日本共産党

格差拡大・負担増押しつけの小泉「改革」ストップ、国民のいのち・暮らし・雇用・営業を支える予算に
―― 2006年度予算案の抜本的組み替えを要求する〈全文〉

  2006年2月20日 日本共産党国会議員団


 いま、格差社会と貧困の広がりが大きな問題になっている。また、耐震強度偽装事件、ライブドア事件などにみられるように、ルールとモラルの破壊がすすみ、国民の安全と財産がないがしろにされている。これらの根本には、小泉内閣がすすめてきた「構造改革」路線、規制緩和万能路線がある。小泉内閣は、5回の予算編成で13兆円にのぼる、史上最悪の増税・負担増を庶民に押しつけた一方で、新規国債の発行額は170兆円にのぼる「史上最悪の借金王」になった。これは、巨大開発の無駄遣いと、大企業、大資産家への減税を温存・拡大してきたからにほかならない。

 小泉内閣は、「小さな政府」といいながら、さらなる負担増・社会保障切り捨てを押しつける06年度予算案を「改革の総仕上げ予算」と位置づけているが、これほど害悪と破たんがあらわになった政治をこれ以上つづけることは許されない。日本共産党は、小泉「改革」に終止符を打つとともに、来年度に計画されている負担増を中止し、格差拡大に歯止めをかけることなどを中心に、06年度予算案について、次の方向で抜本的に組み替えることを要求する。

1、小泉「構造改革」路線を転換し、貧困化と格差拡大に歯止めをかける

(1)国民負担増と社会保障改悪を中止する

 史上最高の利益を上げ続けている大企業とは対照的に、国民全体の所得低下がすすんでいる。1997年と比較して生活保護世帯は63万から103万世帯に、教育扶助・就学援助を受けている児童・生徒は6・6%から12・8%に、貯蓄ゼロ世帯は10・2%から23・8%に、それぞれ激増している。そして、同じ時期にサラリーマン世帯の年収は、87万円も減っている(家計調査)。

 このように国民全体の所得が低下しているときだからこそ、国民のくらしをささえる税・社会保障の役割はますます重要になっており、庶民増税をやめ、予算配分の重点を思い切って社会保障に移すことが必要である。

 定率減税の廃止を撤回する・・・政府は定率減税を全廃しようとしているが、これが実施されれば合計で3・4兆円もの増税となる。一般のサラリーマンの場合、所得税で25%、住民税で17・6%も税負担が増える。

 政府は定率減税を廃止する理由として、「景気がよくなった」、「不況対策のための臨時の措置だった」ことをあげている。しかし第一に、「景気回復」といっても、国民の生活が豊かになったわけではなく、所得は減り続けている。第二に、定率減税は「恒久的措置」として実施された。同じ法律でおこなわれた「所得税の最高税率引き下げ」や「法人税率の引き下げ」だけはそのままで、定率減税だけ廃止するというのは、まったく道理がない。このような増税はやめるべきである。

 負担増を押しつけ、公的医療保険制度を土台からくずす「医療改革法案」を撤回する・・・政府は、「医療改革法案」を提出したが、これは、高齢者医療の保険料・窓口負担増、長期入院の食費、居住費の徴収、高額療養費の負担引上げなど、高齢者を中心に国民に大きな負担増を押しつけるものである。同時に、医療費の伸びを「経済財政に均衡させる」(与党「医療制度改革大綱」)という名目で、保険医療の縮小をすすめようとしていることも重大である。混合診療や保険免責など、保険が効かない医療の拡大は許されない。誰もが公的な健康保険で医療を受けられるという大原則をくつがえし、金のないものは必要な医療も受けられない、所得格差が「健康といのちの格差」になる社会にしてはならない。受診抑制は、重症化をまねき、かえって、医療保険財政を圧迫してしまう。診療報酬の引き下げは、医療の質を低下させるとともに、差額ベッドなどの保険外負担を増やすことにつながり、おこなうべきではない。

 保険で安心してかかれる医療制度にするために、〈1〉窓口負担の引き上げをやめ、軽減する、〈2〉保険が対象とする医療サービスの縮小、切り捨てをやめ、拡充させる、〈3〉減らされてきた国庫負担を計画的に元に戻すとともに、高薬価や高額医療機器の見直しなど保険財政のムダもなくし、医療保険財政を立て直す。

