日本共産党

安全、快適で長持ちするマンションをめざす提言

2005年6月23日
日本共産党中央委員会・団地マンション対策委員会

 分譲マンション(以下、マンション)は、全国で460万戸をこえて増えつづけており、約1200万人が暮らす場です。都市における主要な居住スタイルの一つとなり、戸建て住宅取得までの「仮のすみか」ではなく、「終のすみか」と考える人も増えています。

 マンションは「持ち家」とは言っても共同住宅であり、戸建て住宅とは条件が異なります。たとえば、バリアフリー化や住宅の耐震化など、住環境の改善でも、戸建て住宅では「持ち家」の外は行政が責任を持ちますが、マンションでは、廊下や階段などは居住者(区分所有者)全員の共有物ということで、居住者まかせにされています。

 また、マンションでは、騒音やペットなどのトラブル解決から、給排水管など共用部分の維持管理、積立金の保管・運用なども、居住者全員で管理組合をつくって、とりくまなければなりません。管理会社に委託する場合でも、契約内容の検討や業務の点検は、管理組合の仕事です。ところが、このような管理の問題については、マンション居住者にさえ十分に理解されておらず、その大きな負担にたいして行政の支援もほとんどありません。

 「都市再生」というのなら、大型開発に巨額の予算をつぎこむのではなく、都市における居住の快適性や住環境を守る住民自身の運動を支援することこそ必要ではないでしょうか。いまこそ、マンションの住環境の改善や、維持管理の負担軽減のために行政の支援を拡充し、関係する法律を改善すべきです。

 日本共産党は、1980年代から「住まいは人権」「マンションは住民が主人公」という立場で、国会や地方議会などで、マンション住民のみなさんと力をあわせて、さまざまな問題の解決にとりくんできました。現在も以下のような改革が必要だと考えており、みなさんと一緒によりよいマンションライフの実現をめざします。

1、マンションの地震対策をすすめます

 阪神大震災だけでなく、中越地震や福岡西方沖地震でも、マンションに被害が出ています。居住者の不安にこたえ、マンションの地震対策をすすめます。

 耐震診断・耐震改修への助成──81年に耐震基準が改正される以前につくられたマンションで、一階が駐車場などのピロティ形式のマンションは、耐震性に問題がある場合が少なくありません。耐震診断を受けやすくするための補助や、耐震型の優良建築物等整備事業の補助率の引き上げなど、耐震改修への助成を国や自治体が強めるべきです。

 建物の性能や安全基準の見直し──現在の耐震基準は、”震度7以上では、建物倒壊を免れればよい”というものでしかなく、福岡西方沖地震などでは、最新の耐震基準を満たすマンションにも被害が生じました。被災後にも居住者が生活を継続できるように、建物の性能や安全にかかわる基準を総合的に見直します。

 耐震ドアへの助成──避難路の確保は不可欠の課題です。今後建設されるマンションは耐震ドアの採用を義務化し、既存マンションでは耐震ドアへの改修に助成をします。

 家具の固定をすすめる──被災マンションで亡くなったり怪我をされた方の多くが、家具の転倒などによるものです。地方自治体として、このような情報を居住者に提供し、高齢者世帯などには、地元の大工さんへの家具固定の依頼にも助成を行うなどの支援をおこないます。

 被災マンションの補修への支援──被災マンションの補修にかかわる法令や地震保険を改善し、建て替えにくらべて貧弱な助成制度も充実させます。マンションの被災度判定は、外観だけでなく、各戸の状態など実態を反映したものにあらためます。

2、バリアフリーや省エネ対策など、共用部分などの改善を支援します

 マンションを快適な住まいとして維持するには、社会全体の住宅水準の向上にあわせた建物の改善が欠かせません。バリアフリー化や省エネ対策など、社会的な要請にも合致するものを重点に、マンションの共用部分にたいする助成制度などを充実します。

 共用部分のバリアフリー化の支援──階段、廊下など、共用部分のバリアフリー化は切実な課題ですが、国の助成制度がありません。マンション住民の要望で一部の自治体がはじめたエレベーターやスロープ設置にたいする助成の拡充、普及につとめます。

 外断熱改修などへの支援──建物を外側から断熱材で覆う外断熱の改修は、構造躯体の保護を強化して建物の寿命をのばすとともに、コンクリートの蓄熱性を利用して冷暖房コストを低減し、結露やダニ・カビ対策にも有効であるとされています。外断熱による改修や、窓の高気密化などに助成を行うなど、省エネ対策への支援をすすめます。

