権限を奪うことになり、事実上、最低賃金制度の廃止を狙った提案です。同制度に対する共和党の考え方を示したものともいえます。
採決の結果、賛成二八(全員共和党)、反対六九で否決されたものの、労働運動はこの二十八議員を最低賃金制度廃止を提案したとして、批判するキャンペーンに乗り出しました。
上院での採決は今週中に予定されていますが、下院と内容の異なる法案が採択されることはほぼ確定。そうなれば両院協議会で調整し、再度両院で議決が必要なため、最低賃金の引き上げが決まるには時間がかかりそうです。