 まともな年金「改革」を・・・基礎年金の国庫負担を2分の1までにただちに引上げ、年金財源の基盤強化をはかるとともに、全額国庫負担による最低保障年金制度創設の実現に向かう。「廃止」と言いながら現職議員に互助年金受給の道を残した与党のごまかしの国会議員年金「廃止」を見直し、きっぱりと国会議員年金の特権をなくす。

 介護保険料の値上げを抑え、介護サービスを改善する・・・介護保険給付費に占める国庫負担の割合を、全国市長会や全国町村会が要求しているように、5%引き上げることで、4月からの高齢者の保険料値上げを抑え、減免制度を拡充させる。また、介護報酬の引き下げをやめ、介護労働者の労働条件を改善し、「介護の質」を低下させず、向上をはかる。

 障害者福祉、生活保護など社会保障の改悪を中止する・・・昨年、政府・与党が強行した障害者自立支援法によって、障害者の福祉サービス利用料、自立支援医療費に、4月から1割の応益負担が実施され、多大な負担増が押しつけられようとしている。もともと所得が低い障害者が、生きるために必要なサービスさえも受けられなくなるという危険が現実のものになろうとしている。4月からの応益負担の実施を中止し、必要な負担軽減措置をとる。小規模作業所への支援、圧倒的に不足している施設と人材などの基盤整備をすすめる。

 生活保護世帯が急増し、生活保護制度の役割がますます重要になっている。政府がやろうとしている老齢加算の04年度から3年間の段階的廃止、母子加算の05年度から3年かけての廃止などは中止する。

(2)安定雇用の破壊と中小企業切り捨ての政治を切り替える

<安定した雇用と人間らしい働き方に>

 格差と貧困のおおもとには、年収100−200万円というような低賃金の非正規雇用の急増がある。小泉内閣の5年間で、正社員は270万人減少する一方で、パート、派遣、契約などの非正社員は287万人も増大し、全労働者の3人に1人、女性や若者では2人に1人にのぼる。しかも、厚労省の東京労働局の調査で、労働者派遣事業所、業務請負事業所の8割で法令違反が発覚するなど、非正規雇用の現場は「無法地帯」になっている。こうした安上がりで、使い捨ての雇用を最大限に活用して、大企業は、史上最高の利益を上げ続けているが、不安定で低賃金の非正規雇用の急増は、青年の生活と未来を破壊し、技術や仕事の伝承を困難にし、急激な少子化、年金をはじめ社会保障制度の空洞化など、日本社会の深刻な問題を引き起こしており、この解決は急務となっている。

 非正規雇用を拡大させる労働法制の規制緩和路線から、安定した雇用の確保を大原則とする雇用政策に転換する。非正社員への差別の禁止と賃金はじめ労働条件の格差を是正するとともに、労働基準法をはじめ労働法制を非正社員にも厳格に適用し、横行している違法・脱法行為を根絶する。

 政府の「若者自立・挑戦のためのアクションプラン」は、関連予算を厚労省、文部科学省などの関係省庁からかきあつめても、わずか761億円にすぎず、ヨーロッパ諸国の10〜40分の1(GDP比)というお粗末さである。若者雇用対策予算を大幅に増額するとともに、職業訓練中の生活保障、安定した雇用の拡大などを抜本的に強化する。

 非正規雇用が拡大する一方で、1人で2人分も働かされる長時間労働もいっそう深刻になっている。長時間労働・サービス残業をなくし、人間らしく働くという当たり前の条件を確保するとともに、労働時間の適正化による新規雇用の拡大をすすめる。政府と財界がすすめようとしている労働時間の規制緩和に反対する。

<中小企業予算を大幅に増額し、経営基盤の強化を支援する>

 小泉内閣は、中小企業予算を減らし続けてきたが、来年度予算では、「三位一体改革」による補助金削減分を含め、前年度比113億円減の1616億円に切り下げられた。こうしたやり方をあらため、激しい価格競争や下請単価たたき、原材料費の上昇などで、引き続き、厳しい経営環境にある中小企業の経営基盤を強化するために、中小企業予算を大幅に増額する。

