2003年6月3日(火)「しんぶん赤旗」
都内の販売店でくじを買う青年 |
「十九歳未満の販売禁止」──。サッカーくじの大原則が揺らいでいます。
興味深い数字があります。
「平成十四年度 一回目86%、二回目88%」
くじを購入する若者が十九歳未満かどうか、販売店の年齢確認の実施率として公表された数字です。
販売主体である日本体育・学校健康センターが、十九歳未満にみえる「シャドーバイヤー」(覆面購入調査員)を組織し、年二回、各店舗を抜き打ち検査したものです。テスト販売した三年前には五割を切っていた数字が、いまや九割近く。これをみる限り、年齢確認が定着していることをうかがわせます。
しかし、本紙の調査で驚くべき実態が浮き彫りになりました。
都内の販売店で、五人の「バイヤー」にくじを買った時の状況を聞いたところ、年齢を確認する「身分証明書」の提出を求めた店は、四十店中、一件もなかったのです。
年齢を聞かれたケースさえ、わずか一件。そこでも「いまおいくつですか?」「生年月日は?」との問いに答えると、身分証明書の提出も求めず「じゃ、どうぞ」と購入できました。
同センターは、各店に「目視で二十二歳以上と思われない場合、身分証明書の提示を求めること」と指導しています。それにもかかわらずです。
バイヤーの一人、大学生の志賀一也くん(19)は「高校生からも同級生に間違われる」という童顔です。「年齢を確かめられると思ったんですが、八件のうち一件もなかった。いいかげんなものですね」
十九歳の女性も「あきれるほどされない。よっぽど幼く見えないと確認しない感じですよ」。
なぜ、販売店は年齢確認をしないのか。新宿駅に近いスポーツ用品店で聞いてみると──。
店員「もし違っていたらお客さんに失礼。身分証明書の提出は、これは間違いないという人だけです」
記者「具体的には?」
店員「制服を着ている人ですね」
中・高校生でも私服なら買える実態──。Jリーグのスタジアムで、彼らが「簡単に買えますよ」、「何もいわれませんでしたよ」と話していたことが、裏付けを持って迫ってきました。
こんな店もあります。くじを買いに来た本人が、タッチパネル式の機械相手に手続きし、店員に料金だけを払えばいいというものです。店員が忙しそうに動き回る電器量販店では「なかなか確認までできないですよ」と、なかば“放棄”しているような状況もありました。
同センターはシャドーバイヤーの実施件数など、みずからの調査の詳細を明らかにしたことがありません。
「公表すると(各店に)手の内を明かすことになり、シャドーの意味がなくなりますから」
なんとも理解に苦しむ説明です。
実態とあまりにかけ離れた、くじ販売主体の調査結果。文科省と同センターには説明責任があるはずです。(つづく)