私は、日本共産党を代表して、第百五十六通常国会の会期を四十日間延長することに断固反対の討論を行います。
会期延長問題にあたって、まず、今通常国会が、どういう国会だったのかが、問われなければなりません。
この国会に求められたのは、第一に、深刻な不況とゆきづまる経済のもとで、国民生活をまもり、日本経済を再建する道筋をつけることであり、第二に、アメリカのイラク戦争のもとで世界の平和秩序がするどく問われたのであります。私は、このことを今国会冒頭に提起しました。
ところが、小泉内閣と与党三党は、国民負担増の中止、健康保険本人三割負担の凍結をもとめる国民の声には一顧だにせず、「不良債権早期処理」策を最優先し、中小企業の倒産と失業者の増大をまねき、日本経済の破綻をいっそう深刻にしたのであります。
イラク問題では、国連による大量破壊兵器の査察を継続し、平和的外交的手段による解決をもとめる圧倒的な国際社会の世論を無視し、国連憲章違反の米英によるイラク戦争にたいして、小泉内閣はいちはやく「戦争支持」を表明し、国会では、アメリカがアジアで起こす先制攻撃戦争に自衛隊が武力行使で参加し、国民を総動員する体制をつくる、武力攻撃事態法を押し通したのであります。
しかし、小泉内閣のすすめるこの道は、世界の平和の流れに逆行するものでしかありません。世界での未曾有の反戦運動やアジア諸国からの憂慮と批判の声、日本国民の憲法の平和原則をまもれという世論こそ、多数であることが証明しています。
これ以上、国民と乖離し、国会内での多数を頼んで国民生活無視の悪法を推進することはやめるべきであり、憲法九条のじゅうりんを許さない、このことが、いま国会に求められているのであります。
今国会は、憲法と国会法の原則にしたがって、会期を閉じるべきです。
憲法は、議会制民主主義の基本として会期制の原則を定め、国会法第六十八条は「会期中に議決に至らなかった案件は、後会に継続しない」と定めています。法案が会期末において審議未了であれば廃案となるのは当然であり、政府・与党はこの定めを厳守すべきであります。
労基法改悪案、国立大学法人法案、人権擁護法案、そして生命保険の利率引下げ法案など、いまなお成立していない法案は、審議をつうじて重大な問題点が明らかになり、それにたいして国民的な批判があるからであります。政府がどうしてもこれらの法案の成立を図りたいというなら、国会を一度閉じて、国民の声にこたえるものに内容を練り直し、改めて国会に提出する、これが議会制民主主義の最低限のルールであることを強く指摘するものであります。
ましてや、会期末に新たな法案をもちだしてきて、それを理由に会期を延長するなど、もってのほかであります。
政府・与党は、会期の四十日間延長によって、「イラク特別措置法案」と「テロ対策特別措置法の延長法案」を「必ず成立させる」としていますが、絶対に容認できません。
小泉内閣は、「イラク特措法」は「イラク復興のため」だと称していますが、その内容は、米英軍による無法なイラク戦争と軍事占領を追認し、米英を中心とする軍事占領に日本の自衛隊を合流させようとするものであります。イラク国民の軍事占領への反感は非常につよく、依然として戦闘行動が続いています。法案は「非戦闘地域」の支援に限るとしていますが、現実には「戦闘地域」と「非戦闘地域」を区別することは不可能です。軍事占領軍に参加する自衛隊は、イラクの国民に銃口を向けることになるのであります。武力の行使を禁止し、交戦権を認めない日本国憲法に真っ向から反することは明白であります。
しかも、こうした自衛隊のイラク派兵を求める声は、イラクの国民からも、国際社会からもありません。「ブーツ・オン・ザ・グランド」と米ブッシュ政権がもとめているだけであります。
かかる憲法違反の疑いのある重大な法案を会期末に、国民からの請願受付を締め切った二日後に提出し、与党の多数の力で会期を延長して押し通そうというやり方は、議会制民主主義からいって到底許されるものではありません。「イラク特措法案」は、その内容からいっても、その手続きにおいても、絶対に許されないものであります。
みなさんに訴えたい。
イラクの復興のために、国際社会に何がもとめられ、日本は何をなすべきか――。いまこそ、冷静に考えるべきであります。与党内からは「イラク戦争に賛成した流れからいって自衛隊派遣は当然だ」という意見もききますが、果たしてそれでいいのでしょうか。
イラク問題をめぐって、アメリカやイギリスでも、イラク戦争の最大の口実とされた大量破壊兵器がいまだにみつからないことが問題とされ、イラクを軍事占領するアメリカの新植民地主義が世界で大問題となっているのであります。
イラク国民が自らの手で国を再建し復興するためには、米英軍による軍事占領支配ではなく、国連が中心的役割を果たすことが不可欠であります。政府が、「イラクの復興支援」をいうなら、このことをまずアメリカに要求すべきであります。アメリカのいうままに軍事占領軍へ自衛隊を派兵することは、イラク国民の意思を尊重した真の復興に逆行する、きわめて有害なものであり、断じて許されません。
また「テロ特措法」の二年延長も何をかいわんやであります。この一年半の間、自衛隊補給艦から米軍艦船などに給油された燃料は約三十万キロリットル、約百十一億円にのぼりますが、自衛隊の活動内容の全容は国民には明らかにされず、またイラク攻撃任務の米軍への補給の疑惑も解明しないまま、ずるずると「二年延長」を提案する、小泉内閣の姿勢そのものが厳しく問われていることを指摘するものであります。
最後に、この十年余、歴代内閣のなかで、二年連続で通常国会の大幅な会期延長を企図し強行しようとしているのは、小泉内閣だけであります。ましてや政局にからめて会期延長を云々するなどは、まさに常軌を逸した国会運営といわねばなりません。
以上、アメリカの軍事占領に自衛隊を合流・参加させる、憲法違反の明白な法案をおしとおすための国会会期の大幅延長に断固反対することを表明し、討論をおわります。