 小泉内閣の金融政策によって、銀行の中小企業向け貸出は大きく減少させられ、中小企業の経営を圧迫している。ところが政府は、いまも地方銀行をはじめ地域金融機関の再編・淘汰をいっそう強化し、その上、政府系金融機関の統廃合によって、中小企業金融公庫、国民金融公庫などの中小企業金融をさらに縮小させようとしている。乱暴な地域金融機関の統廃合や中小企業向け政府系金融機関の縮小・廃止を中止し、中小企業と地域経済への円滑な資金供給をはかる。信用保証制度の改悪を許さず、信用保証協会への国の補助金を増額して財政基盤を安定させる。中小同族会社の役員報酬の損金算入制限は、赤字の中小企業にまで一方的に負担を押しつけるものであり、撤回すべきである。

 1998年の大店法廃止など大型店の出店自由化は、身勝手な出退店によって、商店街に大打撃を与え中心市街地の空洞化などをもたらしただけでなく、深夜営業や交通渋滞、騒音、住環境の悪化など、地域経済と社会に深刻な影響をもたらした。全国の商業者や自治体、住民からの大型店への規制を求める大きな世論を政府も無視できなくなり、今国会に大型店の出店地域を制限する都市計画法改定案を提出した。これは政府が大型店を野放しにしてきた規制緩和路線の破綻を示すものである。しかし、この法案での大型店出店制限は限定されたものであり、問題点も多く残されている。大型店の出退店は、「まちづくり」の根幹に関わる問題であり、その出退店ルールは、自治体と住民の自主的な判断でできるようにすべきである。

(3)国民の安全と財産をないがしろにする規制緩和万能路線を見直す

 ライブドア・証券市場分野・・・ライブドア事件の根本には、「貯蓄から投資へ」の大方針のもと、マネーゲームをあおってきた小泉内閣の規制緩和万能路線がある。この路線は、大手金融機関や内外の投資ファンドに都合のよい「自由」な金融市場をつくりだす一方で、多くの国民を金融被害にさらしている。

 いま必要なことは、マネーゲームをあおり、企業実態や企業業績などと無関係に株価つり上げを可能にする証券市場の規制緩和や証券優遇税制など、経済と市場をゆがめてきた規制緩和万能路線を見直すことである。06年度予算案では、証券取引等監視委員会の経費の増額も検討されているが、事後規制に偏重した現在の金融行政を改め、事前規制も含めた総合的規制を行う必要がある。預金や保険等もふくめた包括的な「金融サービス法」を制定することをはじめ、業界や金融商品のあり方、情報開示、監督・監視体制、罰則などについて、規制緩和の弊害をふまえて総合的に改善する。

 耐震強度偽装事件・・・この事件の根底には、1998年の建築基準法改悪で建築確認の仕事を、「官から民へ」といって民間検査機関に「丸投げ」できるようにした規制緩和があった。これによって「安さ」と「速さ」の競い合いがおこり、「安全」は置き去りにされてしまった。

 政府が打ち出した被害者「救済策」は、現行制度の枠内のものにすぎず、被害者が多大な二重ローンに苦しむなど、きわめて不十分である。被害者救済のためには、ヒューザーなど当事者に第一義的な責任を果たさせることは当然であるが、同時に、住宅ローンを貸し付けた金融機関、工事を請け負ったゼネコン、デベロッパーなど不動産業界の負担と協力で、被害者の負担を軽減することである。そのうえでなお不足する費用については政府が補償すべきである。耐震診断、改修への助成制度を改善・拡充し、希望するどのマンションでも耐震診断、改修がおこなえるようにする。

 再発防止のために、建築基準法を抜本的に見直し、建築士が建築主や施工主の言いなりにならないよう建築士法などを改正する。民間まかせの検査・確認体制を見直し、行政が検査・確認業務に実質的な責任を負えるよう体制を強化する。

(4)暮らしと国民経済の基盤強化にふみだす

 消費者・食料・農漁業・・・政府の関連団体の調査でも、消費者が生活用製品にかかわって事故にあう件数が、この5年の間に2・5倍も急増している。消費者行政でも「事前規制」から「事後救済」への転換が持ち込まれたが、消費者の権利保障と救済は弱いままである。製造物責任法の挙証責任を消費者側ではなく、企業側に義務づけるとともに、消費者の団体訴権を一日も早く保障し、損害賠償を請求できる制度とすべきである。

