日本共産党
SEISAKU
SOUGOU,JICHI

2009年 総選挙政策 《分野別政策》

20 地方自治

「分権」の名によるいっそうの自治破壊、地方切り捨てをゆるさず、財源を保障して地方自治を発展させます

格差拡大、弱肉強食の構造改革路線によって、地方は切り捨てられ、地域と地方自治が脅かされています。疲弊した地域経済と地方自治を回復させるとりくみを、財源を保障して全力で応援することこそ、いま、国がやるべきことです。

地方自治破壊をすすめた自公政権

「地方分権改革」がさかんにいわれていますが、この間、「地方分権」の名ですすめられてきたこと、また、これからすすめられようとしていることは、「分権」とは正反対の地方自治破壊です。

小泉内閣が「地方分権」といって、自治体の「自立」の名のもとにやってきたことは、第一に、国の責任を放棄して、地方への財政支出を大幅に削ること、具体的には、「三位一体改革」によって地方交付税を大幅削減したことであり、第二には、自治体の規模を大きくし自立能力をつけろとして、市町村合併を押しつけてきたことでした。地方の疲弊が急速にすすむなか、「分権」に期待していた自治体関係者から、「だまされた」という声がわきあがっているのは当然です。

では、こんどの「分権」の検討は、自公政権のもと、どのような内容ですすめられているでしょうか。「義務付け・枠付けの見直し」といいますが、福祉や教育などの水準を不十分ながら保障するために設けられてきた国の基準を取り払い、国の責任を放棄して負担を削減することが、またもやそのねらいです。これでは自治体が、独自の施策を充実させ、地方自治を発展させるどころか、福祉、教育など住民施策の最低水準を確保することも難しくなってしまいます。

民主党も「義務付け・枠付けの見直し」に賛成し、「補助金全廃・一括交付金化」をかかげています。「一括交付金」に切り替えるさいに、国から地方への支出を削減するとしています。

もともと「地方分権」の検討がはじまった背景には、国と地方をあわせた国家制度のあり方を大再編するねらいがあります。それは、国の仕事を外交や貿易、軍事、司法に限定し、「小さな政府」にする一方、社会保障や教育など、憲法にうたわれた国民の基本的な権利を守る国の責任を投げ捨て、地方に押しつける。この受け皿として、いまの都道府県をなくし、全国を10程度に区分けして道州をおき、現在約1,800の市町村を当面、700から1,000程度、将来は300程度の基礎自治体に再編しようというものです。

こうした国家制度にしていくために、「地方分権」を看板にし、「分権」と言って、国の財源保障の責任を取り払い「小さな政府」にしていく。――地方が「自助・自立」でやる仕組みをめざして、自治体の規模を大きくし、いっそうの市町村再編をすすめる。――国の仕事を地方に移し、地方ブロックごとに国の出先機関と都道府県の仕事を統合して道州制につなげる。こうしたことが、すすめられようとしているのです。

政府の「地方分権改革推進要綱」でも、「地方分権改革を推進することが将来の道州制の道筋をつけることになる」と冒頭にその目的を明記しています。

 いますすめられている「地方分権」は、国の財政負担の削減、市町村再編の押しつけ、そして道州制の導入をめざしたものであり、自治体や住民のための地方自治の充実の方向からでてきたものではありません。

1 地方財源を保障・拡充し、地方自治発展の土台をきずく

「地方分権」というなら、「住民の福祉の増進を図る」(地方自治法第1条の2)という自治体本来の役割をはたしていくための地方の財源を保障すべきです。

地方の財源確保の保障は、地方自治発展の土台です。戦後の憲法のもとで整備された日本の地方自治制度の優れた側面として、地方行政の運営を財源的に保障してこそ、地方団体の独立性の強化がはかられる、という考え方で、地方交付税や国庫補助・負担金制度などを整えたことがあります。こうして、福祉や教育など住民施策のために必要な財源が不十分ながらも確保されてきました。

もちろん、現在の地方交付税は、自治体が本来自由に使える財源にもかかわらず国の施策の誘導に使ってきたり、補助金のほうも、使い勝手の悪いものがあるなど、正していくべき部分も少なくありません。

しかし、だからといって、国の財源保障制度そのものを崩してよいということにはなりません。自治体が独自の権限と役割を発揮し、この間、壊されてきた地域経済と地方自治を回復させるには、国庫補助・負担金の削減を許さず、地方交付税のこの間の削減分を復元させて、地方財源の保障・拡充をおこなうことが、いちばんもとめられています。

日本共産党は、福祉や教育などの国庫補助・負担金の廃止・縮減に反対します。自治体など実施者の超過負担をなくすなど補助基準を引き上げ、使い勝手をよくするなど、その改善・充実をもとめます。

