日本共産党

2005年8月11日(木)

衆議院選挙にのぞむ日本共産党の各分野の政策

2.社会保障切り捨て路線とたたかい、社会保障・福祉制度を拡充して国民のくらしをしっかりささえる

 小泉内閣はこの4年間、「自助努力」、「自己責任」ばかりを強調し、社会保障にたいする国の責任を投げ捨て、あらゆる分野で社会保障制度の改悪をすすめてきました。

 昨年の年金制度の大改悪につづき、介護保険も、今年の通常国会で、在宅サービスを切り捨て、施設利用料の負担を大幅に増やす改悪法を、民主党も賛成して成立させました。さらに、2006年の法改定で「高齢者医療保険制度」を導入し、すべての高齢者から医療保険料を徴収し、窓口負担を増やす計画も検討しています。生活保護への国庫負担削減も計画しています。通常国会に提出した障害者「自立」支援法案は、障害者にまで重い負担を押しつけようとするものでした。

 このままでは、社会保障が、国民のくらしをささえるという本来の機能を大きく失い、逆に国民を苦しめ、不安をますます増大させる要因となってしまいます。

 自民・公明政権や財界は、社会保障給付を「過大」だとし、これ以上、社会保障への財政支出は増やせないといって、負担増・給付減を正当化しています。

 しかし、わが国の高齢化率はすでにヨーロッパ諸国と比べても高い水準となっているのに、日本の社会保障給付費は、国内総生産(GDP)の17・0%──イギリス(25・3%)、フランス(29・5%)、ドイツ(29・3%)、スウェーデン(34・1%)などよりも大きく立ち遅れた水準にとどまっています(厚生労働省「社会保障の給付と負担の見通し」04年5月)。

 家計所得が7年連続で減少し、「生活が苦しい」という世帯が55・8%と過去最高を記録し、高齢者の自殺が毎年1万人を超えるいまの日本──国民の不安を一層拡大するのではなく、「国民の生存権」を明記した憲法25条の立場で、誰もが安心でき、将来に希望のもてる社会保障制度の確立に足を踏み出すべきです。そうしてこそ、国民のくらしと経済も元気をとりもどし、持続可能なものになっていきます。

 日本共産党は、自民党政治にきっぱり対決し、国民の立場でがんばる、たしかな野党として、幅広い人たちと共同し、社会保障切り捨て路線を打ち破るためにたたかいます。そして、社会保障を予算の主役にすえ、くらしをしっかりとささえる社会保障制度の改革、拡充に力をつくします。

いま年金改革でなにが必要か──負担増・給付減をやめ、いまも将来も安心・信頼できる年金制度を

 年金制度をめぐる今日の最大の問題は、日々の生活をまかなえない低額年金、無年金の人が膨大な数にのぼることです。国民年金しか受給していない高齢者は900万人もいますが、その平均受給額は月額わずか4万6000円です。厚生年金も、女性を中心に劣悪な状態が放置されています。また、国民年金の保険料を払っていない人が1000万人を超えるなど、年金制度全体の深刻な空洞化がすすんでいます。改革というなら、こうした現状を打開することこそ必要です。

 ところが、政府・与党が昨年強行した「改革」法案は、こうした問題の解決策をまったくしめさないばかりか、保険料を連続で引き上げ、給付水準は低額年金を含めて一律に引き下げるというものでした。これでは、制度の空洞化がいっそう深刻化し、年金制度は老後の生活保障という役割をますます失ってしまいます。まったく「改革」の名に値しない悪法に、国民の8割が反対したのは当然です。

 国民が安心できる制度をつくるには、まずこの改悪を白紙に戻し、年金改革の議論を一からやり直すことが必要です。

「最低保障年金制度」の実現に足を踏みだし、年金制度の土台をたてなおす

 日本共産党は昨年、「『最低保障年金制度』を実現し、いまも将来も安心できる年金制度をつくる」という改革案を発表しました。その中心点は、憲法25条の「生存権」を保障する見地に立って、全額国の負担でまかなう「最低保障年金制度」を実現させることです。第一歩として、最低保障額を月額5万円とし、その上に、支払った保険料に応じて一定額を上乗せし、低額年金を底上げする制度をスタートさせます。