 屋上などの緑化工事への助成──都市のヒートアイランド化にたいする抑止効果が期待される屋上などの緑化工事を管理組合がおこなう際に、自治体として支援します。巨木をはじめ、植栽の維持管理についても実態にみあった支援をおこないます。

 「団地再生」のモデルプロジェクト実施──1960年代、70年代に公団等が分譲した団地型マンションは老朽化がすすみ、今後への不安が高まっています。一括建て替えだけでなく、一部建て替えや増改築、二戸一戸化による居室の拡大など、住民が主人公となって団地を再生する手法の開発や法整備に、政府はモデルプロジェクトを通じてとりくむべきです。

3、管理組合のとりくみなどを支援します

 マンションを管理する主体である管理組合は、都市における新しいコミュニティの担い手でもあり、そのとりくみにたいする行政の支援を強化します。 最近は、すぐれた管理のとりくみを交流するなど、マンション居住者や管理組合のネットワークも多彩に広がり、意欲的なとりくみをすすめる団体も生まれており、このようなネットワークづくりを広げ、支援します。 また、管理組合が管理会社をよきパートナーとして活用できるように、マンション管理適正化法(以下、適正化法)の見直しなど法整備もすすめます。

 自治体による相談窓口などの充実──管理にたいする居住者の関心がとぼしいマンションほど、実は多くの問題を抱えている場合が少なくありません。それだけに、自治体としても、実態調査で地域のマンションの状況や要求などを把握し、相談窓口の充実などをはかります。その際、適正化法によって新しくつくられたマンション管理士など、住民の立場にたつ専門家のネットワークを活用します。

 適正化法の対象となる管理業者の範囲拡大──いわゆる等価交換方式のマンションなど、管理業者が区分所有者にもなっているマンションは、管理業者と住民のトラブルが多いにもかかわらず、適正化法の管理業者への規制が適用されていません。このことをはじめ、適正化法の規制対象になる管理業者の範囲を実態にあわせて見直し、拡大すべきです。

 管理組合預貯金の管理方式などの改善──管理組合の預貯金の管理については、問題の多い「代行方式」(管理組合にかわり、管理会社が通帳と印鑑の両方を保管するやり方など)の見直しが必要です。一定の経過期間をとって、適正化法の例外である「代行方式」を廃止するなど、改善をすすめます。

4、大規模修繕など、建物の維持管理を応援します

 日本の住宅の“平均寿命”は欧米諸国とくらべてきわめて短く、建物の長命化をはかることは、居住者の資産価値を守るだけでなく、省資源化という社会的要請からも重要です。これから建設されるマンションの性能向上をはかるとともに、多くのマンションに普及しつつある大規模修繕工事にたいする支援などで、既存ストックの長命化をはかります。

 建物の定期診断制度──大規模修繕の基本になるのが、建物の実態把握です。現在、一定規模以上のマンションには建築基準法で建物の定期報告が義務づけられていますが、その内容を充実させ、助成制度も設け、建物の定期診断制度の実現をめざします。ただちにできることとして、建物診断にたいする自治体の助成を充実します。

 長期修繕計画の作成への助成──大規模修繕の費用をまかなうためには、あらかじめ長期修繕計画をたて、それにもとづいて適切な修繕積立金を集めておくことが原則です。修繕積立金の算定根拠となる長期修繕計画の作成・見直しにたいする支援を拡充させます。

 修繕積立金の法制化=消滅時効を10年に──管理費や修繕積立金の滞納に悩むマンションが増えています。昨年、現在の法律では、管理費・修繕積立金の消滅時効は5年(短期消滅時効)という最高裁判決がありました。マンションの維持に不可欠な修繕積立金については、法制化により、消滅時効を民法の一般債権と同じ10年にすべきです。

 同=修繕積立金はペイオフ対象外に──修繕積立金は、マンションの計画的な修繕には欠かせない上に、かりに数億円の残高があっても、一戸あたりではペイオフ限度額の1千万円をはるかに下回る百万円程度でしかなく、ペイオフの対象外にすべきです。また、住宅金融公庫の「すまい・る債」(修繕債券積立制度)などの普及、充実につとめます。