 最高裁は、利息制限法の制限利息(年15〜20%)を超えて出資法の上限金利(29・2%)いっぱいまで利息を取ることを認めない判決を下した。多重債務者が200万人ともいわれ、破産者が年間20万人にも達する状況を直視し、判決にもとづいて貸し金業の適正化をはかり、出資法の上限金利を利息制限法の制限利息まで引き下げるとともに、制限利息そのものの引き下げをはかる。

 食の安全のため、「予防原則」にたって、食品添加物や残留農薬、遺伝子組み換え食品の安全性の検査を強化し、消費者への表示を徹底させる。

 世界的に食料不足が心配されているもとで、政府は米の需給と価格を安定させる役割を果たすべきである。不要な米の輸入を削減するとともに、政府の100%拠出による不足払い制度を創設し、米の品質の向上を図りながらコストにみあう生産者の目標価格(60キロあたり平均1万8000円程度)に近づける。ごく一部の大規模経営だけを対象にする新たな経営安定対策の導入を中止し、続けたい人・やりたい人を担い手に位置づけ、農産物の価格・所得補償を充実させる。水産資源の保全・管理を国の責任ですすめ、漁業の振興をはかる。

 BSE問題・・・アメリカのずさんな対応が明るみに出た以上、アメリカに対して対日牛肉輸出の前提として全頭検査の実施や、全年齢牛の危険部位の除去、飼料規制など日本と同等のBSE対策を、再度要求すべきである。BSEのみならず鳥インフルエンザなど増加する感染症に対処するには、農水省・厚労省の関連部門の人員も予算も少なすぎる。食肉輸出国にたいする事前事後の検査体制や、輸入される食品・動物に関する水際の検疫体制も強化する。

 環境・・・プルサーマルなど危険な核燃料サイクル計画の推進をやめ、自然エネルギーの開発・利用を抜本的に拡大する。

 大気汚染による患者や水俣病の患者をはじめ、すべての公害被害者の救済を先延ばしにするのではなく、被害者の声に耳を傾け救済を本格的に急ぐ。

 見直し作業中の容器包装リサイクル法については、同法の制定後にできた循環型社会形成推進基本法で定めた廃棄物対策の原則にもとづき、再生利用より優先する発生抑制や再使用の観点を盛り込み、拡大生産者責任を徹底し、収集・選別・梱包費用を自治体負担ではなくメーカーを含む原則事業者負担とするよう改正すべきである。

 災害・・・昨年来の豪雪によって、自治体は対応に追われ住民は疲れきっている。除雪費への国庫補助の増額や、除排雪の負担増への地方交付税のいっそうの加算、除排雪が困難な住民の支援措置を講じるべきである。阪神・淡路大震災から近くは新潟県中越地震や福岡県西方地震、風水害など被災者の生活再建のためには、住宅の再建そのものに公的支援を行う仕組みが不可欠である。被災者生活再建支援法の抜本的な改正を行う。まちづくりそのものを、開発優先から防災を重視した住民参加型に転換し、開発や土地利用の変更にあたって、災害に対してどのような影響があるかを事前にチェックする防災アセスを実施する。

 アスベスト問題・・・アスベストの危険性は、40年以上前にアメリカで指摘され、日本の政府も70年代には認識していたにもかかわらず、規制せず放置してきた国の責任は重大である。アスベスト健康被害救済法が成立したが、これはまったく不十分である。国と企業の責任を明確にし、給付水準も労災と同等にする、石綿健康被害給付基金への中小・零細事業者の拠出を軽減する――などの見直しをただちにおこなう。また、既存の住宅からのアスベスト除去をすすめるためにも、調査や除去費用への助成制度を国がつくる。

 教育・子育て・・・文科大臣も昨年の一時期、30人学級の必要性を認めたにもかかわらず、総人件費削減方針のもとで、教職員定数改善計画を期限切れのまま放置していることは、子どもたちをめぐる深刻な状況を考えれば、きわめて重大な問題である。定数改善計画を復活させ、国の責任で30人学級を実施し、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動症)、高機能自閉症などの子どもへの特別支援の体制を確立する。