 「最低保障年金制度」の実現に足を踏みだせば、低額年金や無年金者の問題、年金制度全体の空洞化、サラリーマン世帯の専業主婦の「第3号被保険者問題」など、今日の年金制度が抱えるさまざまな矛盾を根本的に解決する道が開けます。

 日本共産党は、安心できる年金制度にするために、(1)年金財源は、大型公共事業や軍事費などの浪費を削減するとともに、「所得や資産に応じて負担する」という経済民主主義の原則をつらぬき、大企業や高額所得者に応分の負担を求めて確保する、(2)巨額の年金積立金は、高齢化がピークを迎える2050年頃までに計画的に取り崩して年金の給付にあてる、(3)リストラや不安定雇用に歯止めをかけ、年金の支え手をふやす、(4)少子化の克服は年金問題を解決するうえでも大事であり、安心して子どもを生み育てられる社会をつくる──この四つの改革に取り組みます。

 この改革を着実にすすめれば、給付を減額せずに、低額年金を底上げすることができます。将来、経済が発展の軌道に乗り、国民の実質所得が増えていくなかで、年金改善のために国民の保険料の負担増を求める場合も、政府の計画よりはるかに低い水準にとどめることができます。

年金「一元化」をどう考える──制度間の格差を是正し、公平な年金制度へ前進する

 自民・公明・民主は昨年、「年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的な見直し」を行うとする「3党合意」を結び、その議論をはじめています。しかし、「3党合意」にもとづく「一元化」議論は、負担は重い方に、給付は少ない方にあわせることになりかねない危険なものとなっています。

 実際、現状の枠組みのもとで、国民年金の給付水準を厚生年金・共済年金にあわせるならば、事業主負担のない国民年金の保険料は数倍に引きあがらざるをえません。また、被用者年金を国民年金にあわせれば、被用者年金の給付水準の大幅な引き下げとともに、財界が要求しているように、被用者年金への事業主負担をなくす入口になりかねません。どちらにしても、保険料の大幅値上げか、給付水準の引き下げであり、国民にとってよいことは一つもありません。

 また、民主党の「年金改革」案は、国民が受け取る年金給付を下げる一方、「年金目的消費税」などとして、消費税を8%に引き上げるとしています。しかも、この案では、現在の無年金者、未加入者、保険料未納者は救済されず、40年後にようやく「最低保障年金」を本格的にスタートさせるものとなっています。これでは、安心できる年金制度にはなりません。

 日本共産党は、年金の水準をいっそう貧しくする「一元化」ではなく、年金制度間の格差をなくし、国民から見て公平な制度をめざすべきだと考えます。そのために、いちばん具体的で現実的な方法は、まず、最低保障年金制度を創設して、国民年金と厚生年金の低い部分の底上げをはかり、全体として格差を縮小していくことです。そうしてこそ、誰もが「生存権」を保障される年金制度への道が開けます。

年金制度にたいする国民の信頼を取り戻すために

 社会保険庁のあいつぐ不祥事、年金保険料の目的外流用、特権的な「国会議員年金」──年金をめぐって、いまほど、政府や国会の信頼が地に落ちているときはありません。国民の不信をとりのぞくため、国会と政府はただちに以下のことをおこなうべきです。

──庁幹部の交際費、官舎の建設費、公用車の購入費など、年金保険料の目的外流用をやめさせる

──社会保険庁による特定企業との随意契約、関連企業への天下りなど、ゆ着・腐敗を根絶する

──国会議員互助年金の特権の廃止。国民の税金は一円も使わない本来の「互助制度」にもどし、議員の納める納付金の範囲で運営するようにする

連続改悪に反対し、保険で必要な医療が受けられる制度をまもり、広げる

 2002年10月の老人医療費の負担引き上げ、2003年4月のサラリーマン窓口負担の3割への引き上げをうけ、「受診を控えた」患者が6割にのぼる(03年9月、全国保険医団体連合会の調査)など、深刻な受診抑制が起こっています。