小泉内閣での地方交付税の大幅削減は、自治体財政を苦境においつめ、本来なら望まない市町村合併も「やむをえない」というところへ地方を追い込みました。地方交付税が本来もつ財源保障・調整機能を弱め、地方自治を脅かしています。

日本共産党は、地方交付税の復元・増額で、本来の財源保障・調整機能を回復・強化し、住民のくらしをまもるために必要な地方の財源総額の確保をはかります。地方交付税の原資となっている国税の交付税率の引き上げをはかります。

 地方の財源確保のために「地方消費税の充実」をもとめることは、消費税の大幅増税に直結するものであり、反対します。

2 国の不当な地方支配の仕組みをなくす

地方自治の拡充のためには、戦前から続いてきた国が地方自治体を下請け機関とする不当な仕組みをなくすることも必要です。ところが、1999年の「地方分権一括法」では、国の「勧告」「資料提出」「是正要求」「代執行」まで、国が法的に強制力をもつ自治体にたいする「関与」の仕組みが新たにつくられました。「分権」といいながら新たな「統制強化」です。

問題になっていた「通達」行政も「助言」の名のもとに、実態は同じように続けられています。国保証を未納者からは取り上げて資格証明書にせよという、国から地方への“通達”もその一つです。

日本共産党は、こうした不当な地方への支配の仕組みをなくし、自治体が文字通り国と対等で自主的な判断ができるように地方自治法を改めます。国と地方の協議の場を法制化します。

また、子どもの医療費助成を自治体がおこなうと交付金にペナルティを課す、介護保険料減免に一般財源を使うなという「指導」など、自治体の独自施策を抑制する仕組みをやめさせます。

国直轄事業負担金を、“必要な事業は、国の責任と負担でおこなう”という方向で抜本的に見直します。国直轄事業に多く含まれている高速道路、港湾、ダムなど、不要不急の大型公共事業は削減・中止します。国が維持管理費や国職員手当などの負担を地方におしつけることは直ちにやめます。

3 道州制の導入とさらなる市町村再編に反対し、地方自治を守る

道州制は、財界・大企業がいっかんしてその導入をもとめてきたものです。多国籍大企業にとって都合のよい、国と地方の仕組みの大再編をおこなおうというものです。その意向を自民、公明、民主が受け入れてきたのが、いまの道州制論議です。

日本経団連が08年11月に発表した「道州制の導入に向けた第2次提言」でも、道州制を「究極の構造改革」として位置づけ、国の役割は外交、防衛などに「選択と集中」し、道州による広域経済圏で、地域発展戦略に財源を投入することをもとめています。アメリカと一緒に海外で戦争できる国づくりをすすめ、自治体統合などで浮かせた財源を、道州が輸出大企業のためのインフラ整備など大型開発に集中投入することなどがそのねらいです。

道州制は、さらなる市町村合併や再編とも不可分のものです。自民党は、08年7月の同党道州制推進本部の「第3次中間報告」で、都道府県を廃止して全国に10程度の道州を設置し、現在約1,800となった市町村を当面700から1000程度の基礎自治体に再編するとしています。また、合併できない小規模自治体は、近隣の基礎自治体の内部団体に移行させるとしています。

民主党も「道州の導入も検討する」とし、「基礎的自治体の規模や能力の拡大を進めていく」としています。

「平成の大合併」を押しつけた矛盾が表面化するなか、政府は、市町村がただちに合併にすすまない場合の方策として、5万人以上などの要件を満たす「中心市」を定めて、そこに投資を集中し、周辺小規模自治体は、そのサービス・施設等を利用する「定住自立圏構想」に着手しました。これも道州制にむけた、市町村再編をねらったものであり、小規模自治体の自治権を奪い、切り捨てにつながるものです。

道州制導入と市町村再編は、自治体行政を住民から遠ざけ、地方のいっそうの疲弊と地方自治の形骸化をもたらすものです。全国町村会も、道州制導入の「これまでの議論は政府や財界主導によるものであり、主権者たる国民の感覚からは遊離したもの」であること、そして、「道州制の導入によりさらに市町村合併を強制すれば、多くの農山漁村の住民自治は衰退の一途を辿り、ひいては国の崩壊につながっていく」とのべ、「強制合併につながる道州制には断固反対していく」と昨年11月の大会で特別決議をあげ、その立場で行動をつづけています。

日本共産党は、道州制の導入と小規模自治体切り捨てなどさらなる市町村再編に反対します。住民と自治体による地域の振興のとりくみを応援し、地方自治を守り発展させます。

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