 異常な長時間労働や、妊娠・出産による差別をなくし、派遣労働者を含めて育児休業が取得できるようにするなど、仕事と子育ての両立をはかる。安上がりの民営化促進や定員超過の詰め込みをやめ、必要な保育所の増設・拡充をはかる。

 子育ての経済的負担を軽減するため、第1子、第2子の児童手当を月額1万円に倍増する。乳幼児医療の無料化を国の制度として実施する。教育扶助と就学援助の単価・対象の拡充、高校・大学の授業料免除の拡大をはかり、教育における格差の拡大を緩和する。国立大学の基礎的な教育研究費である運営交付金の削減をやめ、増額する。私学助成を増額し、高学費の値下げ、教育研究条件の向上をはかる。

 学童保育、子どもの安全対策のための人員配置、スクールバスなどへの財政支援措置を拡充する。児童虐待防止のため、相談窓口の整備、児童福祉士など児童相談所職員の抜本的増員、児童諸施設の改善など体制を強化する。学力形成に役立たず、不毛な学校間競争をあおる「全国学力テスト」関連予算を全額削除する。ヨーロッパに比べ低い文化予算の削減をやめ、増額をはかる。154億円もの累積赤字(04年度決算)をかかえているサッカーくじを廃止し、スポーツ振興予算を拡充する。

(5)「三位一体の改革」の名による地方切り捨てを許さない

 「三位一体の改革」によって、国から地方への財政支出が削減され、自治体の財政が圧迫されている。国庫補助負担金の削減は5兆2000億円にのぼったが、地方への税源移譲は3兆円、交付金は8000億円にとどまった。税源移譲・交付金の合計3兆8000億円のうち、地方自治体の裁量を広げたものは、5000億円程度にすぎない。しかも地方交付税は、3年間の合計で5兆円以上削減された。

 こうして小泉内閣がすすめた「三位一体の改革」が、「地方分権」や「地方の自由度を高める」とは名ばかりで、国の責任の後退と地方財源の削減にほかならないことが明らかになった。これは「改革でも何でもない」と地方自治体からも批判の声があがっている。

 地方自治体財政の自主性・自立性の拡大のために、財源不足を補てんする交付税率の引き上げなど、必要な交付税総額の確保がどうしても必要である。政府は、交付税の生命ともいうべき財源保障の機能の縮小・廃止や生活保護などの国庫負担率引き下げなどを狙っているが、このような地方切り捨ては絶対に許されない。自治体リストラの押しつけをやめ、地方財政と地方自治の拡充をはかる。

2、米軍基地再編・強化のための国民負担増を撤回し、大幅な軍縮をすすめる

 日米両国政府は、地球的規模で先制的軍事介入能力を強める「米軍再編」の一環として、日米同盟をさらに侵略的に強化しようとしている。日米が共通の戦略目標をもち、司令部から基地使用、情報・通信、演習にいたるまで米軍と自衛隊を一体化させ、先制軍事介入に際して共同で作戦できるようにするのが、日米両政府のねらいである。そのために、東京横田基地における米軍と自衛隊の司令部機構の統合=「共同統合運用調整所」の設置、キャンプ座間への米陸軍新司令部の移転と陸上自衛隊=中央即応集団=司令部の設置、岩国基地への米空母艦載機の移転、沖縄海兵隊の新基地建設などがすすめられようとしている。

 5兆円近い軍事費は、そのねらいを各分野で具体化するものである。日米同盟再編にかかわる以下の予算は、すべて撤回すべきである。

 まず、米軍の軍事行動に即応する自衛隊の態勢づくりにかかわる予算である。06年度予算案では、「中央即応集団」編成が開始されることになっている。「中央即応集団」司令部の建設、その傘下の「国際活動教育隊」の新設などを中止する。

 また、いわゆるミサイル防衛にかかわる予算である。これは、軍事介入の際に相手国のミサイルを日米共同で撃破するものである。06年度予算案に盛り込まれたイージス艦へのミサイル防衛システムの導入、ミサイルを探知する新型レーダーの導入などの予算を削除する。

 さらに、海外派兵を主目的とした新装備、新兵器の導入のための予算である。一一機のヘリコプターを搭載でき海外の作戦時に拠点の役割をになう二隻目のTヘリ空母Uの導入をやめる。

