2003年6月5日(木)「しんぶん赤旗」
「以前から若く見られましたけど、このときは『ここまでやるのか』と思いましたね」
新日本スポーツ連盟東京都連盟の井上宣事務局長(29)は、6年前のみずからの体験を振り返っていいます。
それは東京・立川の場外馬券売り場でのこと。入り口で警備員と押し問答となりました。
警備員が「年齢は?」「年を確認できるものは?」「生年月日と干支(えと)は?」と矢継ぎ早に質問をぶつけられ、正直に答えても納得しません。
警備員「学生さんではないんですか?」
――「いいえ、フリーターです」
警備員「社員証は?」
――「コンビニ店員に社員証はないです」
警備員「職場に電話して確認していいですか」
――「今日は仕事を断ってきたので困ります」
警備員「(23歳には)見えないなぁ。身分証明書をもってきてくれないと困りますね……」
結局、井上さんは入場できませんでした。
競馬でのチェックが十分か否か、場外馬券売り場の適否はさておき、同じギャンブルでも、ここまで見てきたサッカーくじ(トト)のチェックのルーズさとは、明らかに違いを感じます。
一つは、販売側の体制の問題です。競馬は馬券販売を専門に行い、青少年対策に人もかけているのにたいし、トトは販売店が副業的に扱っているだけ。青少年対策もお店任せの部分が大きい。
加えて、くじ販売店の実入りが少ないという事情も絡んできます。
東京・葛飾の酒屋さんの場合は――。
この店では、くじの月々の経費が機械リース料(1万円)と電話料(6千円)の合計額。店の取り分は売り上げの4%で、黒字のためには月40万円の売り上げが必要です。
しかし現実は「30万円売れればいい方。赤字ですよ」と店主はいいます。
本業の「片手間」的位置付けのトト。しかも売れないなかで「経費だけでも出したい」と躍起になる販売店に徹底した確認作業が期待できないのはある意味で当然です。
販売3年目で、早くも販売禁止措置の“風化現象”も大きい。
中高生が買えないことを示す「18禁マーク」は開始当初、大きな看板があったものの、いまはすっかり姿を消し、小さなシールばかり。研修を受けた販売員に義務づけられたバッジも、付けている方が珍しい。
ずさんな販売チェックにはほおかむりして、コンビニ販売に走る文科省の無責任さに、東京地婦連の秋元洋子事務局長は怒ります。
「先日も文科省と交渉する機会がありましたが、彼らは売り上げばかりに目がいっていて、19歳未満には売らないという姿勢が後退している。こんないい加減な状況でコンビニ販売が開始されたらどうなるのか。本当に心配です」(つづく)