2003年6月6日(金)「しんぶん赤旗」
「会員にしか販売しません。子どもたちが買うことはありませんから」
3月末、コンビニ販売が決定する前から、文部科学省は日本PTA全国協議会を何度となく説得にあたったといいます。
![]() トトの宣伝を始めているコンビニ |
同全国協議会は5年前、サッカーくじ(トト=toto)のコンビニ販売が浮上した当時、反対を表明し、導入阻止に大きな役割を果たしました。ここには「同じ轍(てつ)を踏まない」との文科省の思惑が見え隠れします。
文科省がコンビニ販売を進める際、「会員限定販売」を“安全弁”として強調しています。
サッカーくじは通常、店頭にあるマークシートに記入し、19歳以上ならだれでもその場で買うことができます。会員販売の場合は、事前に登録した会員にしか販売しないというもの。
会員とはtotoデビット会員、toto特別会員、ローソンパスの三つ。いずれも「あらかじめ年齢確認をし」(文科省)、19歳以上であることが証明されて初めて、会員の資格を手にできる、としています。
しかし、その年齢確認はどうなのか。totoデビット会員(購入代金が指定銀行、郵便口座から引き落とされる)のケースで見てみましょう。
会員の申し込みに必要なものは二つ。(1)申し込み書(名前、金融機関名、口座番号、電話番号のみ記入)(2)身分証明書です。これを販売店に提出すれば、その場で確認し、カードを発行してくれます。
ここでも販売店の対応が問題となります。
申し込みをした若者たち(19歳から21歳)に聞いてみると、「年齢確認するものが必要です」と求めた店は24件中9件だけ。「身分証明書」の提出もなく作成手続きができた販売店は7件と約3割に及びました。
2店では、お客さん自身が、タッチパネル式の機械で申し込む形。画面に身分証明書の種類として、「免許証」などと出るのを、自分でタッチすれば、それだけでOK。店員が確認するわけでもありません。
新宿では「(身分証明は)持ってなくてもいいですよ。要するにお客さんのモラルの問題ですから…」というスポーツ用品店もありました。
もう一つの問題は、身分証明書として「キャッシュカードがあればいいです」という販売店が6件もあったことです。
しかし「キャッシュカード」は、その発行に年齢の制限はありません。中・高校生でも銀行口座の開設ができ、カードの発行もできます。これをもって成人との証明にはなりません。
こんな状況では未成年者も容易に会員資格を取得できてしまいます。
年齢確認もせずトトが買え、身分証明書なしで会員になれる実態――。こうしたずさんな状況のもとで、果たしてコンビニ販売に踏み切っていいのでしょうか。
新日本婦人の会の高田公子副会長は語ります。 「会員だけにしか売らないといっても、現状では青少年にたいする歯止めにはなりません。私たちも実際に、地域で調査活動なども行って、コンビニ販売を断念させるよう頑張っていきたいと思います」(おわり)
(サッカーくじ取材班)