 そして、米軍「思いやり」予算と沖縄基地再編費用(SACO関係経費を含む)である。「思いやり」予算とSACO経費は、ほんらい日本に支払い(負担)義務のないものであり、全額削除する。これらの経費は、「米軍再編」のもとで、先制軍事介入を支援する予算である。そのうえ、1兆円ともいわれるグアムへの米軍移転費負担まで検討されていることは重大であり、直ちに中止すべきである。また、これらの基地・施設建設経費が談合により大幅水増しされていることが防衛施設庁談合事件により発覚しており、この際、すべての基地・施設建設契約の総点検と真相の徹底解明を強くもとめる。

 イラク、インド洋への自衛隊派兵費用の支出もやめるべきである。

 アメリカに追随し、軍事力を強化することによってアジアに対応するという道は、きっぱりと放棄すべきである。日本は、アジア諸国との平和、友好の道をすすみ、いかなる問題も平和的な話し合いの場で、道理ある主張を貫いて解決することに徹することが求められる。その前提として、アジアに対する侵略の過去への反省を明確にし、それに反する首相の靖国参拝をおこなってはならない。

3、庶民増税路線ではなく、税・財政のゆがみをただして、くらし・社会保障の財源を確保する

 小泉首相は、「国債発行を30兆円以内に抑えた」ことを自賛しているが、これは定率減税の廃止や医療改悪、地方交付税削減などによって、国民と地方自治体に負担をかぶせた結果にすぎない。本来メスを入れるべき浪費には、ほとんど手がついていない。政府は「歳出・歳入一体改革」の名のもとに、消費税増税を含むいっそうの大増税と社会保障切捨てなどの計画を作成しようとしているが、このようなことは断じて許されない。いまこそ、歳出の浪費に抜本的にメスを入れるとともに、大企業や高額所得者向けなどの優遇税制を見直し、税・財政のゆがみを改めることによって、国民の暮らしのために必要な財源を確保するとともに、将来も安心できる財政の安定化に向けた一歩を踏み出すべきである。

<大型公共事業、特別会計のムダなど歳出の浪費をなくす>

 政府は採算の見込みのたたない高速道路の全面建設を推進し、06年度も「直轄高速道路」に2000億円をつぎ込もうとしている。こうした浪費をはじめ、関空二期工事、スーパー中枢港湾、巨大ダム事業など、社会情勢の変化や住民の反対も省みずに推進されている大型公共事業に抜本的にメスを入れ、ムダを改める。

 政府の「特別会計改革」は統合などによる数合わせにすぎない。特別会計のムダの根源になっている道路特定財源や電源開発促進税などの特定財源制度をやめ、一般財源化して、社会保障などの財源にも充てられるようにする。

 行政は、民主的・効率的であるべきであり、国民からみてムダな仕事を整理するのは当然であるが、日本の公務員は対人口比で諸外国より少ない。国民サービスの低下をまねく、やみくもな公務員削減はおこなうべきではない。

 防衛施設庁の発注工事の談合事件は、高級官僚の天下り先を確保するために事業を割り振るという浪費の構造を明らかにした。天下りの禁止はもちろん、事件の真相を徹底解明し、談合による工事費の水増し分はもちろん、事業そのものの必要性の見直しを含めて、こうした浪費に徹底的にメスを入れる。

 国民の血税を政党が分け取りする政党助成金は廃止する。

<大企業・大資産家優遇税制をやめる>

 政府は、庶民には増税を押しつけながら、大企業の法人税率や所得税の最高税率は、99年に行われた引き下げ措置を「恒久化」し、研究開発減税やIT投資減税も形を変えて継続している。「景気がよくなった」というなら、史上空前の利益を上げ、巨額の余剰資金を抱えている大企業にこそ、もうけ相応の負担を求めるべきであり、こうした減税措置を中止する。

 株式配当や株式譲渡所得に対する税率を、預貯金の利子所得の半分に下げるという減税措置は、金持ち優遇の不公平税制であるとともに、「額に汗して働くよりも株を買え」という風潮を生み、ライブドア事件に象徴される社会のゆがみをもたらしており、ただちに改めるべきである。


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