2007年1月29日(月)「しんぶん赤旗」

名古屋地下鉄工事でゼネコン

ばれにくい談合

「本命」落札へ「95%ルール」


 名古屋市発注の地下鉄工事をめぐる談合事件で、独禁法違反(不当な取引制限)容疑で公正取引委員会の強制調査を受けた大林組などゼネコン各社が、「95%ルール」という新手の手法で“談合隠し”をしていたことが二十八日、関係者の話で分かりました。


 受注予定会社以外は落札率(予定価格に対する落札額の割合)が95%以上になる金額で入札し、「本命」の受注予定会社は95%を切る金額で落札するというもの。

 通常の談合は、あらかじめ公表されている予定価格に対し、「本命」以外の会社が、予定価格を上回る額を入札。「本命」は98%、99%台といった予定価格に極めて近い額で落札します。落札率が95%を超えると一般的に談合が疑われます。

 そこで出来たのが同ルールです。応札額を事前に詳細にすりあわさなくても落札できる仕組みで、談合を巧妙に隠ぺいするもの。公取委もこうした「95%ルール」の存在を把握しており、名古屋地検特捜部と連携して、刑事告発に向け事件の全容解明を進めます。

 関係者によると、東海地方の大型工事は大林組名古屋支店元顧問柴田政宏被告(70)=別の下水道談合事件で公判中=が中心となり、落札する共同企業体(JV)などを決定。本命の「チャンピオン(受注予定会社)」に指定されたJVや企業は予定価格にたいし、95%を切る金額で、それ以外は95%以上で応札することになっていたといいます。

 受注予定会社以外のJVや企業は、談合の仕切り役から連絡を受けなくても、95%という区切りで応札額が決められるため、談合が発覚しにくいという業者側の「利点」があります。

 実際、今回、名古屋地検特捜部の捜査対象となっている同市営地下鉄6号線(桜通線)延伸工事の五工区のうち、四工区は、実際に落札したJVだけが95%未満の価格で応札していました。

 たとえば、最初に入札が行われた「鳴子北駅」工区の予定価格は二十億七千二百九十四万円で、入札の結果、ハザマ、東亜建設工業、大本組のJVが十九億五千万円(落札率94・07%)で落札しました。他の三JVはいずれも二十億円以上で、予定価格に対する応札額の割合は96・96〜99・28%でした。

 一方、徳重第2工区だけは、応札した四JVのうち、落札した鹿島を筆頭とするJVを含め三JVが95%未満の価格で応札しました。これは入札直前に談合情報が報道機関に寄せられたため、すべての工区で、受注JVだけが95%未満で落札するのは不自然と思われることを避けたとみられています。

 一九九二年の埼玉土曜会事件や九三―九四年のゼネコン汚職事件などの摘発を受け、地元談合組織が解散した後も、柴田被告は談合を専門に担当する「業務担当」として名古屋支店に残留。東海地方の土木工事に関する情報を一手に集め、「95%ルール」などに基づき、工事の割り振りをしていたとみられます。


■名古屋市発注の地下鉄工事入札結果

 工  区   落 札   J V     落札金額 (落札率%) 

 鳴子北駅   間(ハザマ)・東亜・大本   19億5000万円(94.07) 

 相生山駅   前田・三井住友・浅沼    25億5000万円(94.33) 

 徳重第1   清水・西松・鉄建       62億1000万円(92.78) 

 徳重第2   鹿島・戸田・東急       59億6000万円(92.25) 

 神沢駅    奥村・銭高・森本       25億5000万円(92.65) 


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