 工事費用への低利融資の充実──躯体や設備の老朽化対策に必要な工事金額に積立金残高が不足するときは、管理組合として融資を受けなければなりません。共用部分の工事にたいする住宅金融公庫の低利融資や、自治体による利子補給などを充実します。

5、ライフラインなど、公共的な性格をもつ設備の負担を軽減します

 戸建て住宅と違い、マンションでは、電気、ガス、水道などの基本的なサービスを受けるにも、貯水槽や変電室など、公共的な性格をもつ設備を居住者で共有し、維持管理しなければなりません。他にも、集会室やゴミ置き場など、戸建て住宅にはない多くの設備が居住者負担になっています。これらの公共的な設備について負担軽減をはかります。

 水道設備にたいする助成──貯水槽の点検や清掃にたいする助成をおこない、水道水の安全確保と居住者の負担軽減をはかります。増圧直結方式に切り替える工事費用にも、自治体として助成をおこないます。

 電力会社に電気設備などの負担を求める──マンションの変電室は、電力会社が無償で利用し、その固定資産税まで居住者負担となっています。また、電気容量を増やす設備工事の全額が管理組合負担とされる場合もあります。これらの設備は電力会社が利益をあげるためのものでもあり、電力会社に応分の負担を求めます。

 白ガス管の交換への助成改善──ガス管の維持管理にも、ガス会社などが応分の責任と負担をはたすべきです。とりわけ敷地内に埋設された白ガス管(旧式の亜鉛メッキ鋼管)は腐食してガス漏れするため、その交換が急がれています。白ガス管の交換にたいする国庫補助制度の条件改善と普及につとめます。

 集会室・プレイロットなどの固定資産税等の減免──マンション敷地内でも不特定多数が使う道は、道路として固定資産税等は非課税であり、その情報提供や普及につとめます。また、集会室、プレイロットなどの固定資産税等の減免を各自治体ですすめます。

6、分譲時の消費者保護を強化します

 多くの勤労者にとってマンションの購入は、人生最大の買い物のひとつですが、それにふさわしい消費者保護のしくみがないことが多くのトラブルの原因になっています。分譲時の行政指導や規制の強化、購入者への情報提供などにとりくみます。

 分譲主が作成する規約・長期修繕計画などの審査制度──のちのトラブルの原因となるのを防ぐため、分譲主が作成する規約や長期修繕計画は、地方自治体への事前届け出を義務づけ、専門家などのコメントを購入希望者が見られるようにします。将来的には、アメリカ・カリフォルニア州のパブリック・レポート制度も参考に、まちづくりへの影響などもふくめて自治体が審査、指導、情報提供をおこなう分譲審査制度へ発展させます。

 管理にかかわる情報提供──マンション広告のほとんどが立地や間取り、設備などに関するものであり、購入後の管理にかかわる情報はほとんどありません。宅建業法による重要事項説明の内容を充実するとともに、モデルルームや販売チラシに管理組合業務の一覧表示を義務づけるなど、購入希望者が管理に関する情報を得られるようにします。

 管理会社の2年後の見直しを義務化──管理会社の圧倒的多数が分譲会社の系列会社です。そのため、公正取引委員会がおこなった調査でも、管理業務において不当な契約の存在が明らかになっています。管理会社は分譲2年後に必ず見直す(見直した結果、委託契約を継続してもよい)条項を分譲時の管理規約にもりこむよう義務づけるなど、不当な取引を防止し、管理組合の主体性を担保する措置をとるべきです。

 分譲後数年での積立金値上げを前提とした長期修繕計画の作成を禁止──(社)不動産協会の会員むけ指針では、数年後の値上げを前提に、分譲時の修繕積立金を安く設定する「段階増額方式」なる長期修繕計画の作成を認めています。せめて2回目の大規模修繕までは値上げや一時金徴収なしでまかなえるように設定することを原則とし、「段階増額方式」や「一時金徴収方式」による分譲主の計画作成は禁止すべきです。また、機械式駐車場も長期修繕計画にもりこむことを義務づけます。

 原因が特定できない不具合は、分譲・施工業者の責任で改善──入居後に雨もり、結露、ひびわれなどの不具合が明らかになっても、責任をとらず不誠実な対応をくりかえす業者が少なくありません。一定の基準をみたす不具合は、分譲業者・施工業者の瑕疵を推定するなど、住宅品質確保促進法を改正し、いわゆる「欠陥マンション問題」での泣き寝入りをなくします。

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