 そのうえ、政府は、すべての高齢者から医療保険料を徴収する「高齢者医療保険制度」をスタートさせることや、さきの改悪で原則1割(一定以上の所得の人は2割)とした老人医療費の窓口負担をさらに引き上げること、入院患者の食費・居住費を全額自己負担とすることなどを計画しています。「痛み」をがまんすればまた、新しい「痛み」が押しつけられる──まさに、際限のない負担増です。

 日本共産党は、国民の命と健康をまもるため、高齢者の保険料や窓口負担引き上げ、入院患者の食費・部屋代の値上げなど、医療負担増に反対し、患者負担の軽減をめざします。国民健康保険証の取り上げをやめさせ、国民健康保険の窓口負担や保険料の軽減にとりくみます。

 保険診療と自費診療の併用を認める「混合診療」の解禁は、“必要な医療はすべて保険でおこなう”という公的医療保険の原則をくずし、患者負担増や患者の支払い能力による“命の差別”につながります。財界や米国の要求を受け、「混合診療」の全面解禁に道をひらく、小泉内閣の「特定療養費制度」拡大・再編に反対します。安全性・有効性が確認された技術や薬をすみやかに保険適用とする仕組みをつくり、差額ベッド料などもなくし、保険で必要かつ十分な医療が受けられるようにします。

 安全な医療は、国民の切実な願いです。医療事故の検証と再発防止に取り組む第三者機関を設置します。医師・看護師などのスタッフを十分に配置し、医療の安全性が確保できるよう診療報酬を改善します。医科と歯科の診療報酬格差を是正します。

 とくに地方で深刻な医師不足を解決するため、医師養成の予算や体制を拡充し、医師の労働条件の改善などに取り組みます。

 政府が導入を検討している救急車の有料化に反対します。

 誰もが安心して保険で医療にかかれる制度にするために、(1)減らし続けた医療費への国庫負担を計画的に元にもどす、(2)薬の価格をさらに見直し、異常に高い高額医療機器の価格を引き下げる、(3)予防・公衆衛生や福祉施策に本腰を入れ、国民の健康づくりを推進する──という三つの改革に取り組みます。

介護保険の大幅な後退を許さず、誰もが安心して利用できる制度に改善するために

 介護保険実施から5年がたち、全体として利用者が増える一方、高すぎる保険料・利用料、深刻な施設不足と待機者の急増、介護労働者の労働条件の悪化など、さまざまな問題が浮き彫りとなっています。ところが、自民・公明・民主の賛成で成立した改定介護保険法は、こうした課題にまともに向き合おうとせず、(1)軽度と認定された人にたいし、家事援助など介護サービスの利用を制限する、(2)施設の居住費・食費を全額自己負担とする、(3)健康診査などの福祉事業を「地域支援事業」として介護保険に組み込み、国の財政負担を減らす──など、国庫支出のいっそうの削減を目的に、負担増・給付減だけを国民に押しつける大改悪でした。また、法案提出前に大問題となった保険料の徴収開始年齢の引き下げも、民主党の強い要求を受けて、今後検討していく方向が強く打ちだされています。

 改悪法は成立しましたが具体化はこれからです。日本共産党は、軽度者の必要な介護サービスをまもる、施設利用料の実効ある軽減措置を講じる、「地域支援事業」に十分な公費を投入して公的責任をしっかりはたすなど、改悪法によるサービス切り捨て・負担増から高齢者と住民をまもるため、力をつくします。

