日本共産党

2007年参院選 個別・分野別政策/くらしと経済

【3】労働・雇用

人間らしく働けるルールを確立します

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 数字のうえでは失業率が「改善」していますが、実態は、働いても働いてもまともなくらしのできない「ワーキングプア」が社会問題化するなど、不安定で低賃金の非正規雇用労働者が構造的に増大しています。パート、派遣、契約などで働く労働者は3割を超え、女性では過半数を超えます。雇用の入り口での青年非正規労働者の増大がそのままもち上がり、2021年には「中高年フリーター」が150万人の規模になるとの予測もあります。低年金・無年金のために働かざるをえない60歳代の労働者の雇用問題も深刻で、6〜7割が低賃金不安定雇用です。

 正社員でも、長時間過密労働などの過酷な労働条件の職場が増え、脳・心臓疾患やメンタルヘルスが年々増大し、せっかく正社員になれたのに退職する青年が後をたちません。

 いまや大企業は、首切りと非正規雇用への置き換え、長時間過密労働を、利潤を拡大する主要な手段としているのです。しかし、それが職場秩序と「現場力」をいちじるしく破壊し、相次ぐ重大事故や「不祥事」の原因ともなっていることは、財界も認めざるをえなくなっています。それはまた、個人消費の冷え込みや少子化、家庭と地域社会の崩壊など、さまざまな社会問題をひきおこしています。雇用・労働問題の改善は、いま、日本の経済・社会にとって緊急で最重要の課題となっています。

 労働法制や経済・産業法制を改悪し、ヨーロッパに比べてもともと弱かったルールを次々と後退させて大企業のリストラを応援してきた「構造改革」を転換し、人間らしく働けるルールを確立するときです。

正規・非正規の均等待遇のルールを確立し、正社員化をすすめます

 日本を代表する大企業で横行する「偽装請負」=派遣法違反の賃金ピンハネが、ワーキングプアの原因の1つとしても注目を集めました。日本共産党は国会でも偽装請負を繰り返し告発し、2度にわたって厚労省に是正通達を出させました。「偽装請負」をきびしく取り締まり、違法に受け入れた企業の責任で直接雇用化、正社員化させます。働きはじめたときにさかのぼって、労働条件を保障させます。

 「偽装請負」問題の大本に、受け入れ企業が雇用責任をもたない労働者派遣の急拡大があります。労働者派遣は臨時的・一時的な場合に限定し、正規雇用の代替にしないという原則にたって、派遣労働者に直接雇用化、正社員化への道を開きます。派遣先企業は、1年以上経過したら、正規雇用を申し出る義務を負うようにします。派遣労働者への不当な差別や格差をなくします。「携帯派遣」「デジタル派遣」などといわれる「日雇い派遣」も、ワーキングプアをつくりだしています。「日雇い派遣」に社会保険加入の道を開きます。労働者派遣事業法を「派遣労働者保護法」に抜本的に改正し、派遣先業種の制限、均等待遇をすすめ、登録型派遣による日雇い型雇用をなくしていきます。

 ヨーロッパでは、同じ仕事なら均等待遇は当たり前、違うのは時間だけという「同一労働同一賃金」の原則が確立しています。しかし日本では、「正社員と同じ仕事をする短時間勤務社員がいる」企業の割合は8割以上にのぼりますが、そのうち半数以上が処遇の「均衡」が考慮されていません。

 パート労働者の賃金は正社員の半分、女性正社員の賃金は男性正社員の6割強、女性パートの賃金はその女性正社員の7割程度にすぎません。パート・非正規の低賃金を利潤の源泉にすることをゆるしてはなりません。日本共産党は、賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件の均等待遇と正社員への道の拡大をめざし、「パート・有期労働者均等待遇法」を提案しています。

 賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件について、労働者がパート・有期労働者であることを理由として、正社員と差別的取扱いをすることを禁止します。正社員を募集するときは、パート・有期労働者に応募の機会を優先的に与えるようにします。短期の雇用契約のくり返しを、期間の定めのない雇用契約とみなした判例を法制化します。合理的理由のない「短期・反復雇用」「契約社員」は不公正な契約として規制し、正社員に移行させます。正社員が、育児・介護などの事由のために、一定期間、パートタイム労働者として働けるようにします。「均等待遇」に違反している企業は、罰則を設けることも含めきびしく取り締まります。

 本来、労働者として企業の指揮・命令を受けて仕事をしているのに「個人請負」契約として、社会保険など労働者としての権利を奪う脱法行為も増えています。こうした違法行為もきびしく取り締まり、ILO「雇用関係に関する勧告」(198号)を活用し、請負や委託で働く労働者を保護します。

 「多様な働き方」の名で、非正規雇用の拡大をすすめる政府・財界の政策に反対します。

最低賃金を引き上げ、全国一律最低賃金制を確立します

 賃金を底支えするためには、最低賃金の1000円以上への引き上げと、全国一律の最低賃金制度の確立が必要です。最低賃金の決定基準を生計費のみとし、現行法にある企業の「支払能力」を削除します。中小零細企業が最低賃金を支払えるように、大企業の下請けいじめや規制緩和による過当競争をきびしく規制するとともに、助成措置を講じます。全労連や連合がとりくんでいる「公契約運動」(自治体の仕事を受注する企業に、人間らしく働ける賃金と労働条件を義務づけるもの)を支持します。自治体は、また、誘致する企業について正社員化の度合いや均等待遇の状況を重要な判断基準とすべきです。

ワーキングプア、失業者の生活と職業訓練を保障し、安定した仕事への道を開きます

 働いても働いても低賃金でアパートも借りられず、ネットカフェで寝泊りしながら働いている青年もいます。また、労働者は、失業すればとたんに収入が途絶え、貯蓄だけが頼りです。失業者が安心して仕事を探せるようにするためにも、雇用保険の給付期間を現在の300日から1年間まで延長します。

 安定した仕事につく機会を広げるために、専門学校なども活用して職業訓練制度を抜本的に充実させます。フランスでは、職業訓練への資金提供を企業に義務づけています。ドイツには、企業が職業訓練生を一定の報酬を支払って受け入れ、終了後は正社員として採用するという制度があります。低賃金で貯えも少なく、企業内での教育訓練の機会もなかったワーキングプアやフリーターの職業訓練を重視し、有給の職業訓練制度や訓練貸付制度を創設し、訓練期間中の生活援助をおこないます。

 「ネットカフェ難民」どころか、最近では「ファミレス難民」や「バーガー難民」まででてきています。公園の青テントから出勤している人もいます。ワーキングプアや失業者に、公共・公営住宅の建設や借り上げ、家賃補助制度、生活資金貸与制度など、生活支援を強め、子どもの教育費や住宅ローンなどの緊急助成・つなぎ融資制度を創設します。

 政府は、雇用対策に一定の役割を果たしてきた「緊急地域雇用特別交付金制度」を一方的に廃止してしまいました。国と自治体の協力による臨時のつなぎ就労の場を確保させます。また、福祉、医療、防災、教育など、国民のくらしに必要な分野が慢性的に人手不足状態にあります。この分野での雇用を、職業訓練と結びつけて拡大することは、国と自治体の重要な責任です。

異常な長時間労働を是正し、安定した雇用を拡大します

 日本では、ヨーロッパと違い、法律で残業の上限が定められていないため、長時間労働が横行しています。その労基法さえふみにじる「サービス残業」も横行しています。日本共産党は、1976年以来30年間、280回を超える国会質問で「サービス残業」は企業犯罪だと追及し、2001年には、厚生労働省に根絶のため企業が責任をもって時間管理を強化するなどを内容とする「サービス残業」根絶通達をださせました。過去5年間だけでも852億円の未払い残業代を支払わせています。

 通達を活用し、職場からのとりくみを強化するとともに、「サービス残業根絶法」を制定し、悪質な企業には、企業名を公表するとともに、不払い残業代を2倍にして労働者に支払わせるようにします。中間管理職や裁量労働制の労働者の時間管理をきちんとさせます。

 安倍内閣は、世論と労働者のたたかいで一度は「ホワイトカラー・エグゼンプション」の国会提出を断念しましたが、すきあらばとねらっています。残業代横取り、長時間労働野放し、過労死促進の「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入は絶対にゆるしません。

 「サービス残業」をなくすだけでも、新たに160万人分の雇用が生まれます。取得率が5割を切った有給休暇を完全取得すれば、148万人分の雇用が生まれます。当面、「残業は年間360時間以内」という大臣告示をただちに法定化し、残業割増率を現行25%増から50%増に、深夜・休日は100%増に引き上げます。さらに、労働基準法を抜本的に改正して拘束8時間労働制とし、残業時間を1日2時間、月20時間、年120時間に制限します。恒常的な長時間残業や有休をとれないことを前提にした生産・要員計画をなくします。深夜労働・交代制労働、過密労働をきびしく規制します。EUのように、連続休息時間を最低11時間は確保します(深夜12時まで働いたら翌日の出勤は11時以降)。こうして労働時間を抜本的に短縮し、安定した雇用の拡大につなげます。

労働ビッグバンに反対し、解雇を規制します

 日本共産党は、2003年に政府が労働基準法を改悪して「解雇自由条項」を盛り込もうとしたときに、労働者・労働組合と協力してこれをやめさせ、逆に解雇を規制する条項をはじめて盛り込ませました。さらに、「解雇規制・雇用人権法」を提案して、労働者の人権をまもり、ヨーロッパ並みの労働契約のルールの確立をめざしています。

 判例でうちたてられてきた「整理解雇4要件」(差し迫った必要性、回避努力、選定基準・人選の合理性、労働者・労働組合の合意)を法律として明文化して一方的な解雇を禁止し、裁判などで争っているときの就労権を保障します。希望退職・転籍についても、本人同意・取消権、労働組合の関与などのルールを確立します。解雇を目的としたいじめや嫌がらせを禁止し、人権侵害をきびしく取り締まります。労働基準監督署が、退職強要などを日常的に監視し、取り締まるようにします。分社化などにともなう雇用と労働条件のルールをつくります。55歳一律転籍など、年齢による雇用契約の変更や採用制限を禁止します。事業所の閉鎖、移転、縮小の際の自治体との協議の仕組みをつくります。

 政府がいまもくろんでいる、「労働ビッグバン」=お金さえ払えば首切りが自由、会社が一方的に決める就業規則での労働条件切り下げ自由という法律の制定、偽装請負の合法化などを絶対許しません。

国の労働行政を強化します

 人間らしく働けるルールを確立するために、国の労働行政の強化は不可欠です。労基署の体制強化や相談窓口の拡充などをはかります。ILO理事会の決定にそって、監督官を2倍にします。労働者の権利と雇用主の義務を知らせる広報・教育活動を抜本的に強化します。

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