日本共産党

貧困と格差を打開し、暮らしと平和をまもる予算へ
――2007年度予算案の抜本的組み替えを要求する

2007年2月21日 日本共産党国会議員団


 国民の暮らしは、政府の「景気回復」のかけ声とはほど遠く、とくに貧困と格差がますます深刻になっている。必死で働いても貧困から脱け出せないワーキングプアは少なくとも四〇〇万世帯といわれている。五年間で、年収二〇〇万円以下の労働者は一五七万人増えた。生活保護世帯は二七万増の一〇八万世帯、就学援助を受けている児童・生徒数は四〇万人増の一三八万人となった。

 これらの背景には第一に、財界・大企業による雇用破壊と「規制緩和」「構造改革」の名で推進してきた政治がある。正規雇用が激減し、驚くべき低賃金の非正規雇用が増えている。第二は、所得の再分配によって貧困を減らすはずの「税・社会保障制度」がほとんど機能していないことである。それどころかOECDの報告書によれば、「子どものいる世帯」では税・社会保険料負担が社会保障給付を上回るため、逆に貧困率が拡大している。雇用破壊と「逆立ち」した税財政――この二つの大問題を是正し、国民の暮らしをまもる予算こそ求められている。

 ところが〇七年度予算案は、これにまったく反するものになっている。
――定率減税廃止による一・七兆円の庶民増税、生活保護の母子加算の段階的廃止、雇用対策費の半減など国民の暮らしを圧迫し、貧困と格差をいっそう拡大する予算である。
――その一方で大企業・大資産家には減税の大盤振る舞いをおこなっている。
――道路特定財源の温存、スーパー中枢港湾など、新たなむだ使いを拡大している。
――「米軍再編」経費を本格計上し、海外派兵を「任務」にした自衛隊と米軍の一体化をすすめ、「海外で戦争をする国」へとつき進もうとしている。

 日本共産党は、格差と貧困を是正し、日本経済のゆがみをただすことなどを中心に、〇七年度予算について、次の方向で抜本的に組み替えることを要求する。

(1)貧困と格差の打開、生活防衛のための五項目の緊急重点要求

〈1〉定率減税廃止など庶民増税の中止・・・庶民の所得・消費が落ち込んでいるにもかかわらず、政府は定率減税を全廃し、すべての納税者に多大な負担を押しつけようとしている。しかも高齢者は昨年に引き続き、増税と国保料・介護保険料への連動した負担増に襲われることになる。このような庶民への増税・負担増は中止する。

〈2〉最低賃金の抜本的な引き上げ、均等待遇の実現、雇用対策費の大幅拡充・・・日本の最低賃金の水準は平均的所得の三二%と先進国のなかで最低水準である。ワーキングプア問題を解決するために、年間三〇〇〇時間働いても年収二〇〇万円にも届かないという最低賃金を抜本的に引き上げる。政府は、ワーキングプアや非正規など雇用が大問題になっているときに、雇用対策費を二一一二億円、前年度比で約半分という前代未聞の削減をしようとしている。公的な職業訓練を増やし、低賃金で貯えがない人には訓練期間中の生活資金の援助をおこなうなど、雇用対策を抜本的に拡充する。パート、非正規労働者の劣悪な労働条件を改善し、均等待遇をすすめる。

〈3〉生活保護の母子加算や児童扶養手当の削減計画の中止・・・政府は、今後三年間かけて母子加算(一人親家庭が対象)を廃止し、〇八年度からは生活が苦しい母子家庭への児童扶養手当も最大半分に減らそうとしている。貧困をさらに広げる、冷たい仕打ちは許されない。母子加算の廃止をやめ、十八歳までの支給を復活するとともに、児童扶養手当の削減を中止すべきである。廃止された老齢加算を復活する。

〈4〉生活が困難な人たちからの国民健康保険証の取り上げ中止と減免制度の拡充・・・国保料が高くて払えず、保険証を取り上げられ、窓口で全額の医療費支払いを請求される「資格証明書」に置き換えられた世帯が三二万にも急増し、医者に行くのを我慢して手遅れになって死亡した痛ましい例も少なくとも二一件(「朝日」調査)起きている。生活に困っている人からの国保証取り上げを中止し、減免制度拡充に必要な予算を確保する。

〈5〉「障害者自立支援法」の応益負担の撤回・・・障害者が人間としてあたりまえの生活をするために必要な支援に応益負担を導入したために、障害が重い人ほど負担が重くなり、負担に耐えられない障害者はサービスを受けられなくなるなど、深刻な事態が広がっている。あまりのひどさに政府は、一部負担の軽減など手直しを迫られているが、最大の問題である応益負担こそ撤回すべきである。

(2)暮らし、福祉、教育、営業を支える予算を拡充する

 〇七年度は、国の一般会計だけで七兆円を超える税収増が見込まれているが、大企業・大資産家減税や大型公共事業のむだ使いでなく、暮らし、福祉、教育を拡充し、中小企業・農業などの経営基盤を強化するなど、国民の暮らしと営業のために生かすべきである。

社会保障・雇用

 貧困と格差が広がり、国民のいのちと暮らしが脅かされている今こそ、社会保障に予算を重点的に配分する。

将来に希望がもてる年金制度に・・・基礎年金の国庫負担を二分の一までただちに引き上げ、年金財源の土台をつくり、全額国庫負担による最低保障年金制度の実現に向かう。

だれでもどこでも必要な医療が受けられる医療制度を・・・深刻な医師不足を解決するため、医師の養成増、勤務医の労働条件改善、不足地域に医師を派遣する公的体制づくりをすすめる。国公立病院の統廃合や産科・小児科の切り捨てをやめ、地域医療体制をまもる。療養病床の大幅削減、窓口負担増、「後期高齢者医療制度」による過酷な保険料取りたて・給付切り捨てなど、高齢者いじめの医療改悪を中止する。リハビリの日数制限を撤廃する。減らしてきた国庫負担を元に戻し、高薬価や高額医療機器の見直しなどで医療保険財政を立て直し、保険で安心してかかれる医療制度をまもり、拡充する。

介護サービスのとりあげをやめさせ、保険料・利用料を軽減する・・・介護給付費に占める国庫負担の割合を五%引き上げ、利用料・保険料の減免、介護ベッドの「貸しはがし」などの介護とりあげの中止、介護労働者の労働条件の改善などをはかる。地域の実情に応じた福祉のまちづくりをすすめる。

社会福祉の改悪中止と制度の充実・・・障害者・児施設などへの支援を強め、福祉労働者の労働条件を保障する。難病医療への公費助成の切り捨てを許さず、対象を拡充する。

労働法制の規制緩和政策を転換する・・・ホワイトカラー・エグゼンプションを断念し、異常な長時間労働を是正する。サービス残業、偽装請負などの無法をなくすため監督体制を強化する。

教育・子育て

 「教育再生」といいながら、教育予算を削減することは許されない。義務教育費国庫負担金の国庫負担率を三分の一から二分の一に復元する。教職員定数削減計画を中止し、増員をはかり、国として「三〇人学級」実施を計画的に進める。特別支援教育に必要な教職員などの人員配置を抜本的に引き上げる。図書館、学校図書館の資料費、整備費等を拡充する。学校耐震化にたいする国庫補助率を抜本的に引き上げる。

 子ども・学校間の競争を強い、学力向上にも逆行する全国いっせい学力テスト、教員への国家統制を強めかねない教員養成・免許制度改革推進事業をやめる。

 国立大学運営費交付金、私立大学・私立高校への助成を増額し、学費の軽減をはかる。所得に応じた高校・大学学費の減免制度を拡充し、無利子奨学金の拡大、返還なしの給付制の導入など奨学金制度の充実をはかる。

 各地で受給者締め出しなどをもたらしている就学援助の一般財源化をやめ、国庫補助金を全面的に復活するとともに、低所得者の増大、単価増などの実態に応じて大幅に増額する。

 子どもの医療費の無料化を国の制度として実施する。子育ての経済的負担を軽減するため、第一子・第二子の児童手当を小学六年生まで月額一万円に倍増する。

 保育所の増設、保育士増員のための児童施設整備費などの予算、学童保育への運営補助金を増額する。児童相談所の拡充、児童福祉士を増員する。                 

中小企業

 日本経済の主役・中小企業の減少がつづき、〇六年は倒産件数も増加し、政府自身が「中小企業では未だ景気回復を実感するにはほど遠い」(中小企業庁)といわざるを得ない事態が続いている。中小企業経営に直結する国民のふところを冷やす庶民増税や社会保障改悪を中止するとともに、中小企業予算を一般歳出の二%程度まで増額する。

 中小企業の経営を広く直接に支援する施策、大型店の出店規制と商店街振興の推進、公共事業の生活密着型への転換と分離・分割発注による中小企業への受注確保、中小企業の資金繰りの円滑化などをはかる。

 モノづくり中小企業向け予算を増やし、異業種交流、ネットワークづくり、産学官の連携による人材育成、技術相談、販路開拓などを支援する。下請や仕入単価を買いたたく大企業の横暴を規制する。

 商店街・まちづくりへの支援は、国の認定制度を自治体の認定・支援策にあらため、すべて地域住民と自治体が自主的な判断で取り組めるようにする。

 中小企業への資金供給のパイプを狭くする、信用保証制度や地方自治体の制度融資の改悪、政府系金融機関の統廃合を中止し、低利・長期・固定の政策金融を大幅に改善する。ヤミ金などをきびしく取り締まるとともに、緊急に資金を必要とする人を対象に生活福祉資金などのセーフティーネットを抜本的に拡充する。

 赤字の中小企業に一方的に税負担を押しつけることになる、特定の同族会社の役員給与の損金不算入制度は、一部見直しではなく廃止する。

農業・食料

 国民の多数が食料自給率の引き上げを望んでいるにもかかわらず、依然として米の値下がりが続くなど、農家の経営基盤の弱体化がすすんでいる。再生産ができる農業収入に近づけるために、価格・所得保障を実施すべきである。

 大規模な農業経営のみを支援する品目横断的経営安定対策をやめ、やりたい人、続けたい人が農業をできるよう、大豆交付金と麦作経営安定資金助成金を復活させるとともに、自給率向上に不可欠な飼料増産のための予算を抜本的に増やす。農業予算における灌漑排水事業や農道建設などの多額の公共事業予算を見直し、財源を確保する。

 拡大が懸念されている鳥インフルエンザの予防策を強めるため、家畜伝染病予防費を増やし、移動制限区域内の損失補償を食用鳥の加工施設や、ブランド化していない地鶏・地卵へも拡大するとともに、現行の国負担の割合を二分の一から三分の二に引き上げる。

 増加する輸入食料にかんして、水際での安全性の検査を徹底するため、検査官の大幅な増員を図る。遺伝子組み換え作物の安全性の検査や周辺環境への影響調査を強化する。

消費生活の安全

 ガス瞬間湯沸かし器や石油ファンヒーターによる死亡事故、携帯電話の電池の異常発熱など、商品の欠陥で消費者が安全や財産を脅かされる事態が多発している。国民生活センターや製品評価技術基盤機構などの体制を強化し、製品事故の情報収集や生活用品の検査を充実する。期限切れの材料をつかった食品販売、自動車メーカーによる欠陥隠しや建築物の耐震偽装など、安全性をめぐるモラルハザードは深刻であり、行政による点検・監督体制の強化をはかる。

環境・エネルギー

 アスベストの被害調査のための住民や労働者を対象とした健康診断の推進・継続のために予算を増やす。アスベストを使用した民間施設の解体を促進するための予算を確保する。

 水俣病の調査予算の大幅増額によって、新潟水俣病をふくむ水俣病の被害の全容を明らかにし、すべての被害者を救済する。ぜん息・肺気腫など、大気汚染患者の救済に国が踏み切る。そのさい、医療費保障にとどまらず生活保障も考慮すべきである。

 原発の危険性を増幅するだけのプルサーマル計画を中止する。六ヶ所再処理工場をはじめ核燃料サイクル施設の総点検を実施するとともに、同計画の中止に踏み出していく。データ改ざんをおこなった電力会社についても総点検をおこなう。プルサーマル実施を受け入れたり、高レベル放射性廃棄物の最終処分場に応募すれば、手厚い補助金を自治体に出すやり方は、住民の安全を補助金と引き換えにするものであり、やめるべきである。高速増殖炉もんじゅの運転再開を中止し、原子力推進に偏重したエネルギー予算を抜本的に見直し、自然エネルギーに予算を振り向ける。
 地球温暖化問題の研究・対策に本腰を入れる。

災害

 測候所の無人化計画を撤回し、火山をはじめとした観測・監視体制を強化する。市町村の消防職員が国の基準に照らしてさえ五万人も不足している事態を解消するなど、地域の防災力強化のための具体的手立てをとる。災害のさいの避難先である学校をはじめ、住宅や建築物の耐震改修を急ぐ。被災者生活再建支援制度については、住宅本体の改修・建築も支援対象とするなど、すべての被災者に実効ある支援ができるよう支援対象と要件の見直しを急ぐ。

(3)米軍・自衛隊の再編合意を撤回し、海外派兵型軍隊づくりと基地強化をやめる

 日米両政府がすすめる米軍と自衛隊の再編は、アメリカの先制攻撃戦略にもとづいて、日米軍事同盟を地球規模の侵略的な軍事同盟につくりかえるものである。日米が共通の戦略目標をもち、司令部から基地使用、情報・通信、演習にいたるまで米軍と自衛隊を一体化させ、基地機能の抜本的強化と固定化をすすめようとしている。

 五兆円近い軍事費は、そのねらいを各分野で具体化するものである。
「米軍再編関係経費」は、昨年の日米合意に基づき、沖縄の新基地建設や海兵隊「移転」の名によるグアムの米軍基地増強、キャンプ座間や横田基地における日米司令部機能の一体化、岩国基地への米空母艦載機部隊の移転、米軍機の訓練「移転」などに着手するためのものである。再編への協力を関係自治体に強要するための「再編交付金」制度やグアム基地増強の費用を日本が負担するための「米軍再編促進特措法」などの成立をねらっている。日米合意は撤回し、再編予算を削除すべきである。

 昨年の自衛隊法改悪と防衛省法にもとづいて、海外活動を自衛隊の「本来任務」とし、本格的な海外派兵体制づくりがおこなわれている。海外派兵の計画・訓練・指揮を一元的にになう陸上自衛隊「中央即応集団」の中核部隊「中央即応連隊」の新編を中止する。「日米防衛課」「米軍再編調整官」の新設など、日米軍事一体化をささえるための軍事行政機構作りを中止する。海外派兵型装備の導入・開発をやめる。

 「ミサイル防衛」は、アメリカの先制攻撃戦略の一翼をになうものであり、関連予算を削除する。

 ブッシュ政権のイラク戦争、対「テロ」戦争の破綻は明らかであり、イラク、インド洋から自衛隊をただちに撤退させる。

 日米地位協定上、日本に負担義務のない米軍「思いやり」予算と沖縄の米軍基地たらいまわしをすすめる「SACO関係経費」を全額削除する。

(4)地方交付税の一方的な削減と制度改悪をやめ、地方財源を拡充する

 政府は、「地方歳出を厳しく抑制する」として、生活保護費の削減や職員定数の大幅削減などを見込んで、地方交付税を七千億円も削減しようとしている。地方交付税の削減や、「集中改革プラン」の策定・公表など自治体リストラの押しつけを中止し、教育や福祉など暮らしに身近な職員の必要な体制を確保する。

 〇七年度から導入されようとしている、人口と面積を基本とする「新型交付税」と、行革や製造品出荷額、出生率などの成果指標を算定に反映する「がんばる地方応援プログラム」が、条件不利地域の自治体に危惧を広げている。自治体間の格差を拡大する恐れがあり、国の政策誘導に利用する制度改悪は撤回すべきである。

 政府は、〇七年度も二・六兆円もの臨時財政対策債の発行を予定し、地方自治体に借金を押しつけようとしている。このような借金の押しつけをやめ、国の責任で必要な地方財源を確保し、全国の自治体が教育や福祉、雇用と地域経済の振興など、独自の取り組みを強化できるようにする。

(5)むだを削り、「応能負担」税制を再構築して、真の財政再建にふみだす

 格差と貧困を是正するために、財政の果たす役割が今日ほど求められているときはない。政府は、「財政再建」の看板で庶民増税や社会保障予算の切り捨てを進めようとしている。これは財政がほんらい果たすべき役割を放棄するものであるとともに、家計を冷え込ませて景気に悪影響を与え、財政再建自体をも困難にするものである。しかも「参議院選挙が終わったら消費税増税」にふみだそうとしている。これは、大企業へのさらなる減税のつけを庶民・消費税増税に回そうとするものであり、断じて容認することはできない。いまこそ、歳入・歳出の両面で大胆に浪費にメスを入れ、税・財政のゆがみを改めることによって、国民の暮らしのために必要な財源を確保しながら、財政再建への一歩を踏み出すべきである。

大企業・大資産家への減税を中止し、応分の負担を求める

 政府は、減価償却制度の見直し(平年度ベースで七千億円以上)や、証券優遇税制の延長(〇六年度補正後ベースで一兆円以上)など、大企業・大資産家への減税をさらに拡大しようとしている。庶民への定率減税廃止による増税分(一・七兆円)が、そっくりそのまま、この減税につぎ込まれる計算になる。「庶民から吸い上げて大企業と金持ちにばらまく」こうした減税を中止する。研究開発減税やIT投資減税をはじめ、連結納税制度など、大企業向けの優遇税制にメスを入れ、史上空前の利益をあげている大企業に応分の負担を求める。

大型公共事業や軍事費などのむだを削る

 スーパー中枢港湾、大都市圏環状道路、巨大ダムなど、大型公共事業の浪費にメスを入れ、公共事業の構造を転換する。特別会計のむだの根源になっている道路特定財源や電源開発促進税などの特定財源制度を廃止して、一般財源化して、社会保障などの財源にも充てられるようにする。

 五兆円規模にのぼる巨額の軍事費を大幅に削減する。国民の血税を政党が分け取りする政党助成金は、ただちに廃止する。


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