2003年6月2日(月)「しんぶん赤旗」
三月末、中央教育審議会の唐突な答申を契機に、文科省はトトのコンビニ販売に踏み切りました。
「全国販売から三年、青少年に問題が起きたとの報告が一つもない」ことが理由の一つです。
本紙は五月、Jリーグのスタジアム(横浜国際、味の素)で、中・高校生ら五十人に直接、聞いてみることにしました。
「トトを買ったことがあるか?」との質問には、全体の一割を超える七人が「自分で買ったことがある」と答え、「親などに頼んで買ってもらった」とする「代理投票」も合わせると、全体の三割に上っていることがわかりました。
横浜市内でスポーツ、進学ともに有名な私立に通う高校生(15)の話は驚きでした。
![]() 中・高校生の姿も多いスタンドのサポー ター=5月10日、横浜国際総合競技場 |
「もう十回くらい買ったことがあるよ」とさらりと話し出した彼は、「初めて買ったのは中二のとき、いつも宝くじ売り場で買うけど、『高校生でしょ』といわれたのは一回しかないよ」と得意げに続けました。周りの友達と比べるとややおとなっぽい感じ。でも、どこにでもいるごくふつうの高校生です。
隣の友達(15)も「僕は始まったころに一回だけ。でも身分証明書を出せとはいわれなかった。そのとき当たらなかったから、もうやめたけど……」。
サッカー部の仲間と来ていた高校生(16)は「僕は買ってないし、部内にはいないけど、クラスの中のギャンブル好きな奴らが買っている」と話します。
中には「トトって何ですか」と聞いてくる中学生、売り上げの減少を反映して「もうクラスでも話題になっていない」という声もありました。
「僕はギャンブルは嫌い。スポーツはスポーツで楽しむべき」「かけごとはやりません」と、すがすがしく語る高校生もいました。
しかし、予想をはるかに超える青少年が、直接、間接に買っている実態は、ただただ驚くばかりでした。
この若者たちに、コンビニ販売は、どんな影響を与えるのか。
「興味の有無」を聞くと、「トトを買ったことがない」という子たちからも「買いたくなっちゃうよ」「僕らも買えるの」など興味津々という感じの声が返ってきます。
コンビニ販売は、会員限定で中・高校生が買える余地がないように見えます。それが実効あるか否かは、連載で検討しますが、はっきりしているのは、コンビニ販売が青少年とトトの距離を限りなく近づけることです。
一つは店舗の数。八月からローソンが、来年からはファミリーマートも加われば、最大約一万三千店増えることになります。これは現在の七千百店の三倍です。
しかもコンビニの多くは、生活に密着した便利な場所にあり、青少年の出入りも多い。国会で日本共産党の畑野君枝参院議員が「これでは馬券売り場がどこにでもあるのと同じ」と追及した通りです。
新日本スポーツ連盟の和食昭夫事務局長はこう危ぐの声をあげます。
「コンビニで売られることになれば、子どもたちへの影響は比較にならないほど広がる。予想を書き込むマークシートも置かれるなど、子どもたちの購買意欲は確実に刺激されるでしょう。現在でも多くの中・高校生がくじを手にしている実態と合わせ、『ギャンブルのすすめ』を説く文科省の罪は本当に重いと思います」
(サッカーくじ取材班)
| サッカーくじの購入経験 | ||
|---|---|---|
| 年齢 | 購入回数 | 購入方法、年齢確認など |
| 中3 | 1回 | 自分で予想して父親に買ってもらった |
| 中3 | 1回 | 自分で予想して父親に買ってもらった |
| 高1 | 1回 | 自分で予想して父親に買ってもらった |
| 高1 | 1回 | 自分で買った。身分証明書の提示など何も言われなかった |
| 高1 | 約10回 | 1度だけ、「高校生でしょ」っていわれて買えなかった |
| 中3 | 1回 | 自分で予想して親に買ってもらった |
| 中3 | 1回 | 近所の本屋で買ったけれど、何も言われなかった |
| 中3 | 1回 | 宝くじ売り場で買った。何も言われなかった。 |
| 19歳 | 1回 | 高校生の時買ったが、年齢確認もなく普通に買えた。 |
| 高1 | 数回 | 親といっしょに予想して買った |
| 中2 | 1回 | 親といっしょに予想して買ってもらった |
| 18歳 | 数回 | 1回も身分証明を出したことはない |
| 高2 | 1回 | 親に買ってもらった |
| 18歳 | ほぼ毎回 | 結構買えるものですよ |