2007年1月25日(木)「しんぶん赤旗」

社会リポート

“人間らしい生活守ろう”

「再生」求め市民の会が署名運動

財政再建団体宣言から半年

夕張市


 昨年六月、財政破たんを表明した北海道夕張市(後藤健二市長)は四月から法に基づく財政再建団体になる予定です。市は昨年十一月、住民サービスをなくし、負担をかける「夕張市財政再建の基本的枠組み案」を発表しました。「住みつづけられる夕張の再生を求める市民の会」は自分たちの最低限の生活を守ろうと署名活動に取り組んでいます。(伊藤悠希)


地図

 「枠組み案」の内容は住民税引き上げ、高齢者のバス運賃補助(敬老パス)廃止、保育料の値上げなど。市民会館、図書館、美術館も廃止の予定です。集会施設も廃止か休止、または地域住民に管理を任せる方向です。

食べればいいか

 「地域の集会場で行われている文化活動も取り上げられることになる。人間はただ食べればいいのか。人間らしく生きることをやめなさいと言っているようなものだ」。市民の会代表の森谷猛さん(72)=前日本共産党市議=は語気を強めます。

 「枠組み案」には小中学校を各一校にする計画もあります。実施するとしても、スクールバスが八台ほど必要になるといいます。四月までに市役所の職員が半数退職することになり、実現するのは難しいとの声も。

 市民などの要望もあり、市長は二十三日、市議会の委員会で敬老パスの継続を表明。しかし、敬老パスの運賃は二百円から三百円に値上げします。小中学校の統廃合の見直しや四月から国の基準に引き上げるとしていた保育料も段階的に引き上げるとしています。

 市は「枠組み案」を二月に確定しようとしています。

訪問先快く協力

 年明け初の土曜日、市民の会は「市民の最低限の生活を守ろう」と署名を集め始めました。月末までに署名を集め、市議会と北海道知事に提出する予定です。初日は約三十人が参加。参加者は、炊き出しの弁当を食べながら、「訪ねたところはみんな書いてくれたよ」「“これでしか私たちの気持ちを表せないものね”と応じてくれた」と交流。その日は約三百五十人の署名が集まりました。二十三日までに五回行い千九百七十人の署名が集まっています。

 市には統廃合された校舎を宿舎にした施設やスキー場があります。野球場やフットボール場を備えた運動公園もあり、道内の学校のスポーツ合宿場として定着しています。専門家からの評価も高い「石炭博物館」には年間約一万人の来館者があったといいます。山田洋次監督の作品、「幸福の黄色いハンカチ」の「想い出広場」にはいまも来場者が絶えません。

 日本共産党のくまがい桂子市議は「スキー場、温水プールがあって、札幌から車で一時間。“節約″といってすべての施設を閉鎖するのではなく、いまある施設を有効利用する方法を考えていきたい」と話します。

 年賀状には激励の言葉がたくさんあったと話す夕張労働組合総連合(夕張労連)の筒井勇治議長(62)は「夕張で生活しなければならない人が残っています。夕張のことはいまの時点で決める性質のものではないからね。夕張のたたかいは歴史に残さなきゃだめだね」。


国策にほんろうされた街

 「炭都」と呼ばれ、最盛期は人口12万人を誇った夕張市もいまは約1万3千人です。明治時代の産業政策の下、開鉱。「まず石炭ありき」の中で町が生まれました。1950年代の国のエネルギー政策転換(石炭切り捨て)の下で閉山が進みました。

 北炭夕張炭鉱など炭鉱資本は閉山後、社会責任を放棄。炭鉱資本は老朽化した上水道、住宅、病院など都市基盤の整備を市に押しつけ、膨大な財政負担を転嫁しました。

 市は炭鉱の閉山が進む中、地域の特性を生かした観光事業に取り組もうと、79年には「石炭の歴史村」事業に着手。全国的なリゾート開発の下で行われた観光開発には松下興産が参入しました。下火になると市に押し付け、財政を圧迫する要因に。小泉構造改革の下での「三位一体改革」による交付税縮減は市財政にとどめを刺しました。


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