市町村合併、地方財政「改革」の焦点は?  


Q6 「合併して、専門的職員を配置することが必要」といわれますが……。

A いまの職員で、役場の仕事は十分やっていけるでしょう。

 「専門的職員」で例としてあげられるのは、IT(情報技術)関係、福祉関係(ケアマネージャーなど)、建設関係(技師)などです。もちろん、余裕があるなら、そうした専門的な資格や技術をもつ職員を配置すればよいでしょう。しかし、実際に専門的職員がいなくて、必要な行政の仕事ができないということがおきているでしょうか。

 たとえば、ある町では今年春から公共下水道の事業に着手しました。しかし町には公共下水道の専門的職員はいませんでした。計画の検討・作成に当たっては、県や広域の担当職員や事業団の職員の協力をえて立派に仕事が始まっています。逆に、町村が専門的な職員を配置するとなれば、養成期間も必要ですし、IT化や下水道整備などの事業が何年間かで終了したあと、どういう部署につけるのか、という問題も出てきます。

 町村の場合は、専門的職員よりも、住民と地域のことを身近に知り尽くして、総合的に仕事ができる職員が多く配置されるほうが町民にとって役立つ役所になるでしょう。地域経済の振興などでも、「百人委員会」などを、職員や住民、関係団体職員、研究者で組織し、知恵を出しあい成功している町もあります。

 ときどきの事業で専門的知識が必要な場合は、県・広域、民間などの協力を得てすすめる、というのが合理的です。自立を選択した島根県・東出雲町の石原真一町長は「本町は専門職不足で業務に支障が生じていることはありませんし、職員の業務選任制は縦割り行政につながりかねません」と明快にのべています。

 また、ケアマネージャーなどの資格は、担当職員の努力と当局の支援で一定期間かければ取得できるでしょう。合併しなければ配置できない資格ではありません。理学療法士などは、自治体として雇用しなくても医療機関や福祉施設には配置されており、行政サービスのうえで困ることはないでしょう。

 いずれにしても、「高度な専門的な職員の配置のために合併しなければならない」という議論は、市町村の現実から出発したものではありません。

 「いまは十分でも、これからは住民のニーズも多様化・高度化するから専門的職員が必要。だから合併を」という人たちもいます。少子高齢化といいますが、介護保険も保育所も基本的には制度が確立しています。たしかに、それらをどう改善、充実していくのかは課題でしょう。しかし、「合併しなければ対応できない自治体の仕事」が全国で新たに生まれるのでしょうか。どこでも、具体的にはしめされていません。


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