2007年1月20日(土)「しんぶん赤旗」
石播思想差別 勝利和解
“自由”広げる再発防止協定
石川島播磨重工業の東京、武蔵、横浜、愛知、相生、呉の六事業所で働く労働者百七十五人が会社側と和解した争議は、日本共産党員や支持者を“企業破壊者”と敵視してきた反共労務政策が完全に破たんし、崩れ去ったことを意味します。
石播は、職場の日本共産党を撲滅することを意図した「ZC(ゼロ・コミュニスト)計画管理名簿」を極秘に作成し、四十年にわたって日本共産党員やその支持者とみなした労働者を徹底して差別してきました。
「ZC名簿」に載った労働者には、職場の秘密労務(インフォーマル)組織を通じて「日共は会社を辞めろ」と反共宣伝を強め、「口をきくな」「あいさつするな」「行事に呼ぶな」と“職場八分”にしてきました。
野蛮な思想差別は、切実な要求実現の先頭に立つ日本共産党員らを差別・排除することで労働者の団結を破壊し、自由にものがいえない職場をつくり、労働者全体の支配を強めるのが狙いです。
石播の職場は、もうけを優先する企業の横暴勝手がまかり通り、一九七五年に四千六百人、八六年には退職強要で七千人もの大規模な人減らしをわずか一カ月半で強行します。その後もリストラや企業再編をくり返し、石播本体に三万六千人在籍(七一年)していた労働者が、現在は六千八百人に激減しています。
約束守られず
二〇〇四年三月、石播は武蔵の労働者八人と和解します。「会社および従業員がやってはならない」十四項目の再発防止策を確約しますが、約束は守られませんでした。
約束を守り、差別を是正してほしいと、全国で労働者が立ち上がり、各労働基準監督署に申告しました。
「ZC名簿」に続いて、〇六年八月、「個別管理計画」という内部文書が明らかになります。本社の人事部労働者管理グループが作成した「厳秘」と押印された文書には、労働者名を列挙し、「A」=活動的な党員、「B」=党員とみなした労働者に分け、昇進の上限を指定しています。定年になる二十一年先の等級まで決められている労働者もいました。
「職場に憲法はない」といってはばからない石播など日本の大企業の反共差別に風穴をあけたのが、関西電力事件での最高裁判決(九五年九月)でした。「職場における自由な人間関係を形成する自由を不当に侵害」したとのべ、憲法違反の行為と断罪したのでした。
いっそう充実
今回、労働者側と石播が合意した再発防止協定は、職場の基本的な人権の尊重を徹底するため、コンプライアンス・ガイド(法令順守の手引書)を作成し全従業員に配布する、ホームぺージに掲載する、部長ら人事担当者に教育を実施する―をあげています。「やってはならない」再発防止策をいっそう充実させた内容で、思想差別だけでなく、セクハラといった性差別の禁止なども掲げています。
不二家のずさんな品質管理が問題になっています。法を無視しての労働者の抑圧が、こうした事件を起こす背景にあることは、雪印乳業などの例からも明らかです。
今回の再発防止協定は、石播の労資にとどまらず、偽装請負やサービス残業、パートや派遣など非正規労働者の差別的雇用の拡大など大企業の職場に横行するすべての差別をなくし、職場に自由な人間関係を確立していくうえでも重要な方向を示しています。(名越正治)