 また、本当に安心できる介護制度の実現にむけて、次のような改革を提案します。

──介護給付費の国庫負担をただちに25%から30%に引き上げ、利用料・保険料の減免制度をつくる

──保険料・利用料のあり方を、支払い能力に応じた負担にあらためていく

──特養ホームの計画的整備、ショートステイの確保、グループホームへの支援など、在宅でも施設でも安心して暮らせる基盤整備をすすめる

──介護・医療・福祉の連携をすすめ、国と自治体の責任で、高齢者の健康づくりをすすめる

──介護労働者の労働条件をまもり、改善するため、介護報酬の改善などにとりくむ

福祉を拡充し、くらしの不安をとりのぞく

 障害者福祉サービスの利用者負担を、所得に応じた応能負担から、1割の応益負担にかえ、障害者に大幅な負担増をしいる「障害者自立支援法案」は、障害種別や立場のちがいをこえた当事者・関係団体の空前の運動をまえに、廃案となりました。障害が重く、多くの支援を必要とする人ほど重い経済的負担を強いる改悪は、社会福祉の理念に真っ向から反するものです。

 また、政府は、介護保険と障害者支援費制度の「統合」をねらっていますが、その目的は、介護保険料の徴収年齢を引き下げて、国民に負担増を求めることです。負担増の“口実”に障害者を利用することなど許せません。また、障害者も、サービス水準の低下や負担増を押しつけられることになります。

 日本共産党は、障害者の自立と社会参加に不可欠な障害者福祉サービスや育成医療・更生医療・精神障害者通院公費負担に、応益負担と大負担増を持ちこみ、障害者のくらしと人権をおびやかす制度改悪に反対します。「障害者自立支援法案」の廃案をうけ、政府の責任で必要な支援費予算を確保し、「予算不足」を口実とした障害者や自治体への負担と犠牲の押しつけを許しません。

 そして、障害者関係予算を大幅にふやし、地域生活の基盤整備を集中的にすすめ、障害者がどこでも安心してサービスを受けられるようにします。障害基礎年金の引き上げをはじめ、所得保障制度の改善をはかります。難病や発達障害、高次脳機能障害といわれる人びとなど、すべての障害者を対象とする総合的な「障害者福祉法」を早急に制定します。精神障害者の医療と福祉を抜本的に拡充します。「障害者差別禁止法(仮称)」を制定し、障害者の「全面参加と平等」を実現します。

 長引く不況や所得格差の広がりのなかで、生活保護の役割がますます重要となっています。ところが政府は、「老齢加算」の廃止、「母子加算」の削減につづいて、2006年度には生活保護にたいする国の負担を、現在の4分の3から3分の2に引き下げようとしています。生活保護にたいする国の責任の後退は、いまでもきびしい保護の締めつけをさらに強化させ、国民の生存権が乱暴に侵害される事態に拍車をかけるもので、絶対にゆるされません。

 日本共産党は、「老齢加算」の廃止、「母子加算」の削減計画に反対し、拡充をはかります。児童扶養手当の削減計画を中止し、拡充をはかります。

 難病患者、小児難病患者について医療費自己負担制度をやめ、無料制度を復活して、予算増額と対象疾患の拡大をすすめます。 

 乳幼児医療費無料化を国の制度として実現させ、各自治体の独自施策を上乗せして実施できるようにします。住民・行政・医療関係者の連携で、小児救急の充実や小児医療提供体制の整備をすすめ、安心して子育てできる地域社会をつくります。

 被爆者の年来の要求である、死没者補償の実施などをふくむ、国家補償の被爆者援護法に改正します。当面の緊急措置として、(1)原爆症認定について、機械的な切り捨てをやめ、実態に即しておこなわれるよう制度を抜本的に改善します。(2)在外被爆者が居住地から、被爆者健康手帳の取得や諸手当の申請をできるようにします。

 シベリア・モンゴルなど抑留者への未払い賃金問題の早急な解決をはかります。

  元「従軍慰安婦」への謝罪と名誉回復に必要な措置を国の責任でとるよう求めます。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp